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徒然日記 - 読書カテゴリのエントリ

スリーピング・ドール

カテゴリ : 
読書
執筆 : 
Dice 2012-9-29 22:43
 今回の通勤電車内読書は、ジェフリー・ディーヴァー著『スリーピング・ドール〈上〉〈下〉』(文春文庫)。

 リンカーン・ライム・シリーズの『ウォッチメイカー』に出てきた「人間嘘発見器」こと捜査官キャサリン・ダンスを主人公にしたスピンオフ作品である。上巻の方にアメリア・サックスとリンカーン・ライムもちらりと登場する。

 カリフォルニア州捜査局(CBI)の捜査官でキネシクス(動作学)の専門家であるダンスが対峙するのは、カルト集団の指導者ダニエル・ペル。強盗殺人罪で重警備の刑務所に収監されていたが、別の事件の尋問のためにモンテレー郡保安官事務所に移されていた間に何者かの手引きで脱獄し、逃走を図る。
 ペルの脱獄直前に尋問に当たっていたダンスは、そのまま捜査の指揮を執ることになり、その能力を駆使して関係者から話を聞き、言葉の裏に隠された真実を引き出しつつペルの行方を追う。

 精緻に練られたプロット、二転三転するストーリーで、最後まで一気に読ませる筆力は、さすがにディーヴァーである。
 証拠を科学的に分析するリンカー・ライムの捜査方法とは違い、会話の中で相手の何気ない動作や言葉遣いを分析するキャサリン・ダンスの捜査方法は、人間の心理を浮かび上がらせ、犯人や事件の関係者だけでなく同僚や家族を含め周囲の人間達との相互作用でストーリーが動いていく点に面白さがある。
 カルト集団がテーマということで、ペルが他人の心理に付け込み、意のままに操ろうとする手練手管もまた興味深い。☆☆☆☆1/2。

 ダンスの物語は本作で好評を博したらしく、シリーズ化されて、第二作『ロードサイド・クロス』も刊行されている。
 まだ文庫化はされていないみたいだが、読むのが楽しみな作品がまた出てきて嬉しい。
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アンサンブル

カテゴリ : 
読書
執筆 : 
Dice 2012-9-17 15:11
 今回の通勤電車内読書は、サラ・パレツキー著「アンサンブル」(ハヤカワ・ミステリ文庫)

 V・I・ウォショースキー誕生30周年記念として出版された日本オリジナルの短編集である。
 三部構成になっていて、第一部「V・I・ウォショースキーの事件簿」には、ヴィクが主人公の短編が4編収録されていて、4編目の『V・I・ウォショースキー最初の事件』は、ヴィクがまだ子どもの頃に遭遇した、文字どおり最初の事件のお話である。
 第二部「ウィンディシティ・ブルース」に収録の5編は、シリーズ外の独立した短編。しかし、パレツキーの問題意識や立ち位置が反映されていて面白い。
 第三部「ボーナス・トラック」は、『ポスター・チャイルド』の1編のみ収録で、シリーズでおなじみのフィンチレー警部補が登場するので、スピンアウト短編と言ってもいいかもしれない。

 長編を一気に読ませる筆力を持つパレツキーだけに、いずれの短編もそつなくまとめられているが、やはりシリーズ外の作品よりもヴィクが主人公の作品の方が楽しめる。
 山本やよいによる「訳者あとがき」によれば、シリーズ15作目となる最新作も間もなく刊行予定とのことなので、楽しみに待ちたい。☆☆☆1/2。
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トップ・プロデューサー

カテゴリ : 
読書
執筆 : 
Dice 2012-9-9 11:53
 今回の通勤電車内読書は、ノーブ・ヴォネガト著「トップ・プロデューサー ウォール街の殺人」(小学館文庫)

 主人公のグローブ・オルークは、投資銀行SKCで顧客に投資のアドバイスを行う爛肇奪廖Ε廛蹈妊紂璽機辞瓠ストックブローカー(投資仲買人)の中でも、特に優秀で成功した者達のうちの一人だ。
 18ヶ月前に交通事故で最愛の妻と娘を亡くし失意の底にあったが、親友のケレメン夫妻の助力を得てなんとか立ち直り、その陰をひきずりつつも、生き馬の目を抜くウォール街で丁々発止のやり取りをしている。

