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徒然日記 - 図書館カテゴリのエントリ

地平忌

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図書館
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Dice 2014-2-25 23:31
 明日2月26日は何の日かと聞かれて、「二二六事件」の日と答えられる人も少なくなってきているのではないかと思うが、私にとってこの日は「地平忌」、中村地平の命日として強く記憶されている。
 中村地平って誰?という人は、ググってWikipediaでも確認して欲しいが、Wikipediaの記述も全てが正しいとは限らないので、宮崎県庁のサイトの中にある「みやざきの101人」へのリンクも貼っておく。

中村地平-Wikipedia

中村地平-みやざきの101人

 読んでいただけただろうか?。小説家としての名声は、残念ながら井伏門下の三羽烏として並び称された太宰治には及ばないものの、戦後宮崎の文化の振興に極めて大きな役割を果たした人物であり、多方面での活躍の中でも、私は特に1947(昭和22)年から1957(昭和32)年までの宮崎県立図書館長としての功績を高く評価している。

 日本十進分類法による図書の整理、増改築に伴う文化ホールの新設、臨海文庫・農村文庫などの貸出文庫や自動車文庫「やまびこ」の開設、参考係の新設など、今につながる図書館サービスが確立されたのは、この中村館長の時代であり、今は絶えてしまっているが、図書館に専門職である司書を積極的に採用したのもこの時代であった。

 館長を辞した後、父親の後を継いで宮崎相互銀行(現・宮崎太陽銀行)の社長を務めたが、その一年後には体調を崩し、1963年2月26日に心臓麻痺のために没。宮崎にしては珍しく雪の降る日であったという。

 「地平忌」はその中村地平を惜しんで設けられたが、毎年2月26日ではなくて、その前後の土曜日に宮崎市・市民の森にある記念碑の前で行われていたと記憶していたので、最近はどのようになっているのかを知りたくてWebを渉猟してみたけど、よくわからなかった。
 その過程で2008(平成20)年11月1日(土)に宮崎県立図書館で「中村地平生誕百年記念講演会」が開催され、当時を知る元図書館職員によって「県立図書館長中村地平について」という座談会が行われたという情報を得たので、その記録が残っていないか県立図書館に問い合わせてみたが、残念ながら無いという回答だった。
 自らの栄光の時代の記憶を記録に残す折角のチャンスだったはずなのに、その意識が当時の図書館になかったことは実に残念。
 主催した岡林稔先生に問い合わせするしかないのかな。

 ともあれ明日は、偉大なる図書館の先輩に想いを馳せ、我が身を戒めることとしよう。
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『夜明けの図書館』

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図書館
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Dice 2014-2-16 0:10
 今回のお勧め本は、埜納タオ著『夜明けの図書館』(ジュールコミックス)
 初出が『JOURすてきな主婦たち』ということで、いわゆるレディコミ。完全に射程外、ノーマークだったが、Facebookつながりでレンジに入ってきた。Facebook素晴らしい。

 舞台は架空の暁月市立図書館。主人公は、葵ひなこ、25歳。3年の就職浪人の末に、ようやく採用された新米司書。
 同僚で庶務経理担当の大野晧(27歳)は、一般行政職員で図書館勤務3年目。司書ではないが、返却本の配架や破損本の修理、書架の整理、時にはクレーム処理まで何でもこなす。
 この二人を中心に、図書館でのレファレンス案件が、相談者の背景、資料の見つけ方などを織り交ぜながら展開される。
 1話読み切りの形で計4話、いずれもなかなか面白い。

 たかがレディコミと馬鹿にするなかれ。現役の図書館司書に取材したり、作者がレファレンス講座に参加するなどして、図書館で働く司書の姿とレファレンスの実態がしっかりと描かれている。

 これは、図書館サービスの一端をわかりやすく解説する入門書として、すごくいい。司書としての仕事の喜びみたいなものを伝えてくれる。
 高校の図書館とか市町村立図書館のYAコーナーには是非とも置いてほしいな。

