妻から聞かされた話。
娘が所属するクラブで習っていた小学生が、父親の転勤で引っ越しをすることとなり、クラブを辞めることになった。
別れに当たり、練習をともにしてきた仲間達にちょっとした記念品を送るのは、こうしたクラブの恒例であり、その子も最後の練習の夜に選手コースの生徒達に記念品を持ってきて配っていた。
他の子が何を貰ったのかは知らないが、娘が帰宅して貰った包みを開けると、その子が大事に使っていたであろうアンパンマンの貯金箱と手紙が入っており、貯金箱の中には、その子が貯めた硬貨が、そのまま入っていた。
驚いた娘が急いで手紙を読むと、「将来、新体操クラブを開く時の資金に役立ててください」という内容のことが書いてあった。
将来は新体操の指導者になりたいという娘の夢は、クラブの子ども達の間では有名な話であり、そうなったら習いたいとか、自分もコーチで使って欲しいとか言う子がたくさんいるのだとか。
しかし、大事に貯めてきたであろうお金を簡単に受け取ることはできないと、夜は遅かったが、妻がその子の母親に電話をしたところ、その子がいろいろと考えた末に、父親とも相談して決めたことなので、受け取って欲しいと言われたとのこと。
その話を聞いて、妻と娘は二人して涙し、それを私に話す妻の目には再び涙があった。
私も聞いていて、涙が滲むの禁じ得なかった。
アンパンマンの貯金箱は、今、娘の机の上に手紙とともに大事に飾られている。