その5
一般カウンターの左手、調査研究コーナー(と勝手に名付けたが)に置かれた新聞の収納架。
保存される新聞は、月毎にまとめて、この収納架の引き出しに収納される。上部は、新聞を広げて見ることができるように浅い傾斜がつけられている。
新聞収納架の近くに置かれた、新聞閲覧用のテーブルと椅子。
百科事典や図鑑など大形本を収納するための書架。
高さ120cmで、棚板の奥行きは22cm。3段4列だが、1列の幅は90cmある。
大形本収納架の横に置かれていたキャレルデスク。
四人掛けの机の中央に衝立が置かれて目隠しになると同時に、そこに蛍光灯のライトが付けられている。
インターネットにアクセス可能なパソコン。
利用には利用者カードが必要で、カウンターで申し込むようになっている。
写真ではわかりにくいが、CD-ROMドライブと電源スイッチが木製の躯体に組み込まれているので、特別に誂えられた本体のよう。
再度、西側の壁の前から、カウンター方向を見たところ。
この図書館の最大の特徴は、実は、この写真の左側にあると言っても過言ではないだろう。
一般閲覧室の北側、ゆるやかにカーブを描いたガラス張りの大きな窓が続いている。
そして、その前には、窓の外へ向けて、こうして座り心地の良さそうな椅子が並べられている。
上の写真と同じガラスの開放を、反対(東)側に回って撮影したところ。
利用者は、気に入った本を手にして、他人の視線を意識することなく、ゆっくりと本を読むことができるようになっている。
上の写真の右端に見える赤い手すりのドアからは、外へ出ることができるようになっていて、そこには広いウッドデッキがあり、窓際には椅子も並べられている。流石に12月でもあり外に出ている利用者は一人もいなかったが、季節の良い天気の日には、ゆっくりとくつろげそうなスペースである。
ウッドデッキの向こうには、赤煉瓦の明治からの歴史を伝える赤煉瓦の壁に囲まれた芝張りの庭が広がっている。
この北側のスペースの上部にもトップライトが設けられている。
これまで見てきたように、南と北、子ども室の東側と、トップライトをうまく使って館内に光を採り入れているのもこの図書館の特色である。
北側の窓に面して置かれた椅子。
これもデンマーク製。
その椅子に座って、窓の外を見ると、こんな景色が広がっている。
青空と赤い煉瓦と緑の芝生。この写真は冬なので少し寒々しいが、こんなところでゆっくりと読書を楽しむ贅沢もあって良いと思う。羨ましい。
その他にも、視聴覚コーナーの一角には、窓際にちょっとした机と椅子があったり、ソファーがさりげなく置かれていたり…
はたまた、こういう赤い肘掛け椅子が3脚並んでいたり、なんとなくアートしている空間がところどころにある感じ。
独立して置かれた椅子は、なるべく座った人の視線を外へ誘導し、それによってプライバシーを確保しようとしているのではないかと思える。
これは、北側の八角形をした柱の周囲に置かれたソファー。
どのような座り方でもできるが、柱を背にして座ると、4人の視線が交わることはない。近いようで離れた関係性を演出している。
なお、八角形は、子ども室のお話の部屋にも使われている。
ソファーが取り囲んでいるコンクリート柱の表面。
八角形の柱は、コンクリート打ちっ放しなのだが、よく見ると、木目模様が浮き出ていて、面白い意匠になっている。これは、型枠に幅3寸(約9cm)の杉板を使い、その表面の木目を転写したものである。館内の柱は、全てこのように木目がついている。
それなりにお金もかかる工法だし、さほど目立つ部分ではないけれども、こういう細やかな心遣いが嬉しい。
写真左が高書架の、写真右が中書架の書架番号と内容を示すサイン。基本的なデザインは、子ども室と共通。
サインは、目立ちすぎてもダメで、わかりにくいのもダメ。なかなかに難しい。
この図書館では、本の天の背に近い部分に蔵書印が押されている。市章の洲浜の紋をモチーフに図書館の略字(くにがまえの中にト)を入れた蔵書印で、方向としては天地が逆なのだが、こうやって書架に本が並んでいる状態を見ると、何かにそっくり。そう、これはミッキーマウス以外の何ものでもない。
利用申込書などを記入する記入台。
記入台の近くに置かれていた、返却本用のブックトラック。子ども室に置かれていたものとは違って、こちらは両面が利用できるタイプ。
ひととおり館内の見学も終わって、帰りの船の時間も近づいてきたので、最後に挨拶をしようとカウンターに行ったが、さすがに日曜の午後とあって利用者が多く混雑していたので、遠慮してろくに挨拶もしないまま図書館を後にした。
菅館長さんを始め職員の皆様、お世話になりました。
中庭の中央あたりから見上げると、左側の大正から続く煉瓦の壁と、右側の新しく作られた黄土色の新しい構造体が接合された向こうに、事務室から2階へ続く螺旋階段の円筒形の塔。
構図が面白いので、思わず写真を撮ってしまった。
出る手前で振り返って、中庭越しにサンルームの当たりを見る。
煉瓦壁の上に、主構造との間に斜めに渡されたトップライトが見える。
外に出ると、入口の周囲には、たくさんの自転車や原付が入口をふさんがんばかりに停められていた。
駐輪場、駐車場の扱いも、この図書館の課題だろう。駐輪場の件は冒頭に書いたが、駐車場も図書館周辺には無く、車で来た人は、遠く離れた駐車場か、近くのジャスコの駐車場に停めざるを得ない。駐車場の配置は、都市公園の計画の中で解決されることになっているらしいが、図書館の配置からすると、近くに駐車場を設けるのは厳しそう。
市役所の中で、公園と図書館の所管部署が違い、相互の連携がうまく取れなかったのだろうが、折角の良い図書館だけに、画竜点睛を欠く感じで、実に惜しい気がする。
この後、徒歩で洲本港へ向かい、洲本パールラインの高速艇で関西国際空港に渡りました。運賃は、片道2,500円、所要時間はおおよそ50分の快適な船旅でした。
1995年以来、久々の関空のターミナルビルをぶらつき、少々寂しくなったなと感じた後、宮崎行きのANK便に乗って、帰途につきました。
こうして、大阪市立中央図書館、洲本市立図書館と続いた関西図書館探訪の旅を終えました。巨大で、ごく初歩的なサービスから異文化サービスまで、図書館のサービスとしてはそれこそ何でもありの大阪市立中央、住民の図書館に対する想いが秀逸な建築に支えられた洲本市立、図書館の利用者とそこで働く者にとって適正な規模というのは何なのかを感じさせる旅でしたが、どちらの館も、宮崎から見ると実に羨ましい存在です。そのどちらもが、宮崎にとって未だ持ち得ぬものだからでしょうか。