今夜は、雲ひとつない秋晴れの空に、十六夜の月が昇る。その月の光の下、木城えほんの郷で開かれた「月夜の音楽会」に出かけてきた。
10周年の記念コンサートとなる今年の出演は、古澤良治郎(パーカッション)、平野公崇(サックス)、栗林秀明(琴)という昨年と同じ3人に、ヴァイオリンの太田惠資が加わるカルテット。
1時間ほど車を走らせて、16時半頃にえほんの郷に到着。受付で黒木郁朝村長の木版画による記念チケットと交換し、まずは、チケットを送ってきたスタッフのMさんに、チケット代と売れ残ったチケットを渡し、絵本館の原画展を見学した後で、森の本屋さんのカレーセット(850円)で少し早めの夕食。
18時の開場となったので、車に積んである折りたたみ椅子を持って会場の水のステージに行くと、私からチケットを買ってくれたOさんがステージ正面中央の好位置に先着していたので、その隣に椅子をセットし、雑談しながら開演を待つ。
昼間は結構暑かったので、半袖Tシャツ1枚で十分だったのだが、陽が落ちると流石に山の中は冷え始め、上から長袖Tシャツを着ても少々寒い。周囲の人々は、すっかり晩秋の装い。
宵の明星が沈み、19時になって、月が山際から姿を見せ始めた頃に、栗林の琴ソロ「海へ」で開演。続いて平野と栗林のデュオ「ミレニアム」と、秋の夜空に琴とサックスのハーモニーが溶け込んでいく。
それから30人ほどの子ども達がステージに登場し、栗林のリードでステージ前と左右に置かれた孟宗竹を叩いてリズムを刻むパフォーマンス。
子ども達が退場すると、古澤のリードによる「オールドマン・レゲエ」。立ち待ちの月が客席の左手にその美しい全容を見せ、「いい月夜!」との古澤のヴォーカルが客席を和ませる。
平野による出演者紹介に続いて、早くも第一部の最後は、「インパルス・オブ・リード・フェイズ」。太田の青いヴァイオリンが、電子的な音を奏でて印象的。
15分の休憩を挟んで、第二部は栗林の琴ソロ「竹」で始まり、栗林と太田のデュオ「詩曲一番」へと続く。太田はヴァイオリンをアコースティックなものに持ち替え、琴との和洋のハーモニーが心地よい。
続く「アルトサクソフォンとピアノのためのソナタ 第3楽章」は、少々アヴァンギャルドな匂いがするが、古澤は「平野さんはちゃんと譜面を吹いていた」と解説していた。
そして最後は、太田のセレクトによる「シディ・マンスール」というチュニジアの音楽。そう言いながら、太田が歌い始めたのはホーミー。これが意外にも(と言っては失礼だが)上手い。アフリカにもホーミーがあるのかと思ったが、これは太田のパフォーマンスだったようで、その後すぐに4人のセッションへ。それまでとは違うアフリカのリズムで盛り上がったところで、第二部も終了。
アンコールは昨年と同じ「星に願いを」。今年はヴァイオリンが加わって、昨年とはまた異なる趣。気がつけば、あっという間に開演から2時間を超えており、時間は21時半になろうとしていた。
時間の経過が早く感じるのは、それだけ充実した音楽会だったということだろう。今年は、本当に天候に恵まれ、ロケーションとミュージシャンのパフォーマンスの相乗効果を堪能することができた。また来年が楽しみである。