 そんなある日、チャーリー・ケレメンが妻のサムの誕生日を祝うパーティーをボストンの水族館で開いている最中、何者かの手によって水槽に落とされ、500人の招待者の目前で鮫の餌食となってしまう。

 残されたサムは、グローブの大学時代からの友人で、妻のエヴリンのルームメイトでもあった。
 チャーリーに資産管理をまかせきりで、600ドルしか手元に金のないサムの窮地を救うべく、チャーリーが経営していた爛侫.鵐鼻Εブ・ファンズ瓩砲弔い督瓦抻呂瓩織哀蹇璽屬蓮必然的に親友の裏の姿を明らかにすることとなる。
 そして、同時に明かされるサムの秘密とチャーリー殺害の真相。

 著者のノーブ・ヴォネガトは、ハーバード大学を卒業後、同大でMBAを取得。モーガン・スタンレーやペイン・ウェバーなどの投資銀行で個人投資家の資産管理を行った経験があり、本作が長編デビュー作。

 ヴォネガットと言えば、『スローターハウス5』などでおなじみの作家カート・ヴォネガットだろと思っていたら、なんと、ノーブはカートの甥なのだとか。どうりでと言うか、この巧みさはやはり血なのかね。
 巻頭の「謝辞」でノーブは、カートの息子マーク・ヴォネガットの言葉を引きつつ、
「数年前、マーク・ヴォネガットが彼の自宅で朝食をとりながら著述業を牴閥鉢瓩班召靴泙靴拭マークは、鋭い洞察力を非常に面白い形で述べた訳ですが、この経験についてはまさしくそのとおりでした。」
と書いている。
 牴閥鉢瓩砲佞気錣靴、デビュー作からこの出来は見事。

 証券業界をあまり知らない我々には馴染みのない、投資の世界で生きる者達の姿を活写しつつ、一人の男の喪失と再生というハードボイルドには不可欠の要素を織り込み、ミステリとしての構成もしっかりしている。
 しかも主人公は自転車乗り(チタンとカーボンのコルナゴに乗っていて、部屋にはツール・ド・フランスの歴代優勝者の写真が飾ってあったりする)という、私のツボにもしっかりとはまって、とても楽しめた一作だった。☆☆☆☆1/2。
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ハメット

カテゴリ : 
読書
執筆 : 
Dice 2012-9-2 11:47
 今回の通勤電車内読書は、ジョー・ゴアズ著「ハメット」(ハヤカワ・ミステリ文庫)
 前回の「硝子の暗殺者」でジョー・ゴアズをちょっと見直したので、映画化もされたという本作を手に取ってみた次第。

 主人公は、ダシール・ハメット。ハメットと言えば、言わずと知れたアメリカのミステリ作家(1984〜1961)で、代表作には「血の収穫」や「マルタの鷹」などがある。
 その実在したハメットは、アメリカ屈指の探偵会社であるピンカートン探偵社の探偵として働いていたこともあって、本作では、彼の経歴に1920年代後半の社会情勢や舞台となっているサンフランシスコの風俗などをうまく織り込んで、なかなか面白いハードボイルド・ミステリに仕立て上げている。

 ピンカートン探偵社を辞め、サンフランシスコで作家として生計を立てているダシール・ハメットの元へ、ピンカートン時代の同僚ヴィクター・アトキンスが訪ねてくる。
 腐敗した市の警察組織を立て直すために作られた浄化委員会に捜査員として雇われそうなので、その仕事を手伝って欲しいという。
 しかし、数日後にそのアトキンスが、何者かに撲殺された死体で発見されてしまう。
 アトキンスの後釜として浄化委員会に雇われたハメットは、同じくピンカートン社の探偵だったジミー・ライトらの助力を得て、アトキンスを殺した犯人を捜し始める。
 鍵を握るのは、アトキンスが話を聞こうとしていた娼家の女主人モリー・ファーと、その小間使いをしていた中国娘のクリスタル・タム。
 女の姿を追ううちに、ハメットはサンフランシスコの暗部に触れることになり、意外な黒幕の存在と復讐劇が明らかになる。