 2巻目も刊行されているので、早速購入しなきゃ。できれば、これを原作にドラマ化希望。
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『本と人をつなぐ図書館員』

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図書館
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Dice 2013-6-2 22:09
 5月末に浦安の家族宅に行った際に、飛行機の中で読了したのが、山内薫著 『本と人をつなぐ図書館員 −障害のある人、赤ちゃんから高齢者まで』 (読書工房)

 図書館の利用に障害のある人々への資料提供サービスを中心に、著者が行ってきた実践が綴られているのだが、正直言って「ここまでやるのか!」という驚きが最初にあった。
 なぜ驚くかと言うと、そのサービスが半端ではないからだ。

 第1章の冒頭に例示として出てくる「ひろみさん」は、筑波に住んでいる重度な肢体不自由のある女性なのだが、著者の山内さんは、1969年に墨田区立あずま図書館で図書館員としてのキャリアをスタートさせ、障害者サービスを柱としつつも、児童サービスなどあらゆる墨田区の図書館サービスの推進を現場で支えて来られた方である。
 墨田区の著者が、自分の務める図書館のサービスエリアの外、筑波に住む彼女が利用できそうな録音図書テープを送り、旅行のついでに会いに行き、その後も手紙のやり取りを続けながら、彼女が聞きたい内容の録音図書テープを探し、送り届けるのだ。

 また、その次に出てくる「大樹くん」は、生まれた時から視力に障害がある二歳児。
 彼と著者が出会ったのは、障害児をもつ親の会の集まりの場で、最初は図書館にある『さわる絵本』や『布の絵本』の利用を勧めるのだが、彼が保育園に入るようになると、保育園の保育士さん向けに展示の勉強会を開いたり、持ち物に展示のシールを貼るなどの環境作りを手伝う。
 そして、小学校に上がる段階になると、彼に点字を教えるためのプロジェクトチームを結成し、図書館をベースに点字教室を始めるのだ。

 この冒頭の2例だけでぶっ飛ぶ!。ここに書かれたサービスは、私の知る図書館のサービスの限界を遙かに超えている。
 行政のエリアも、部署云々といった管轄も飛び越えて、真っ直ぐに利用者を見ている。
 そんなできるとは思わなかったし、やっていいとも思わなかった。いや、考えることすらしなかったと言って良いだろう。
 でも、実際にやってのけた図書館員がいて、その図書館のサービスを受けて育った利用者がいるのだ。

 「おわりに」で著者は言う。
 「図書館利用に障害のある人たちとの出会いは、その都度『図書館とは何をするところか』『図書館に何ができるのか』ということを考えさせられる契機となってきた」と。
 「多くの利用者の方にさまざまなことを学ばせていただき、育てていただいた」と。

 司書資格を持ちながらも現場経験の殆ど無い私は、「障害者サービス」とか「アウトリーチ」とか、言葉は知っていても、その実践については何も知らないでいたことを、本書は教えてくれた。
 はっきり言って甘かったです。反省します。

 まだまだ図書館にできることはあり、そのためには、何よりも「人」(利用者)を見てそれに合ったサービスを考える集団としての「職員」が必要であることもまた本書は教えてくれた。
 それは、図書館での仕事に限らず、あらゆる職場で応用できそうである。
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2012(平成24)年度の宮崎県立図書館

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図書館
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Dice 2012-12-9 20:48
 「図書館関連論考」に「2012(平成24)年度の宮崎県立図書館」を掲載。

 『図書館雑誌』2012年8月号(Vol106, No.8 pp560〜562)に掲載された『日本の図書館』2012年調査の都道府県立図書館に関する速報データを基に、全国の都道府県立図書館の現況と、特にその中で宮崎県立図書館の占める位置、数字から読み取れる課題等について分析を加えたもの。2001(平成13)年以来、実に11年ぶりの分析となった。

