宮崎市を中心に活動している劇団SPCの第25回公演「雪をわたって ~私たちはあの日森へ行ってみた~」を観に、オルブライト・ホールへ行ってきた。
芝居を観るのは、2005年11月に行われた、この劇団と劇団220のコラボ公演「煙が目にしみる」以来だが、あの時のアンケートに住所を書いたら、今回公演の案内葉書が来て、行こうと思っていた所に、知人で劇団員のFさんからも案内メールが来たのでとどめを刺されたという訳だ。
会場のオルブライト・ホールの入口で、Fさんから頼んでいた前売りチケットを受け取り、席について開演を待っていたら、前列にWeb版みやざきの自然でご一緒しているKさんが偶然にやってきて、その場で新年のご挨拶。
さて、芝居の方は、北村想原作の作品だが、冒頭で佐野洋子の「100万回生きた猫」のパロディである「100万と1回目の猫」という絵本の朗読があったり、狐達が演じる劇中劇で、宮沢賢治の「注文の多い料理店」や「セロ弾きのゴーシュ」、坪田穣治の「魔法」を下敷きにした作品が演じられたりと、なかなかに面白い仕掛けが込められていた。
「注文の多い料理店」は、展開はほぼオリジナルに近いが、料理店に行き着くまでの3人(匹?)の掛け合いにちょっとした毒と笑いが盛られていた。もっと毒を効かせた方が面白くなるのかとも思うが、小さな子どもも観ている芝居なので、あれが限界だろうか。
「100万と1回目の猫」は、オリジナルの愛を死に置き換えつつ、オリジナルの世界をうまく取り込んでいるし、「セロ弾きのゴーシュ」は、「幸福の王子」との融合で含蓄のある作品になっていた。
オリジナルの世界を微妙にずらしつつ、オリジナルの良さを失わずに新たな世界を築いているのは、やはり脚本の力だろうか。
また、「魔法」を下敷きにした「アホーマンス」は、演じた役者(たぶん、コン作役の蛯原達朗)の怪演ぶりが、阿部サダヲっぽい感じで強く印象に残った。
終盤のケルルン博士の特別講義は、私にはちょっと退屈だったし、最後に主人公のシロウとカンコが狐のコンザブローから貰うのが「トマト」というのは、「何故??」という感じだった。
トマトは、今でこそ一年中手に入るが、基本的には夏の野菜だし、雪に映える赤い果物なら、ここは「リンゴ」ではないのだろうか?。
それとも、狐に化かされた余韻を残すために、あえて「トマト」を使ったのか?。
役者によっては、ちょっとセリフが聞き取り辛かったりするという不満もあったが、それはささいな問題であり、総じて楽しめた芝居だった。
1200円で1時間半楽しめて、こうしてブログに書くネタもできて、ここに書くためにちょっとした下調べもしたので、新たな知識を得ることもできたので、本当に満足である。
劇団SPCには、これからも頑張っていただきたいと思う次第である。