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「宮崎県子ども読書活動推進計画(案)」に対する意見

「宮崎県子ども読書活動推進計画(案)」に対する意見

 平成13年12月に公布・施行された「子どもの読書活動の推進に関する法律」の第4条で、「地方公共団体は、基本理念にのっとり、国との連携を図りつつ、その地域の実情を踏まえ、子どもの読書活動の推進に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する。」と定められたことに伴い、本県でも推進に関する施策を策定することとなり、宮崎県教育庁生涯学習課が中心となって「宮崎県子ども読書活動推進計画(案)」がまとめられ、2004(平成16)年1月23日(金)〜2月16日(月)の間、県民から意見(パブリック・コメント)を求めることとなった。
 同計画案は、県庁や県内各教育事務所、県立図書館などにおいて配布・閲覧に供されたほか、県庁のWebサイトにも掲示され、意見はWebフォームでの記入や電子メールでも提出できるように配慮されていた。
 以下は、私が同計画案に対してまとめた意見で、2004(平成16)年2月15日に、上記サイトのWebフォームから送付したものである。送付した段階ではプレーンなテキストだったが、ここでは、読みやすくするためにhtmlに直して修飾を施してある。
 なお、意見の元となった計画案は、以下のものである。
 「宮崎県子ども読書活動推進計画(案)」(PDFファイル、17,802byte)


1.はじめに

 まず、実態についての具体的な検証が全くなされていないことに驚いた。
 例えば、公共図書館の設置率、利用登録者の数や割合、所蔵資料や借り出される資料の実態、職員の配置の状況、司書資格保有者の割合など、基本的な数字が全く示されていない。学校図書館についても、小・中・高校、盲・聾・養護学校別に、学校図書館(室)の設置状況、所蔵資料の実態(蔵書数、年間購入冊数)、職員配置の状況などの数字は示されていない。
 また、特に就学前から小学生までの子ども達に対して、公共図書館のサービスを補完し、重要な役割をはたしてきた、家庭文庫・子ども文庫については、これまでの長い歴史を軽視して「ボランティア」という言葉でくくられ、その利用実態は把握すらされていないように見受けられる。
 更に、資料の販売や絵本の原画展、講習会の開催などを通じて、本県の子ども読書環境の整備に大きな役割を果たし、特筆されて良い「木城えほんの郷」の活動についても、全く触れられていない。
 実態が明確になっていないので、どの部分に解決すべき問題点があるかわからないし、何を、いつまでに、どのように解消(充実)させて行くかという具体的なアクションプランを示すことができないので、「推進計画」とは名ばかりの表面的な記述に終始してしまっている。

2.公共図書館の整備促進

 この案に書かれている推進計画は、家庭、地域、学校という区分に分けられ、それぞれにおける役割・現状・充実としてまとめられているが、そうした区分では施策に一貫性のある柱が見えてこない。
 子どもの読書環境に関する大半の問題は、公共図書館、特に市町村立図書館の環境を充実させることによって解決する。本県における最大の問題は、公共図書館のサービス水準が圧倒的に低いことにある。
 まず、市町村における公共図書館の未設置を解消し、全ての市町村において等しく図書館サービスが受けられるようにするとともに、人口密度の高い地域では分館網を構築することによって、人口密度の低い地域では自動車図書館を巡回させることによってサービス網を広げ、より多くの県民が日常的に図書館を利用することのできる機会を増やすことが何よりも大切である。図書館サービスのカバー率が上がれば、家庭や地域、学校における子どもの読書機会は飛躍的に向上する。
 そのために、県は、図書館整備や資料購入に対する財政的な支援を行うとともに、図書館業務を担う人材の育成、全ての市町村立図書館に対する支援態勢の強化などに力を入れるべきである。
 指針となるべきこの推進計画では、例えば、今後10年間で市町村立図書館の未設置を解消し、公共図書館の利用登録率を県民全体の30%程度にまで上げる、といったような明確な目標を設定し、そのための具体的な支援策(補助事業の創設等)を示すべきであろう。