 本当はもっと早く掲載する予定だったのだが、なかなかまとめきれずに遅くなってしまった。なんとか越年せずに済んで一安心
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【本の雑誌】図書館とベストセラー

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図書館
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Dice 2012-11-24 0:10
 『本の雑誌』2012年12月号の大井潤太郎氏のコラム「薔薇の木に、薔薇の花咲く」は、「図書館とベストセラー」がテーマ。
 冒頭、ちょっと長くなるが引用する。

「 論創社の森下紀夫さんは図書館の状況に対して、悲鳴を上げるように発言している。公共図書館が3082館、大学図書館が1645館、合計すると4736館もあるのに、どうして人文、社会科学の初版千部が売れないのか。いくつもの新聞書評が出ても、その千部、千五百部が売れず、重版もできない。一体何を基準にして選書しているのか(「出版業界の危機と社会構造」)。」


 で、これに続いて、いつもながらのベストセラーの複本問題が指摘されているが、これについては語り尽くされている感もあるので、ここには突っ込まない。

 良心的な出版社が、世のため人のために役立つことを願って、懸命な努力で本を出そうとしていることは理解できる。できることなら、図書館はそうした出版を下支えする存在であるべきだと思う。

 しかし、だ。市町村立図書館の現状を考えると、現実に買えるのか?という問題になる。

 日本著書販促センターのデータによると、2010年の新刊書籍の刊行点数は74,714冊、平均価格は1,126円となっている。
 一方、日本図書館協会が公表しているデータによると、2011年の市立図書館2,540館と町村立図書館588館の図書費の合計は201億1,448万円なので、1館当たりの平均は約643万円となる。
 これを上記の平均単価で割れば、1館当たり年間に購入できる新刊図書の数は5,710冊となる。年間に出版されている新刊の1割も買えないのだ。

 それで、公共図書館の蔵書構成を考えると、どうしても文学が多くなりがちだから、社会科学系の書籍に振り分けられる予算は10%にも満たない訳で、年間500冊も買えれば相当に多い方ということになる。
 更にこの500冊の中には、一般的にビジネス書と呼ばれる書籍もかなり含まれるし、社会科学と一口に言っても結構幅広いので、専門的な書籍の購入はますます少なくなってしまう。

 単純に考えると、大学図書館も含めて3館に1館が購入できれば、初版1,500冊は難なく売り捌けるはずなのだが、そのためには大多数の図書館が、年間1万冊以上の新刊書が買える予算を持たなければならないだろう。
 ベストセラーを買っているから社会科学の専門書が買えないのではないのだ。「もっと資料費を!」と、図書館の現場は思っているはずだ。

 あと、出版社側の熱意が、顧客である図書館の側にきちんと届いているのか?、という疑問もある。
 1,500部を図書館に買って貰うための営業をこまめにやっている出版社はどれほどあるのだろうか?。
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【日経】図書館の貸出数最多5.4冊

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Dice 2012-11-2 18:21
 11月1日(木)付け日本経済新聞の社会面(42面)に、「図書館の貸出数最多5.4冊」と題する記事掲載。
 10月31日に公表された「文部科学省の社会教育調査(中間報告)」の内容を伝えるもので、2010年度に全国の公共図書館(3,274館)が貸し出した本が、国民1人当たり5.4冊となり、過去最高を更新したとのこと。
 この数字には、東日本大震災で被害が大きかった岩手、宮城、福島の3県は貸出冊数などの調査は対象外とされているとのことなので、実際には伸びはもう少し大きいのかもしれない。
 増加の要因として同省は、
  • 団塊世代の大量退職が始まり、空いた時間に本を読んで過ごす人が増えた。
  • 1回あたりの貸出冊数の上限緩和や閉館時間を遅らせるなどサービス向上に力を入れる図書館が増えている。
という2点をあげている。

