徒然日記 2006大阪の夏は熱かった編

プロローグ

 娘が、大阪で開かれる高校総体に出場することになった。出場を決めるまでには、長い長いお話があるのだが、娘のストーリーであるので、ここでは省略。
 これが最初で最後のインターハイであり、大阪は私が大学時代を過ごした場所でもあるので、応援かたがた出かけることにした。

 今回の大阪行きには、カーフェリーを利用することにした。お盆前のこの時期、飛行機はとてつもなく高いし、JRの乗り継ぎも安くはない割に結構大変。フェリーなら、夕方乗って、寝てる間に着くので楽だし、何しろ料金が安い。台風のことが頭をよぎったが、万一の時はJRを乗り継いで帰れば帰れなくはないと判断。
 早速、職場に8月7日(月)~9日(水)の3日間で夏休みの申請を出し、宮崎カーフェリーに予約の電話を入れて、2等寝台を確保。料金は、1,200円の燃料油価格変動調整金を入れて、片道11,700円である。
 それから、大学時代の同窓生で作るメーリングリストに、大阪行きのスケジュールを投稿。このメーリングリスト、私が借りているサーバで運用し、私が管理人をしているので、この投稿が暗に管理人迎撃オフの誘いになっている。それで早速、有志が幹事役を名乗り出て、オフ会の調整も進み出した。
 宿は、妻と連絡を取りながら、楽天トラベルで予約。あちこち探したが、結局は大会会場に一番近い、近鉄八尾駅前のホテルオークス八尾にした。

1日目(2006年8月5日 土)

宮崎港へ
 早めに夕食を済ませ、父の車で宮崎港のフェリーターミナルへ。18時過ぎに着いた時には、ターミナルは既に人でいっぱい。早速、乗船名簿に必要事項を記入し、列に並んで窓口へ。
 ここで役立ったのが、運転免許更新の時に取得したSDカード。これを窓口に出すと、何も言わずとも運賃が2割引になって、9,700円をカードで支払う。SDカードの手数料が700円だったはずだから、これだけで十二分に元を取ったことになる。

SDカードと乗船券

おおさかエキスプレス 支払いを終えて乗船券を貰うと、乗船時間になっていて、そのまま歩いて停泊中のフェリーへ。大阪航路のフェリーは、ほぼ同型の「みやざきエキスプレス」と「おおさかエキスプレス」の2隻が交互に走っているが、今日のフェリーは、総トン数11,933トンの「おおさかエキスプレス」(写真)である。船首側に回って写真を撮ってから、乗船口の階段を上って船内へ。

乗船
 船内に入り、エスカレーターで昇ったところが船の3階になり、売店や食堂、2等の客室、大型トラックのドライバー区画などがある。そこから更に階段を上がると、特等、1等、2等寝台の客室のあるフロアーで、船首側から船尾側にかけて、特等、1等、2等寝台の順に並んでいる。
 2等寝台は、1部屋に16個の寝台が上下2段で4列ずつ両サイドに並んでいる。私の寝台はB17の8で、つまりは17号室の8番目の下側寝台ということになる。早速、荷物を置き短パンに着替えて、船内の探索へ。
 ほぼ満席のようで、船内には人が多い。団体で乗っているのは、高校総体に出場する宮崎第一高校の空手部のようだ。夏休みなので、子ども連れもたくさん乗っている。
 そのうち出航の時間になり、夕暮れの宮崎港を後にする。夕食は済ませてきたので、バイキング形式の食堂(夕食1,300円)はパスし、ちょっと空いてきた浴室へ。
 風呂上がりにビールでも飲もうかと思って自販機を探したが、アサヒのスーパードライか、発泡酒しかなかったので断念。ペットボトルのお茶(180円)だけを買って寝台に戻る。戻った時には、携帯電話は既に圏外になっていた。
 枕元の蛍光灯を点けて、持参した有川浩著 「図書館戦争」 (メディアワークス) を読み始める。そのうちに眠くなってきたので、洗面所で歯磨きをして、用意されていたシーツの上から化繊の薄い毛布をかけて就寝。エンジンの振動が少し響くが、揺れはさほど感じられない。

