北郷町立図書館

訪問日:2001年9月26日(水)

 南郷町立図書館を訪問した後、途中で昼食を摂って、北郷町に向かいました。ぐずついた天気で、小雨が降ったり止んだりでしたが、着いた頃にはなんとかあがってくれました。
 北郷町立図書館の場所は、北郷町役場の前を東に入って、左手に役場、農村センター、ふれあい交流センターを見ながら走ると、その隣、幼稚園の手前にあります。私は以前から知っていたので迷いませんでしたが、初めて行かれる方は、北郷町のサイト宮崎県立図書館のサイトにある北郷町立図書館の地図を参考にされると良いでしょう。

図書館入口

外観 ふれあい交流センターの方(西側)から見た外観。写真右に駐車場。
 RC造平屋の建物で、延べ床面積は760.70㎡。壁面は煉瓦様のタイル張りになっていて落ち着いた雰囲気。
 現在の建物のオープンは、1989(平成元)年8月8日。


入口 正面の入口へ。
 階段を3段上がるが、車椅子用には、この右手にスロープがある。
 入口は左右開きの自動ドアになっている。普通なら、このあたりのどこかに返却用のブックポストがあるのだが、見える範囲には無い。


返却ポスト おかしいなと思って右手を見てみると、数メートル離れたところにありました、「図書返却口(夜間・休館用)」の表示。
 下の写真のように、取っ手のついた蓋があるので、いったん取っ手を持ち上げて開口部に本を入れるようになっている。この返却口の裏側に図書館の事務室がある。


風除室 入口の自動ドアを開けて中にはいると、風除室で、更にもう1枚自動ドアがある。
 この右手の壁には、「利用あんない」が掲げられており、「開館は午前9時から午後5時、休館日は毎週月曜日、第3日曜日、毎月1日、国民の祝日、年末年始」などとある。休館日が少々多いような気もするが、専任1、兼任2、臨時2.8人という少ない職員態勢なので、やむを得ないところか。


自由に関する宣言 右のガラス面には、「図書館の自由に関する宣言」のポスターが掲示されていた。
 目につきやすい所に、きちんと掲示してある姿勢が嬉しい。自由に関する宣言をきちんと実践するのは、実は難しいことなのだけど…。


入口横の展示架 さて、いよいよ館内に。
 入口を入るとすぐ左手の壁際に、「よんでみたいなこの本」という展示架が。5段の棚に、本と鉢植え、小物などが並べられている。


 正面のホールには、会議用の長机を2つ並べたものに、レースついたのテーブルクロスをかけて、展示台がしつらえてある。訪問したときに展示されていたのは、「東南アジアがわかる本」。
 上の写真の展示架と、この写真の展示台、特別なものではなく、あり合わせの材料でしつらえられているのだが、それだけでなんとなく図書館職員のセンスを感じさせる。


 館内の配置は、下の図(いただいた利用案内からスキャン)のようになっている。図面の上が北になる。東と北に比較的開口の大きな窓があり、閲覧室の西側壁面上部にトップライト用の窓が設けられている。



 設計は、日南市のU建築設計室、家具は基本的にキハラ製である。
 配置図は少し古く、実際には、企画展示室は「おはなしの部屋」として使われており、AVコーナーは右下の児童コーナーの奥に移され、AVブースのあった辺りは、書架が配置されている。


入口横の展示架 ホールから右手を覗くと、右手前にカウンターがあり、奥に開架閲覧室が広がっている。
 開架閲覧室部分は400㎡ほどだと思われ、こじんまりとしたスペースに本がぎっしりと詰まっているという印象を受ける。

児童コーナー

児童コーナー全景 閲覧室の北側奥の方から、児童コーナーを俯瞰したところ。写真に写っていない右手奥にカウンターがあり、その右が図書館の入り口である。
 この写真ではちょっとわかりにくいが、手前に文学書を中心とした4段の児童書架が並び、その奥に絵本コーナーがある。その更に奥は5段の高書架やAVコーナーでビデオテープなどが並んでいる。


絵本コーナー 絵本コーナーの様子。
 手前が角を丸くした3段の絵本架で、奥の窓下には面展示用の絵本架が見える。


絵本架とテーブル 上の写真の反対側から撮影したところ。
 絵本架のアールに、テーブルの丸い端を合わせて配置。



絵本架上部のディスプレイ

 絵本架の上部は、このようにいろいろな小物を使って楽しく飾られている。
 ただ並べれば良いというものでもなく、このあたりが図書館員のセンスの問われるところ。雑然とならずに並べるのは、意外と難しい。