 なお、図書館数は3年前の前回調査に比べて109館増加、貸出冊数は延べ6億6千万冊で5.0%増加、国民1人当たりでも0.5冊の増加、本を借りた人は延べ1億8千万人で6.5%増加で、いずれも過去最高を更新。国民全員が年に1.5回ずつ図書館で本を借りた計算になるとのこと。


 実はこの調査では、博物館や文化会館、社会体育施設など他の社会教育施設についても職員数や利用度などについて数字があるのだが、記事では触れられていないのは、図書館がそれだけ身近な施設になっていることの証左なのかもしれない。
 他の施設の数字についてここでは詳述しないが、上記で文部省のサイトにリンクを貼っているので、興味ある方はご覧いただきたい。
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【産経新聞】図書館への民間参入

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図書館
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Dice 2012-10-22 18:29
 今朝出勤したら、10月19日(金)付け産経新聞の6〜7面の「オピニオン」欄を職場の若い同僚が切り抜いて机の上に置いてくれていた。テーマは「図書館の民間参入」。

 記事の発端は、佐賀県武雄市の市立図書館でCCCへの事業委託が始まることになり、「本を貸し出し際に買い物に使えるポイントを付与するサービスの導入の是非などが議論となっており、公立図書館の民間への運営委託のあり方が改めて注目されている。」ということらしい。

 6面に掲載されている「金曜討論」は、このテーマについて、と東洋大学経済学部の山田肇教授と関東学院大学文学部の山本宏義教授へのインタビュー。
 山田氏は、MIT大学院、NTTを経て現職で、情報アクセシビリティや情報メディアの経済学及び技術経営などが専門分野で、どちらかというと民営化に対し慎重な立場。
 一方の山本氏は相模原市立図書館長、広島市立中央図書館長を歴任し、日本図書館協会の理事も務めるなど、どちらかというと民営化に積極的な立場。

 まず、山田氏へのインタビューでは、(注:一部、引用者による要約あり)

Q: 民間企業に運営を委託する公立図書館は、全国3,190館のうち約9%を占めるが、数年間と限定的な指定期間での図書館運営に問題はないか?。

A: 指定管理者制度の期間終了後に、企業側の意向で契約を更新できない場合もあるだろうが、そのリスクも含めて自治体が考えた上で民間に委託すべき。


Q: 貸出履歴など利用情報の収集と商業目的での活用が許されるかも論点

A: 年齢、性別、借りた本というように匿名化されて個人が特定できない情報であれば、個人情報保護法の対象には当たらない。
 そのような利用傾向などの抽象的な情報であれば、委託を受けた民間企業が図書館の運営に活用するほか、図書館と関係ない営利事業への活用も問題ない。
 また、図書館の運営に参画する企業もそうしたメリットに期待しているはずだ。


Q: 佐賀県武雄市の図書館での貸し出しの際にCCCの「Tカード」を利用し、ポイントの付与を受けられるサービスの導入について、営利企業のシステムを取り入れるべきではないと日本文芸家協会などから反対の声が出ている。

A: ポイントは無人の貸出機を使って本を借りた場合に付与される。人件費削減のために、無人貸出機の利用に誘導する仕組みで、合理的なアイディアだと思う。
 また、『Tカード』を使うか、従来型の図書館利用のカードを使うかは、利用者が選択できる仕組みになっているので、サービスを受けたい人が選べばよい。
 1回の利用で得られるポイントはわずかなため、射幸心をあおることもない。


Q: 民間企業に委託することが図書館のサービスの質の低下につながるという意見もある。

A:何か明確な根拠があっての意見ではない。むしろ民間企業の手法を取り入れることで、便利になる可能性は大きい。
 貸し出し履歴を記録し、その利用者が興味を持ちそうな他の本を提示する『リコメンド機能』も民間では一般的なサービスだが、希望者を対象に導入すれば便利だろう。


