訪問日:2001年10月18日(木)
仕事関係の会議に出席するために、群馬県吾妻(あがつま)郡中之条町に出かけました。昼過ぎに到着した会場は、「ツインプラザ」という名称の吾妻郡生涯学習複合施設で、多目的ホールを持つ学習センターと図書館が一緒になった吾妻広域町村圏振興整備組合の複合施設でした。
場所は、JR吾妻線中之条駅から中之条第一小学校の横を通って徒歩で15分ほど。
開会より1時間ほど前に着いたので、開会までの短い時間で慌ただしく図書館の方を取材。カウンターに居合わせた職員の方の許可を得て館内をデジカメで撮影し、少しだけ話を伺いました。
図書館入口
中之条駅のほうから歩いて行くと、高低差のある敷地に立つ青灰色の「ツインプラザ」が見えて来る。
向かって左側が図書館棟、右側が生涯学習センター棟で、2階部分でつながっている。写真で見えてりる2階部分には、会議室、研修室、和室などがある。
こちらから側からは車椅子でのアプローチはできないが、奥の方に1階と同レベルの駐車場があり、そちらから入ることになる。
階段の下から左側を見上げたところ。ガラス張りの部分は、図書館棟の「シビックホール」と称される部分。
階段を上って、1階部分に到達。写真の左端、暗くなっている部分が図書館への入口。奥に閲覧室のガラス面の開放が見える。
方角としては、奥が北、右手が東なので、ガラス面の開放は東を向いていることになる。
いよいよ図書館の入口。木製の自動ドアを開けて中に入ると、風除室で、更にもう1枚ガラスの自動ドアがある。
入口の周辺に返却ポストが無かったので、おかしいなと思って辺りを捜索。入口の左手、陰になっている部分の壁面に、このように作り付けてあった。入口の前に立っていては絶対に見えない位置にあって、これではちょっと不便。おそらく、返却された本を処理する職員の方も、カウンターから遠いので不便だと思う。
館内にあった案内板をデジカメで撮ったものなので少々わかりにくいが、図書館1階の平面図。直角三角形の長辺が円弧になった形状をしており、この図では、右が北、左が南、上が西、下が東になる。
オープンは、2000(平成12)年4月15日。いただいたパンフレットから数字を拾うと、12,476.32㎡の敷地面積に、「ツインプラザ」としての延床面積が5,818.19㎡。図書館部分の面積は不明。開館時の蔵書数が5万6,000冊で、最大で13万冊の収蔵が可能とのこと。書庫の収蔵能力が6万5,000冊と聞いたので、開架は最大で6万5,000冊となる。
左側のとがった部分が「シビックホール」と呼ばれる部分。中央やや左に入口から続くエントランスホールがあり、右手に閲覧室が広がる。右上が書庫で、その左隣が事務室。事務室の前にサービスカウンター。
この図書館は、群馬県吾妻郡(1,278.27km2、人口67,358人)の8町村(中之条町、吾妻町、長野原町、草津町、高山村、六合村、東村、嬬恋村)で組織されている吾妻広域町村圏振興整備組合が整備し、運営は所在地である中之条町に委託されている。働いている職員は、中之条町の職員とのこと。正職員3人、嘱託4人、臨時3人の体制で、館長は中之条町教育長が兼務、副館長も兼務とのこと。正職員と嘱託職員のうち各1名が司書。
中之条町は郡の北東に位置し、中心からははずれているので、図書館の位置としては、郡内の住民が等しく使うには不便ではないかと思う。分館や自動車図書館でもなければ、サービスが行き渡らないような気がするが、それらしき気配は感じられない。
エントランスホールから閲覧室の方を俯瞰。
カウンター前のコンクリートの円柱に支えられた高い部分から、東側の壁面へ向かって白い天井がにカーブを描きながら降りてきており、広い空間を感じさせる。東側はガラス面の大開放なので、かなり明るく感じる。写真では、明るすぎて奥が白く飛んでいる。
床は、木のフローリングで温かみを感じる。吾妻郡は、森林が全面積の8割を超えるので、「ツインプラザ」は家具や床材に群馬の県産材を多用しているとのこと。
右手前には、上下2段のロッカーが設置されているが、その前にテーブルが置かれて展示がされているので、積極的には使われていない様子。
上の写真の左側には、館内案内図と新着図書の展示コーナーが設けられている。
下の2段の書架には、「2001年第一小すいせん図書」と書かれた表示があったので、近くにある中之条第一小学校の推薦図書が置かれているのだろう。展示用としては、下の2段(特に最下段)はあまり効果的ではない。
上の新着書展示架の右隣に置かれていたインターネット接続されたパソコン。
こうやって2台並べられると、隣が近いのでなんとなく使いにくそう。プライバシーも何もあったものではない。こういう場合は、間に衝立があった方が良い。