 ミステリとしてはもとより、虚実をうまくミックスして当時の時代感・空気感をよく表しているとともに、作品の構成や記述に悩む作家としてのハメットの苦悩までも描き出しているところなど、なかなかよく書けている。☆☆☆☆。


 蛇足だが、本作を原作とした映画『ハメット』(1982年公開、日本公開は1985年)は、ヴィム・ヴェンダース監督で製作総指揮がフランシス・フォード・コッポラという豪華さだが、私は未見。「興行的には振るわなかった。」とウィキペディアには記述あるが、本作を読んだ後なら観たくなるな。
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硝子の暗殺者

カテゴリ : 
読書
執筆 : 
Dice 2012-8-26 10:54
 今回の通勤電車内読書は、J・ゴアズ著「硝子の暗殺者」(扶桑社ミステリー)。ゴアズは、昨年12月の「路上の事件」以来。

 本書は、第一部>コーウィン<と第二部>ソーン<に分かれており、ハルデン(ハル)・コーウィンとブレンダン・ソーンの二人が主人公の物語と言って良い。

 年齢こそ開きがあるものの、生まれ育ちや経歴がよく似ていて、かたやベトナム戦争時にスナイパーとして活躍した後、傭兵に転じるが、留守中に妻を飲酒運転の車にはねられて失い、アメリカ北部の森で隠遁していたコーウィンと、陸軍のレンジャー隊員としてパナマに駐屯後、CIAのスナイパーとして活躍していたが、やはり留守中に妻と娘を飲酒運転の車に奪われ、アフリカのケニアでサファリの監視員として暮らしていたソーン。

 本来出会うことのなかったはずのこの二人が、大統領に就任したばかりのグスタヴ・ウォールバーグの暗殺を狙う者とその阻止のために追う者として交錯することになる。

 狙う者がコーウィンで、追う者がソーン、のはずだったが、ソーンの成功を喜ばず、彼の行動を監視して手柄を横取りしようとするFBI特別捜査官の存在が、ソーンに疑念を植え付け、コーウィンの過去の足跡を辿らせ、逆にソーンが追われる身になる。

 追いつ追われつのスリリングな展開と、最後に明らかになる大統領の卑劣な過去、そしてカタルシス。


 「路上の事件」では評価低かったけど、本作でちょっと作家の力量を見直した。ハードボイルド・ミステリとして、そこそこ良くできている。☆☆☆1/2。
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レクイエムの夜

カテゴリ : 
読書
執筆 : 
Dice 2012-8-15 11:04
 今回の通勤電車内読書は、レベッカ・キャントレル著「レクイエムの夜」(ハヤカワ・ミステリ文庫)

 ところはベルリン、ときは1931年、第一次世界大戦から十数年後、ナチ党が台頭しつつある時代である。
 主人公の新聞記者ハンナ・フォーゲルは、警察署の<身元不明死体の廊下>と呼ばれる一角で、弟エルンストの写真に遭遇する。
 自分とエルンストの身分証明書を、ドイツ政府の手から逃れてアメリカに渡航しようとしている友人サラとその息子トビアスに貸しているハンナは、その場でエルンストの身元を明らかにすることができない。

 ゲイクラブ<エル・ドラド>で美貌の女装歌手として愛されていた弟はなぜ殺されたのか、ハンナは単身で捜査を開始する。
 彼女が相手にするのは、SS(親衛隊)やSA(突撃隊)といった、なるべくなら関わり合いになりたくない組織に連なる手合いだが、類い希な勇気と才覚に加え、友人達の手助けを得て、難局を乗り越えて行く。
 そして、明らかになる弟の死の真相と、ゲイへの傾倒と男らしさとの相克が産み出す人間関係の悲劇。