Q: 図書館を運営する上で何を重視すべきか。

A: 利用者の個別ニーズに柔軟に対応し、利便性の向上を図ることが大切。  『個人情報の保護』をという言葉を盾に、硬直的な一律のサービスしか受けられないのは良くない。


 「Tカード」の部分、無人貸出機への誘導のインセンティブのためにポイントを付けるというのであれば、2種類のカードを併用し、カードの違いによって受けられるサービス(ポイント)が違うというのは問題ありなのでは、という突っ込みが欲しかったな。

 一方の山本氏へのインタビューは、

Q: 公立図書館の民営化についてどう考えるか。

A: 民間企業に運営を委託する公立図書館は増加傾向にある。
 しかし、利益を上げることを本来の目的とする民間企業と、非営利の図書館の運営とは、なじまないのではないか。
 書籍や資料など人類の知的遺産を永続的に集積、提供し、住民や研究者が触れられるようにするのが図書館の役割。数年間の計画はもちろん、同時に数十年単位で運営を考えて行く必要があるが、民間企業ではそれが難しい所がある。


Q: 利用者が専用のカードとCCCの「Tカード」から選択し、Tカード利用者には貸し出し時に買い物に使えるポイントを付与するサービスが導入されるが、その是非が議論されている。

A: 好ましくないと思う。買い物に使えるということで、結果的に射幸心をあおることにつながる可能性は否定できない。喜ぶ人もいるだろうが、図書館の本来的な役割や機能から考えると疑問が残る。
 こうしたサービスが一度始まると、今後、他の民間運営の図書館で同様のサービスが増え、ポイントの付き方がエスカレートしていく懸念もある。


Q: 民間企業への運営委託は、サービス向上に加えて、人件費などのコスト削減につながる期待がある。

A: コスト削減を第一の目標にしてしまうと、サービスの悪化につながることが多いので反対だ。
 千代田区立図書館(東京都)は、平成19年から民間企業が運営することになったが、コスト削減ではなく、開館時間の延長や情報発信の強化などサービスの充実を目的にしている。その結果、運営費は減っていないが、利用者数は大幅に増えた。永続的な運営という観点で課題は残るが、民間への委託が成功した好例だろう。


Q: 武雄市の市立図書館でも開館時間が午前9時から午後9時までと4時間増える。

A: 千代田区立図書館は午後10時まで開いているが、自宅が都心から遠く、帰宅時に地元の図書館が閉まっている会社員らのニーズが強い。
 武雄市の場合、県外の利用者が少ないと考えられ、大きなメリットがあるのか疑問が残る。


Q: 公立図書館は直接自治体が運営すべきか。

A: 自治体が直営し、サービスの向上を図るのが本来的には望ましい。民間委託をする場合も、丸投げを避けて運営をしっかりとみていくべきだ。
 図書館の公共性を厳密に捉え、利用者の承諾があっても貸し出し情報など個人情報の商業利用を許すべきでない。


 この「金曜討論」と見開きで7面に配された「eアンケート 私も言いたい」では、「図書館の民間参入」について、紙面に掲載された項目に対して寄せられた読者の意見を紹介している。回答者は、505人(男性380人、女性125人) 。
 まず、大勢として、
(1)公立図書館の運営は改善が必要か
YES: 84%NO: 16%
(2)民間企業への事業委託を進めていくべきか
YES: 48%NO: 52%
(3)ポイントサービスを導入するのは適切か
YES: 31%NO: 69%

 ポイントサービスに対する反対意見が多いのは、やや意外。このアンケートに回答した読者は、図書館サービスに関心が深い層と考えられるが、そうした層にはポイントサービスは馴染まないということか。


 以下、自由記述の中から目についたものを拾うと、
「平日昼間はそもそも納税者たるサラリーマンが利用できない。(遅くまでやらないのは)納得いかない」(東京・男性会社員(52)
「その道のプロが参入できるという意味で、民間参入の動きに賛成する。公務員だから公立図書館の運営を行うというのは意味がない」(千葉・男性会社員(49))