3.人材の育成

 図書館の設置促進と同時に大切なのは、人材の育成である。図書館サービスにおいて司書の重要性は今更言うまでもないが、特に子どもへのサービスにおいては、限られた予算の中で購入する資料を選択し、窓口において子どもからの相談を受けつつ適切な資料に誘導する司書の役割は極めて大きい。
 成長期の子ども達に対して、個々の発達の状況、内面に抱える問題などを適切に読みとりつつ、資料の提供を通してその成長を促すためには、児童サービスに関する教育と、移り変わる資料群に関する十分な知識が必要であり、そのために経験を重ねる必要がある。
 残念ながら県立図書館においては、専任職員27名のうち司書資格所有者はわずか3名に過ぎず(『日本の図書館 2003』日本図書館協会)、職員の異動サイクルも3年と短いため、十分に経験を積んだ職員が育っておらず、提供されるサービスの水準も低い。
 県立図書館における司書率の低さは、図書館業務について豊富な知識と経験を持つ人材の県内の図書館界に対する供給不足に繋がり、それが本県での市町村立図書館の設置を遅らせる遠因にもなっていることは否定できない。市町村立図書館においても、司書の相対的な地位はまだまだ低い。
 指針となるべきこの推進計画では、県立図書館の司書率を専任職員の50%以上に向上させるといった明確な目標を設定するとともに、人事異動の閉塞感を打破するための工夫として、市町村立図書館や学校図書館との交流による異動システムを構築するなどの具体策を示すべきであろう。
 また、子どもの本の選び方、読み聞かせの方法などなど、子どもに対するサービス手法について、市町村立図書館の職員や一般向けの講座や講習会を、県立図書館が積極的に開催することなどを提言すべきであろう。

4.学校図書館の充実

 学校図書館は、児童・生徒が日常的に利用する環境を提供し、公共図書館の利用教育を行って、自らが図書館の資料群を活用して問題解決を図る能力を身につけさせるためにも、重要な場である。
 残念ながら、特に本県の学校現場においては、施設・設備の問題、乏しい資料費、司書の未配置などのために、学校図書館(室)が十分なサービスを提供しているとは言い難い。中には、図書室を利用できる学年や曜日を制限したりするなど、限定的なサービスしか行えない学校もある。
 学校図書館は、案の5ページにあるように多くの座席を確保することに力を注ぐよりも、そのスペースを書架に宛て、より多くの資料を収集し提供するように心がけるべきである。その際、書架や家具などの設備については、これまで公共図書館の整備で培われたノウハウを導入し、より効率的で明るく、快適な環境となるように配慮されなければならない。
 その上で、資料費の増額を図り、司書資格を持つ職員を配置して、全ての休み時間と放課後に児童・生徒が図書館(室)を利用できるような配慮も必要である。
 また、図書館資料と職員については、公共図書館と一体となった整備を図ることが望ましい。市町村においては、コンピュータを利用した図書館の運営システムの中で、学校図書館(室)を公共図書館の分館として位置づけ、資料の購入と装備を効率的に行うことができるようにするとともに、資料の横断的な検索が可能になるようにすることが重要である。市町村立図書館と学校図書館(室)が一体となることによって、公共図書館のサービス窓口が広がり、地域住民も学校図書館に関心を持つようになるし、学校に司書を配置する意味も出てくる。
 指針となるべきこの推進計画では、このような点を踏まえて、学校図書館(室)サービス指標や施設整備基準を具体的に示し、年次的なサービス目標と、県として行うべき支援策を示すべきであろう。

 現時点で示されている計画案では、実効性のある計画が何一つ示されておらず、「整備に努める」とか「〜が必要」という言葉だけが上滑りしていて、計画を作ること自体が目標になっている感が否めない。
 繰り返しになるが、本県においては、公共図書館の整備を急ぐことが、子どもの読書活動を推進する一番の早道であり、そのために「ヒト・カネ・モノ」を集中して注ぎ込むことが必要なのである。
 どうか、上記の提言の趣旨を理解いただき、より具体的な推進計画を示されるとともに、一刻も早く、支援策の実現に着手していただきたい。子ども達の成長は、行政の動きを待ってはくれないのだから。

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