 ナチ党が政権を奪取する直前、ユダヤ人への迫害などの暗雲はたちこめつつあるものの、まだ完全に暗黒の時代ではなく、庶民には多少の贅沢も許されていた当時のベルリンの風俗、時代の息づかいをうまく織り込みつつ、エルンスト・レームなど実在した人物と明らかになっている史実を柱に据えることによって、作品にリアリティを与えている。☆☆☆☆。

 著者のレベッカ・キャントレルは、ベルリンに留学していた経験を持ち、カーネギーメロン大学を卒業後、現在は夫と息子とともにハワイに在住とのこと。
 テクニカルライターを経て、本書で文壇デビューということだが、デビュー作としてのクオリティはかなり高い。本国アメリカでもかなり話題を呼んだらしい。
 本作に続くシリーズ第二作"A night of Long Knife"(長いナイフの夜)も刊行済みとのことなので、邦訳が待たれる。
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ウィンター・ビート

カテゴリ : 
読書
執筆 : 
Dice 2012-8-11 10:25
 今回の通勤電車内読書は、サラ・パレツキー著「ウィンター・ビート」(ハヤカワ・ミステリ文庫)。「ミッドナイト・ララバイ」に続くV・I・ウォショースキー シリーズの14作目になる。

 前作で登場した従妹のペトラがアルバイトをしているホットなナイトクラブに様子を見に出かけたヴィクは、ナディアという女性が駐車場で撃たれた現場に遭遇してしまう。

 ナディア殺しの犯人として逮捕されたのが、クラブに客として出入りしていたイラクからの帰還兵チャド・ヴィシュネスキー。チャドは、兵役のトラウマからかクラブでナディアに怒りをぶつける様子が目撃されていたが、逮捕された時は薬物の摂取で意識不明の状態で、その側にナディアを撃つのに使われた銃が転がっていた。

 息子の無罪を真実チャドの父親から、事件の真相を突き止めて欲しいと依頼を受けたヴィクは、渋々ながら調査を開始するのだが、クラブのオーナーのオリンピアや、クラブの舞台に立っていた>ボディ・アーティスト<など一筋縄では行かない女性達から話を聞き出そうとしているうちに、殺人事件の裏側に潜む大きな問題があぶり出されていく。

 相変わらずエネルギッシュに無謀なまでに動き回るヴィクと、彼女をサポートする友人達。
 現代アメリカの抱える社会問題を鋭く抉りながら、登場人物達を生き生きと活写するパレツキーの筆は、還暦を過ぎても衰えることがない。600ページを超える長編でありながら、その長さを感じさせない筆力は、まさに「巨匠」の名にふさわしい(パレツキーは、2011年にMWA(アメリカ探偵作家クラブ)のグランドマスター(巨匠賞)を受賞している)。☆☆☆☆1/2。
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ミダスの汚れた手

カテゴリ : 
読書
執筆 : 
Dice 2012-8-5 15:29
 今回の通勤電車内読書は、アン・ズルーディ著『ミダスの汚れた手』(小学館文庫)。先月紹介した『アテネからの使者』の続編に当たる。

 久しぶりに故郷の街アルカディアに帰ってきた太った男ヘルメス・ディアクトロスだが、友人で彼の土地を管理していた老人ガブリリス・カロエロスが車に轢き逃げされて死亡した現場に遭遇してしまう。

 前作同様に鋭い観察眼と軽妙な住民との会話を通して街の様子を探り、ガブリリスが管理していた土地を自分のものにしようと画策するパリアキス親子の機先を制しつつ、ガブリリスを轢き逃げした犯人も探し出していく。

 ギリシャ神話をモチーフにするこのシリーズ、今回の主題として取り上げられているのは、オウィディウスの『転身物語』に出てくる、触れるものを何でも黄金に変えてしまう両手を神に望み、それを与えられたミダス王の悲劇である。
 ミダス王は、望みどおり黄金に囲まれながらも飢え、渇き、娘すら失ってしまう。

 ミダス王になぞらえられるのは、パリアキス家の長、アリス・パリアキス。ミダス王は神に許しを求めて元に戻して貰うが、アリスはヘルメスの忠告にもかかわらず、欲望に囚われたまま、全てを失ってしまう。