この分野の機器は、これからまだまだ大きく変わりそう。無線LANのホットスポットを公共図書館内に設けるというのが今後増えるかも。
ロッカー前のテーブルに置かれた展示。読書週間にちなんだテーマ展示のように見受けられた。
本を開いたまま長時間置いておくと、本を傷めることにもなるので要注意。平置きにするなら、ポップを立てるなり高さを変えるなりしてメリハリを付けたほうが面白い。図書館員は、本屋さんの店頭で勉強しよう。デパートの食器売り場などのディスプレイも意外に勉強になる。
児童コーナー
サービスカウンターの前から児童コーナーのほうを見たところ。
奥の窓際が明るいので、手前がかなり暗くなってしまう。ストロボを使わない撮影ではなかなか難しいところ。
手前の3段の書架が絵本架。天井も高く、余裕のあるスペースである。児童コーナーの開架蔵書は2万冊弱。
上の写真とは逆に、児童コーナーの方からカウンター方向を見たところ。
「はらぺこあおむし」の大型本が展示してある書架の横に紙芝居架が見える。時間が無くて、この辺は写真を撮れなかった。
絵本コーナーの様子。
ざっと見て、絵本の面展示が少ない、というかほとんど無いのにお気づきだろうか。絵本の数はかなり多いと思うが、こえだけ新しい図書館で、スペースにも余裕があるのに面展示用の書架が無いのは珍しい。
写真左上の窓の向こうがエントランスホールになっている。
そのエントランスホールが見える窓の下に設置された絵本架。
ここの上2段ををずらっと面展示にすると良かったのではないかと思う。
そうそう、ここ図書館の絵本は、「絵を書いた人の名前順」に並べられていた。
絵本架とその横に置かれた椅子。
書架の側板の上部が丸くカットされており、優しい感じを出している。天板は無く、大型の本も上段に立てることができる。
カウンターの職員の方に家具について伺ったら、書架は基本的に日本ファイリング製で、家具は地元の材を使った特注と聞いたので、その組み合わせかも。書架につけられたサインがピンクで、椅子の座面のピンクと合わせてある。児童コーナーのテーマカラーはピンクらしい。
読み聞かせコーナーと呼ぶには少し小さいのではないかと思える半円形のステージ。案内図には「ねころびコーナー」とあったが、これ以外に読み聞かせのできそうなスペースは近くに見あたらなかったので、おはなし会とかはここでやるのかな。
やっぱり、防音と空間としての演出も兼ねて、周囲から遮蔽できるスペースが児童コーナーの一角に欲しいところ。
手前に見える机と椅子は、児童コーナーでこれだけしかない。
4段の児童書架。3段の絵本架と基本構造は同じ。
4段だが、最上段の背板が高くなって高書架と同じ高さになっている児童書架。「がいこくのものがたり」が置かれている。
天板は無く、版型の大きな本も置ける。最上段の背板の部分は、掲示板のようにディスプレイができるようになっていて面白い。
上の児童書架の裏側に回ると、こうなっている。基本的に5段の高書架だが、ところどころ棚板の高さを変えて4段になっているところもある。主に児童用の4類が置かれている。
こちら側には天板あり。
一般書コーナー
一般書コーナーの書架群を北西の角のほうから見たところ。
こちらから見ると、書架が窓のある壁面と平行に近く置かれているのと、天井が高くて照明の光が十分に届いていないので、暗く見える。輝度対比が大きいせいかもしれない。できれば書架照明が欲しいところ。
書架は6段の高書架だが、背板は無い(と言うかほんの数センチ)ので書架の間に入っても圧迫感は弱い。
一般書コーナーの開架蔵書は約4万5,000冊。
高書架の間に入って横から見たところ。
ここでは、左側のコンクリートの円柱が少し邪魔をしているが、さほど書架が勝ちすぎることも無い。
奥にカウンターの辺りが見え、書架配置がカウンター方向からの見通しを優先して決められたことがうかがえる。
北側壁面に設置された7段の高書架。ここだけスチール主体の書架が使われている。
主に全集ものが置かれ、ちょっと重々しいと言うか寒々しいと言うか、そんな感じがする。
この規模の図書館なら、文学関係の全集で単一著者のものに限っては、作品集(NDCで言うところの9×8)の棚を作るより、利用を優先して他の著作と一緒に文学(例えば913.6、この規模の図書館ではNDCを4桁も使わないと思うけど)の書架に排架した方が良いのではないかと思うのだがどうなんだろう。でも、全集って欠けると補充が難しいから、その作者の作品を探す最後の砦として残しておきたいって思いもあるかも。
しかし、よくよく考えれば、現代文学の個人全集には小説もエッセイも書簡集も混じったりしているから、全集の点数が多いのであれば、やっぱり全集の棚があった方が整理しやすいのかも。
