本日付け宮崎日日新聞の日南・串間面「クシマニアのチカラ」に、串間市立図書館長の「竹下博文氏(56)の紹介記事掲載。
竹下氏は、人・地域づくりなど教育・文化活動を展開するNPO法人「コミュニティ21」の代表であり、同法人が指定管理者制度を導入した串間市立図書館の運営を1年前に請け負ったことから、館長に就任している。
記事では、「公立図書館を民間が運営するのは県内唯一」と書かれているが、民間ボランティア任せにしている宮崎市立図書館も実情はあまり変わらない。
指定管理者制度の導入は、市の厳しい財政事情を反映してやむにやまれぬもののようだが、年間の図書購入費が1,000万円から半額の500万円になるなど、図書館運営の根幹部分で大きな影響を与えている。
管理者となった「コミュニティ21」では、「他図書館との相互貸借に力を入れることで補う」と書かれているが、相互貸借とは、読んで字のごとく相互に貸借することで成立するものであり、資料費のない図書館が一方的に他館を頼りにすることを前提としていない。
相互貸借の手続きを経て資料が利用者の手元に届くまでには、それなりの時間がかかるし、そもそも、新しい資料の供給が少なくなって回転が悪くなると、図書館そのものの魅力がだんだんと薄れてくるものだ。
年間500万円の図書購入費が、串間市立図書館にとって暫定的なものであることを願うばかりである。
記事では、絵本作り講座、小学生ボランティア受け入れ、串間市に関する記事のスクラップ「くしま一週間」の作成、新聞折り込みチラシや求人広告をジャンル別にまとまた「地域情報コーナー」の設置など予算をかけずに知恵を出し合う努力を伝えている。
学校の夏休み期間には、開館時間を1時間延長して午後7時までとするような努力もある。将来的には、早出・遅出の勤務形態を工夫して、実施期間を延長する方針だとか。
串間市立図書館の場合、もともとの施設・設備や蔵書、職員の資質がそれなりに充実していたこともあり、新たな取り組みが今のところプラスに働いているように受け止められる。
しかしながら、これらの取り組みが指定管理者制度にならなければできなかったのかと言うと、そうではないだろう。
財政的な効果としては、人件費の削減がもっとも大きく、それは結果として、図書館職員の専門性、人という育成に時間を要する資源を根底としたサービスレベルの維持・向上をスポイルしてしまうものなのだ。
自治体が図書館を持つということはどういうことなのか、図書館は市民の何割をメインのサービスターゲットに置くのか、利用者のどのような要求にどのように応えるのか、それらを改めて問い直す時、自治体と住民の図書館に対する役割、責務が見えてくるのではないだろうか。