「今の公共図書館には当然改善が必要だ。行政が図書館にあまりにも無関心で、司書の専門性も生かし切れていない」(長野・女性公務員(30))

「完全に民営、営利目的にしてしまったら、人気作家や流行に主眼が置かれ、蔵書の質の低下が起こる」(メキシコ在住・男性会社員(57))

「なんでも民間に丸投げすれば健全化するというものではないだろう。行政で運営すべき事業というものがあるし、そうでなければ政府なんてものはいらない」(石川・男性自営業(40))

「公共サービスは、ある程度の品質と安定性が第一に保たれるべきだ。民間への事業委託は、もうけ主義的発想などによるサービスの質の低下を引き起こしかねない」(兵庫・女性パート(34))


 開館時間も含めて、これまでの図書館サービスが利用者のニーズとうまくマッチしてこなかったのは確かだが、自治体の財政状況が悪化する一方の中、直営という運営方式によるサービスの硬直化やコスト高があることも事実。
 それを解消するための手法のひとつが「指定管理者制度」なのだが、そもそも管理委託する場合の仕様を決め、その運用を管理するのは行政の側なので、山本氏の言うように「丸投げを避けて運営をしっかりみていくべき」なのは当たり前。
 運営を引き受ける民間側が、司書の採用や研修をしっかり行い、複数の館の運営を受け持つことによって職員の異動、キャリアアップなども行えるのであれば、職員の専門性も確保されたまま、直営以上のサービスを行うことは可能だろう。そのために民間側に与えるメリットをどこまで許容するかどうかなのだと思う。
 個人的には、図書館の利用にポイントなど必要ないし、そのためにかけるシステム回収のコストや手間を考えれば、その分は少しでも資料の充実に回して欲しいと思う。
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書店が公立図書館を運営?

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図書館
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Dice 2012-10-19 14:19
 先週になるが、10月13日(土)付け日本経済新聞の「プラス1」13面のコラム「エコノ探偵団」に、「書店が公立図書館を運営?」と題する記事掲載。
 公立図書館の運営に書店が相次いで参入しているらしいということで、実態を検証しようという内容。

 まずは、千代田区立日比谷図書文化館を取材。図書館流通センター(TRC)。「公立図書館の7割に本を売ってい」る会社で、全国で計338館の運営に関わり、2008年1月開館の長崎市立図書館では、企業連合の一員として15年間の契約を勝ち取ったらしい。
 別の「書店」の例として、紀伊國屋書店が指定管理を務めるのは13館。常務の藤則幸男さんによると、公立図書館の8割ほどはまだ外部委託をしていないため「開拓余地は大きい」とのこと。
 「運営に成功し貸し出しが増えれば、本の売れ行きが落ちて困るのでは」というベタな問いには、「運営に加われば、その図書館に対する書籍の売込みで有利になれます。どんな本が人気なのかもわかります」との答え。
記事では、出版科学研究所の推定による書籍販売額(11年に約8,200億円)と日本図書館協会の資料を比較して、公立図書館の購入費は書籍販売の3%程度と推計し、「安定的な販売先として注目されている。」としているが、公立図書館が購入しなかったら採算割れする書籍も多く、図書館は書店の敵では決してない。図書館が栄えれば、本は売れるのだ。

 記事が次に注目するのは「民営化の効果」で、現在の5館に加え、残る7館も13年4月までに指定管理にして"完全民営化"する江戸川区で取材。
 区立中央図書館の佐藤館長から民営化の狙いを「サービスの向上とコスト削減の両立」と説明を受け、「民間は非常勤の活用で人件費を抑え、コストは10年度の民営化前より少なくと1割は削減できました」と語らせている。
 民営化された4館では、貸し出しの締め切り時刻が民営化前より1時間半遅い午後9時半になり、11年度は東日本大震災の影響で開館時間を短縮したものの、借りた人は4館計で09年度より16%増加したとのこと。
 「カウンターに利用者が並ぶと職員がすぐ出てくるので助かります」という利用者の声も紹介。民営化以前はかなりひどかったのか?。