一般書用の4段の中書架。
側板は木だが、棚板はスチール。これは高書架も同じで、木製で統一された児童コーナーとは少し違う。建設コストとの兼ね合いだろうか。森林面積が多くて木材を多用というコンセプトがあるのだから、一般書の家具のほうも頑張って欲しかった。
書架の側板に付けられたサイン。
一般コーナーのテーマカラーであるブルーのプラ板に黒の文字。「日本文学」などの文字はもう少し大きくても良さそう。
書架のサインにわざわざ「わからない時は職員にお尋ねください。」と書かなければならないのだろうか?。
現代小説などの書架には、このように緑のプラ板にシールワープロで著者名を打ったものを貼り付けて作ったサインで著者表示している。
文庫本用の書架。
構造は他の高書架と同じだが、棚板を増やして8段で使用。
東側の中央付近からカウンター方向を見たところ。左が児童コーナー、右手にAV資料の書架が見える。
奥に見えるカウンターの上部、天井の高さがおわかりいただけるだろう。2階部分の天井高と同じで、かなり高い。カウンターの上部はトップライトのように見えるが、平面図で見ると壁の向こうは会議室や読書室などの部屋があるはず。
上の写真の右側に見えるCD・ビデオ架がこれ。
CD・ビデオは一人2点まで1週間借りることができる。CD・ビデオ架はこの隣にもう1本あり、資料点数はかなり多い。
ちなみに、本は一人5冊まで2週間借りられるらしい。
中央にあるサービスカウンター。写真ではちょっとわかりにくいが、中央で2分割されていて、横も開いているので職員が閲覧室に出て行きやすいようになっている。
カウンター後方に見えるのは、CDやビデオなどAV資料の本体だと思われる。この後ろに事務室がある。
カウンターの横から少し離れて置かれていたコイン式のコピー機。この左手がカウンター、壁の裏側は対面朗読室。
検索用のOPAC端末。
ここに大人用が3台、児童コーナーの一角に子ども用が1台の計4台が設置されていた。システムはNEC製。
書架の横に置かれた木製のスツール。
児童コーナーでは座面がピンクの椅子だったが、こちらは無垢の木のスツールで大人の雰囲気。
一般用書架の東側に置かれた閲覧用のテーブルと椅子。4人掛けが4卓。
一番手前のテーブルは、中央上部に蛍光灯の照明があり、中央の衝立の右端にはコンセント2個と照明のスイッチが付いている。
残りの3つのテーブルは、このように一人分ずつアクリル製の半透明の板で仕切られている。
椅子の座面と背もたれは薄いブルー。一般書コーナーのテーマカラーはブルーらしい。
北側の高書架の前に置いてあったテーブル。
こちらは、中央の低い衝立で二人ずつに仕切られている。
その他
「シビックホール」と名づけられたスペース。パンフレットを見ると、「人と情報の新しい交流ステーション」を目指しているらしい。
正面には、150インチ相当の12面マルチビジョンが設置され、テレビ放送や「ツインプラザ」内の交流ホールのライブ映像も放映できる。
奥には飲み物の自動販売機もあり、飲食は自由。割と気楽な雰囲気のため、ここで参考書を広げる学生も多い。
「シビックホール」の入口に置かれた情報検索機。左右並んで2台ある。インターネットに接続され、吾妻郡内の観光情報、町村行政情報など、さまざまな情報を検索できるらしい。
問題は、今後の情報のメンテナンス。こういったサイトを作るところは多いが、情報がこまめに更新され、うまく使われているところはなかなか少ない。ぜひぜひ、頑張っていただきたい。
150点ほどの雑誌は、閲覧室ではなくて、こちらの「シビックホール」の方にある。
職員の目が届かない場所なので、紛失等が心配されるが、今のところ特に問題ないらしい。
新聞も雑誌架の横にこのとおり置かれている。
雑誌は、このとおり貸し出しができない。
最新号だけではなく、バックナンバーも駄目なようだが、理由は聞きそびれた。
壁際に置かれた雑誌架。
面展示が3段、下にバックナンバーを保管する3段の棚がある。
右端には、1か月分の新聞を製本したものが置かれた棚があるが、新聞専用の閲覧台は見当たらなかった。
再び閲覧室に戻って、東側窓際の中央にあるビデオブース。館内のビデオ資料の視聴をカウンターで申し込むと、ここで見ることができる。
円柱の周りにモニタが3台あり、それぞれに二人がけのソファーが設けられている。
こちらは、一人用のビデオブース。
「CD-ROMライブラリー」と表示された端末。
時間が無くて詳しくは見なかったが、サーバに収められたCD-ROMのデータを、ここに並んでいる3台の端末から見ることができるのではないかと思う。