面展示架とベンチ 東側の窓下には、絵本の面展示架とベンチが作られている。
 座面の濃い茶色が、児童コーナーにはちょっとマッチしない。近くにあるテーブルの椅子の座面が青色なので、そちらに合わせた方が良かったかもしれない。
 実際にはこの面展示架と一体になったベンチは実用性に欠ける。人が座っていると展示された絵本が見えないし、手に取りにくい。もともとベンチだけあって、後から面展示架をはめ込んだのかもしれないが、どうせなら、ベンチもはずして面展示架の下は、絵本用の書架を1段作り込んだ方が良かったかも。


面展示つき絵本架 ベンチの横にある絵本架。最上段が面展示になっていて、下2段は普通に収納。面展示できる書架は、上のベンチの所以外にはここだけなので、少し寂しい。もっと賑やかに面展示できると良いのだが。


絵本がたくさん アールのついた絵本架の前から視線を低くして北側を見たところ。写真の左側がカウンター、正面には大型本の「はらぺこあおむし」などが見える。


大型本の面展示 その「はらぺこあおむし」など大型本の面展示。


新着児童書の展示 新しく入った児童書が展示されていた家具。
 この家具は、スツールがセットになっていて、もともと閲覧用の家具ではないかと思われる。展示用としては少々中途半端だが、限られたスペースと予算をあれこれやりくりして運営してしなければならないので、図書館員を責めるわけにもいかない。


紙芝居架 紙芝居用の書架。右の棚は、足りなくなって後から追加したものだろう。この規模の図書館にしては、紙芝居の数は多い方ではないかと思う。かなりぎっしりと詰まっている。


児童書架(4段) 児童書用の4段の中書架。下2段が裾広がりになっている。背板がしっかりあるので、反対側を見通すことはできない。
 ここでは、主に文学NDCの9類(文学)の排架に使われている。


児童書架(5段) 絵本コーナーの南側に置かれた児童書用の5段の高書架。


児童書架(5段)を横から 上の写真の児童書架を裏側に回って、斜め横から見たところ。
 棚板の奥行きがさほど深くないので、版型の比較的大きい児童書で使うと、本がかなり前面に飛び出してきて良い感じ。

一般書コーナー

新聞架 エントランスホールから閲覧室への入り口のすぐ左手に置かれた新聞架。手前側、つまりエントランスホール側に当日の新聞6紙が差し込まれている。利用者は慣れているから良いのかもしれないが、資料である新聞の置き場所としては少し変。


新聞架裏面 上の新聞架を反対側、つまり閲覧室側から見たところ。
 当月分の新聞が綴られて保管されている。それより以前の新聞については、別な場所に保管されている。
 この写真では切れて写っていないが、この右にはインターネットに接続できるデスクトップパソコンが置かれていた。利用者は、カウンターに申し出て利用できる。接続はISDNによるダイヤルアップだった。


カウンター 入り口を入ってすぐ右手にあるカウンター。特にどうと言うことも無いが、天板が白いのは最近の図書館では珍しい。
 カウンターの後方、奥が職員の事務スペースになっている。


新着図書展示架 カウンターの前に置かれていた新着図書の展示用家具。
 児童コーナーのところでも書いたが、もともとブラウジング用の家具を流用したのではないかと思う。展示用にしては角度のつけ方が中途半端で、並べ方も難しい。


返却本用のブックトラック カウンター前の書架にくっつけて、返却本を一時的に載せておくブックトラックが1台。
 最近は、こうして返却資料を一時的に載せておく書架やブックトラックを用意している図書館が多い。繁忙期に職員の手が回らないためにやむなくやっていたのが、意外に回転が良かったので一石二鳥で続いている。


壁面高書架 西側壁面に設置された6段の高書架。下2段が裾広がりになっているのは他の書架と同じだが、その下2段の部分に注目。


スライド式書架 その、下2段部分のアップ。なんと、スライド式になっていて、前後2列に本が収納できるようになっている。家庭用の書架では目にするが、図書館用の書架でこの作りは珍しい。
 使い勝手という点では感心できないが、限られた面積の中にできるだけたくさんの資料を収蔵しようとした苦労の現れだろう。


一般書架 こちらが一般書架。手前が4段の中書架、奥に6段の高書架が並ぶ。


書架の上にも本が この図書館はスペースにゆとりが無い上に、開館当時は閉架書庫が無かった。現在は、閉架書庫を増設したとのことだが、それでも閲覧室に本があふれている。書架に収納しきれない分は、こうして4段の中書架の上部にも並べられている。苦肉の策。


新書架 新書用の書架を正面から見たところ。
 本当にぎっしりで、本の上部は指一本入るのがやっとの隙間しか無い。ちょっと指が太いと入らないかも。これではちょっと取り出しづらい。