 ただし、いいことずくめではない点も紹介されていて、まずは他の公共施設に比べて、無償原則の「図書館法」という壁がある図書館では、「民営化で利用者が増えても、収益が伸びずにコストが積み上がる。」とし、立教大学の永田特任教授の「結果的に職員の待遇が悪化すればサービス低下につながりかねません」という指摘を紹介している。
 また、個人情報保護とのからみで、CCCへの委託が決まっている武雄市図書館・歴史資料館でのポイントカードの導入表明と一部市民の反発について簡単に触れられている。

 このほか、本文中には出てこないが、指定管理者企業として、東京都を中心に28館を運営するヴィアックスと、千代田区で4館を運営するサントリーパブリシティサービスがあることも紹介されている。
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ラーニング・コモンズ

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図書館
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Dice 2012-10-9 21:10
 先週のことになるが、10月1日(月)付け日本経済新聞の文化面に「議論しやすく図書館進化」という見出しの記事掲載。
 何かと思って読んだら、最近の大学図書館の多機能化の話だった。

 ここでのキーワードは、「ラーニング・コモンズ」。
 恥ずかしながら大学図書館は興味の範疇外だったので、これまで大学図書館関係の話題は全くと言って良いほどフォローしてなくて、この言葉も殆ど初見に近いものだった。
 なので、少し調べてみた。よくわからない人は、次の2つのPDFファイルを読めば、なんとなくその概要がつかめるだろう。
 ・わが国の大学図書館におけるラーニング・コモンズの事例研究
・ Guideline November 2009「教育改革ing 大学図書館」

 従来の図書館が持っていた機能をもう少し広げて、ICT機器の整備や共同学習スペース、カフェテリアなどのファシリティを充実させるとともに、学習支援のためのスタッフを揃えて、学生がよりダイナミックに学び、交流し活動する場と捉えて良いだろう。

 日経の記事は、9月22日に仮オープンした立教大学の図書館や5月に和泉キャンパスにオープンした明治大学の図書館などの様子を伝え、
「ラーニング・コモンズは2009年ごろから大阪大、名古屋大、上智大などに登場」
したことや、こうした動きは今後も続き、東京大学の本郷キャンパスや立命館大学衣笠キャンパスで整備が計画されていることを伝えている。
 そして、
「背景にあるのは、受け身になりがちな講義形式からグループ討議や発表など学生が主体的に学ぶ授業に転換しようとする大学改革の動きだ。」
とし、
「授業外の学生の学習時間が短く、大学生に勉強させることが課題になる中、キャンパスの耐震改修などとのタイミングが合ったこともあって、建設・改修ラッシュにつながっているという。」
とまとめている。

 こうした動きは、公立図書館とも無縁ではなく、ラーニング・コモンズ的な発想を施設や態勢の整備に活かすような図書館が、これからの新しい方向性として出てくるに違いない(もう出てきているのか?)。

 なお、記事には別囲みで「地域連携にも貢献」と題して、サービスを学外に解放する大学図書館の例として、小中学生が様々な科学実験などを体験できる葛飾区の「科学技術センター」を併設する方向で整備が進んでいる東京理科大の新キャンパス図書館棟や地域住民が休憩や文化イベントなどに参加できる交流スペースを図書館の入口前に設置する予定の新潟大学が紹介されている。

 文部科学省によれば、「図書館を学外に開放している大学は(全体の)9割以上にのぼる。」とのこと。

 ちなみに宮崎県内には下記のとおり8つの大学・高専図書館がある(順不同)。

 このうち、九州保健福祉大学附属図書館以外は、全て一般(学外)向けに貸し出し等の直接サービスを行っている(九州保健福祉大学のみ、宮崎県立図書館を通した相互貸借の範囲で貸し出し可能)。
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「松丸本舗」閉店について思う