 古代ギリシャの遺跡の残る、観光が主産業のアルカディアで生きる人々の夢や欲望と、古き良きギリシャを愛するヘルメスの失われつつある故郷への想いと哀しみ。
 今回もあちこちに現代人への警句が散りばめられ、含蓄のあるミステリに仕上がっている。☆☆☆☆。
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ベルファストの12人の亡霊

カテゴリ : 
読書
執筆 : 
Dice 2012-7-29 10:51
 今回の通勤電車内読書は、スチュアート・ネヴィル著「ベルファストの12人の亡霊」(RHブックス・プラス)

 主人公のゲリー・フィーガンは、元北アイルランド共和派(リパブリカン)のテロ実行役で、周囲からは英雄として畏敬されているが、今は過去のテロ行為で殺した12人の亡霊につきまとわれ、酒に逃げ場を求める日々を送っている。

 彼が政治犯として12年の刑期を務めている間に、北アイルランド情勢は和平合意に至り、落ち着きを取り戻しているが、その合意は派閥間の危うい緊張の上に成り立っていた。

 フィーガンがかつての仲間でテロの指令役だった男に会うと、亡霊のうちの一人がその命を欲しがるそぶりを見せ、亡霊に消えて欲しい一心でフィーガンがその男を射殺すると、その亡霊も消えてしまう。

 そうしてフィーガンは、亡霊達の求めるままにかつての仲間や指令役を次々に手にかけることになるのだが、その連続殺人は、フィーガンの意図しないままに各勢力の微妙なバランスを崩し、和平合意そのものにも影響を与えるようになってしまう。

 和平合意を維持したい政府関係者達は、一人の男をフィーガン阻止のために送り出し、フィーガンに好意を寄せる女性マリーとその娘エレンも巻き込んで、追いつ追われつの手に汗握る展開が繰り広げられる。

 これもまた、ハードボイルドの鉄則である一人の男の喪失と再生の物語だが、そこに亡霊が絡むことで、ちょっと異色なハードボイルドに仕上がっている。ただ、亡霊達の暗鬱さが、フィーガンの心象風景と北アイルランドの歴史や風土を反映している訳で、著者の試みは大成功と言えるだろう。☆☆☆☆1/2。

 著者のスチュアート・ネヴィルは、北アイルランド出身で年齢不詳。本作が最初の長編デビューで、本作の続編も刊行済みらしい。邦訳が楽しみだが、でるのかな?。
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アテネからの使者

カテゴリ : 
読書
執筆 : 
Dice 2012-7-21 22:45
 今回の通勤電車内読書は、アン・ズルーディ著「アテネからの使者」(小学館文庫)

 舞台は、エーゲ海に浮かぶ小さな島、ティミノス島。春真っ盛りのある日、まだ若い漁師の妻イリーニの死体が崖の下で発見される。
 その数ヶ月後、島の警察署にヘルメス・ディアクトロス<神々の使者ヘルメス>と名乗る太った男が現れる。<ヘルメスの翼のサンダル>と名付けた白いスニーカーを履く太った男は、一癖ありそうな警察署長に、「イリーニの死について調査するためにアテネからやってきた」と告げる。
 警察署は、まともな捜査もしないままイリーニの死を自殺として片付けていたが、その背景には、イリーニが夫のアンドレアスが漁に出ている留守中に島の若い大工テオと不貞を働いていたという噂があった。
 太った男ヘルメスは島のあちこちを巡り、イリーニを知る人びとに彼女の名誉を守るために話を聞いて回る。

 イリーニの独白を交えて展開される物語は、古い因習や閉ざされた環境故の濃密な人間関係に囚われた人びとが、単調な生活の中で、どのように人と出会い、愛を育み、愛を失って行くのかを、島の自然や生活とともに描き出していく。

 通常のミステリとは趣の異なる、民俗学や宗教学の雰囲気さえ感じさせる物語は、終盤で意外な犯人の姿をあぶり出すことになるが、その裁きもまた神話的であり、死者の後に残された者達への太った男の心遣いの温かさが余韻として残る。

 最後まで明かされない太った男の正体も含め、不思議な感触のミステリである。☆☆☆1/2。
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