文庫架 こちらは文庫本用の書架。壁面の高書架の下部、スライド式の棚の部分を使ってこのように排架されている。ここもほぼぎっしり。


北東角の閲覧用テーブル 閲覧室の北東角の部分。北側壁面には西面と同様に6段の高書架が設置され、その前には閲覧用の6人掛けテーブルが4つと椅子がある。


大型本用書架 美術書や写真集など大型本を収納するための書架。


書架サイン 書架の側面上部に付けられたサイン。三角に出っ張った意匠で、明るい水色の地に白の文字。高書架の上部だと良いが、中書架だと少々邪魔になるかもしれない。


書架サイン2 書架の一部をアップ。どのような種類の本が排架されているのかを示す職員手作りのサインが見える。漢字にふりがなが振られているところが親切。


雑誌架 カウンターの前に置かれている雑誌架。本来は下2段だけだが、足りなくなったために上部の天板の上にも雑誌が置かれている。
 下の2段は、面展示の部分を開くとバックナンバーが収納されている。


目録カード 雑誌架の裏側に置かれていた目録カード。
 この図書館の資料は、TRC MARCを使ってコンピュータ管理されているが、目録カードも併用されている。資料の納入の際に、業者から装備された資料と必要事項が記入済みの目録カードが届けられる。
 最近は、ほとんどの図書館がコンピュータ管理に移行する際に目録カードと決別しているので、最近ではこういうものを見かけるのも珍しい。


車椅子用の机 目録カードの隣には、「車椅子」と上部に表示された机が置かれていた。
 確かに、車椅子が乗り入れやすいような作りになってはいるが、閲覧用の机が並べられたスペースは別にあるので、「何故こんなところに?」という違和感は否めない。障害者への配慮は確かに必要だが、ここまで明示する必要が果たしてあるのかどうか。図書館の家具は、車椅子でも利用しやすい家具であれば、専用のものを別に置かなくても良いのではないだろうか。特に閲覧用の机は、健常者と障害者が並んで使えるものであって欲しい。

その他

おはなしのへや入口 「おはなしのへや」は、図書館の入口を入ってすぐ左横にある企画展示室に設置されている。児童コーナーからは少し離れているが、かなりの人数が収容できるし、声も閲覧室まで届かないので、結果的にはうまくいっている。


おはなしのへや内部 内部はこんな感じ。床には赤いじゅうたんが敷かれ、前には長椅子が一つ。壁は貼り絵で楽しく飾り(後方の壁はトトロだった)、入口の横にはちょっとしたディスプレイもあった。


よみきかせ会案内 部屋の入口には、一人掛けの椅子にクロスをかけて、こういう手書きの案内が置かれていた。松ぼっくりが2つ、さりげなく置かれ、ディスプレイのセンスとしてはなかなかのものを感じる。
 肝心の「よみきかせ会」は、毎週第2・第4土曜日の午後2時から。


よみきかせの様子 ところが、この日は隣の幼稚園の子ども達がやってきて、図書館員からよみきかせを受けていたので、ちょっと覗かせてもらった。靴を脱いでじゅうたんに上がり、座って熱心に聞き入っていた。後方で聞いている二人は、実習中の大学生らしい。良い勉強になったかも。


ビデオブース 児童コーナーの隣、AVコーナーにあるビデオブース。モニタが3台並び、それぞれに椅子が3脚。壁の反対側は職員の事務スペース。
 ビデオは、カウンターにある送出装置から送出。利用者は、カウンターに申し込む。児童の利用が結構多いとのこと。


AV資料 ビデオ、レーザーディスク、CDなどが並ぶ書架。資料数は、2000(平成12)年度末でビデオテープ291点、CD153点などとさほど多くない。
 貸し出しはしていないので、ブースでの利用に限られる。利用者は、ここで利用したい資料を選び、カウンターに申し込む。注意書きには、子ども向けに「ビデオがみれるのは、1にち1かいです」などとある。


元のAVコーナー 閲覧室の東側にある半円形の出窓のようになっているスペース。元々はAVコーナーで、オーディオブースになっていたが、現在は使用されていないらしい。
 AV資料は、メディアや機器の移り変わりのサイクルが短く、機器の故障も比較的多いので、運用がなかなか難しい。
 インターネット時代を迎え、AV資料もデジタル化の方向に向かいつつあり、ネットワークを経由してデータとして提供される資料も増えつつある。公共図書館として過去の遺産を維持しつつ、これらにどのように対応するのか、なかなか解決策は見えない。


おおぞら号 自動車図書館の「おおぞら号」。積載図書は約1,400冊で、11ヶ所の駐車場を週に1度のペースで巡回している。
 冒頭にも書いたが、この図書館は司書資格をもつ専任職員が1名で、臨時職員2.8名(うち司書資格者1名)に兼任2名を加えた体制で運営されている。本当に少ない職員で、自動車図書館まで運行するのは容易ではないはず。頑張りには頭が下がる思いである。せめてもう1名の増員を町役場には要求したいところだろう。

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