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Dice 2012-8-23 23:40
 先日、丸の内OAZOの丸善丸の内本店に寄って4階に上がったら、松丸本舗の入り口に「形影同参 残念至極 さらば松丸本舗」と大書した店主・松岡正剛の墨書が飾られていて、はてどうしたのだろうと調べてみたら、9月いっぱいで閉店することになったらしい。
 松丸本舗のWebサイトでは、簡単な閉店のお知らせしか出ていないが、正剛氏自身が7月16日20時31分にTwitterで閉店を公表して以来12時間の関連するつぶやきがTogetterにまとめられていて(別に76時間の記録もあり)、読売新聞の記事と併せて読むと、なんとなく事情が読めてくる。
 関係者の証言はないので、真相という訳ではないが、3年間という委託期間の中で、丸善側が期待するほどの売上げ(集客効果を含む)を上げられなかったということのようだ。

松丸本殿 「松丸書店」、行ったことのある方はよくおわかりだろうが、本好きにとっては非常にインスパイアされるところの多い空間である。
 偉大なる編集者・書評家である松岡正剛と、彼の薫陶を受けたBSE(Book Shop Editer)達のセレクトによる、テーマ毎の資料のセレクトと、床から天井近くまで作り付けられた木製の書架にぎっしりと、時には横に寝せてまで詰め込まれた本の森。
 基本的に新刊書ばかり並ぶ書店の棚とは違い、一般の書店ではなかなか手に入らない、ひょっとすると既に絶版になっている本も混じっているのではないか。そういう意味では図書館の棚に近いが、テーマの組み方とそのテーマについて周縁も巻き込んだ資料のセレクトは、図書館ではなかなか真似ができない(特定のテーマについて一時的にテーマ展示をする図書館は少なくないけど、全体がそうなっている訳ではない)。
松丸書架 5万冊の本が詰め込まれた森の中に分け入ると、上から下まで本が並ぶ書架の前で次々に手が伸び、ついつい時間を忘れて回遊して行くことになる。立ったままが苦にならなければ、1、2時間は楽に時間を潰せる。ある意味、本好きにとっての理想の空間である。

 しかしそれが、コストに見合う利益を追求しなければならない一等地の「書店」にとっては仇となっていたのであろうことは想像に難くない。個々の客の滞留時間が長ければ長いほど、客の回転率は悪くなる。
 客単価は一般の書店に比べて高いのだろうが(それを裏付けるつぶやきも上記のTogetterの中にはある)、期待する売上げを確保するだけの客数をさばき切れていなかったのだろう。私が見る限りでも、明らかに文庫のコーナーなどより客数は少なかったしね。

 当初から実験的空間として位置づけられていたのだが、評価する人も多かった反面、洋書コーナーの面積を潰してまで展開されていたことを苦々しく思っていた洋書ファンがいたり、松岡正剛をもって「知の集積」とすることを快く思わなかったりする人も当然にいた訳で、3年間の偉大な実験の結果、やはり利益優先に転換しますっていう丸善の経営サイドの判断を一概に否定するつもりはない。

 ただ、あれだけ利用者の多い立地でもビジネスとして成り立たなかったことは、今の書店業界の苦悩を如実に物語っていると思うし、一人の本好きとして、快適な空間がまたひとつ消えることについてはただただ残念に思う。

 それでも、「松丸本舗」が提示したスピリットは、他の書店や図書館にも受け継がれていると思うし、松岡氏自身も「捲土重来を期す」とおっしゃっているので、どこかでまた新たな本の森が構築されることを楽しみに待ちたい。


注:本項に使用した画像は、「松丸本舗」のWebサイトから直貼りしてます。
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