2日目(2006年8月6日 日)

大阪到着
 ちょっと枕も高いし、ベッドも固めなので、なかなか朝まで熟睡という訳にはいかず、夜中に2度ほど目が覚めたが、一応、ちゃんと眠れた。
 朝6時くらいの船内放送で本格的に目覚める。洗面所で顔を洗って、下船の準備。食堂の朝食は500円だったが、混んでいたのと、下船してから食べればいいやと思ってパス。
 ほぼ定刻の7時過ぎに大阪南港かもめ埠頭に接岸。遠くに見える高いビルは、WTCだろうか。もう10年以上前に子ども達を連れて海遊館周辺に遊びに行ったことを思い出しながらカメラを向ける。

かもめフェリーターミナル遠くに見えるWTCコスモタワー

天保山へ
 下船して、ボーディングブリッジを渡って、かもめフェリーターミナルへ。ターミナルのすぐ外にあるバス停から、南港フェリーターミナル行きのバスに乗る。後ろ乗り後払いで、料金は200円。
 南港フェリーターミナルで降りて、ポートライナー(大阪市営南港ポートタウン線)のフェリーターミナル駅で1,000円のスルッとKANSAIカードを購入し、コスモスクエア駅へ向かう。コスモスクエア駅で大阪市営地下鉄の中央線に乗り換え、大阪港駅へ。
 何故、こんなややこしいことをしているかと言うと、浦安から来る妻と合流するのは夕方になる予定なので、それまで半日ほど時間を潰さねばならず、あまり遠くにも行けないので、近場の天保山でなんとかすることにしたのだった。
 大阪港駅で降りて、とりあえず海遊館の方に向けて歩く。海遊館まで行ってはみたが、まだ朝も早くてマーケットプレイスも開いてないので、再び駅の方へ戻って、マクドナルドでバリューセット(400円)の朝食。有川浩著 「図書館戦争」 (メディアワークス) を読みながら時間を潰す。

天保山マーケットプレイス
図書館戦争 ようやく9時半になって、マーケットプレイスがオープンする時間になったので、マクドナルドを出てマーケットプレイスへ歩く。
 マーケットプレイスの外にはテントが並んで、子ども向けのイベントをやっているが、内部はまだ閑散としており、開いているのはファーストフードのコーナーだけ。ショップのオープンは10時ではないか。これでは時間が潰せない。仕方がないので、海に面した通路に置かれたベンチに座って、読書の続き。
 10時を過ぎて、館内のショップが開き始めたので見て歩くが、たいして興味を引かれるものは無い。単体での集客力に欠けると思われるので、集客力のある海遊館があるから成立する商業施設なのかもしれない。
 そのうち、ちょっと小腹の空いた感じもしてきたので、一角にテーマパーク風に作られている「なにわ食いしんぼ横丁」を覗き、「会津屋」というたこ焼き屋で元祖たこ焼きなるものを買い、元のベンチに戻って食べる。生地に味が付いているので、上にはソースも鰹節も青海苔もかけない、本当にシンプルなたこ焼きである。中はトロトロであるが、欲を言えば、外側はもう少しパリッとした感じが欲しいところ。でも、それなりに美味い。
 そのまま読書を続け、ついに「図書館戦争」読了。面白い。図書館員は必読の書だが、図書館員でなくてもエンターテイメントとして十分に楽しめるクオリティを持っている。今年お薦めの1冊である。

鶴橋風月
 読書も終わって、渇いた喉をビールで潤そうと、マーケットプレイス3階にある、道頓堀地ビールの飲める「鶴橋風月」というお好み焼屋へ。さっきもたこ焼きを食べたのだが、大阪へ来たら粉物は外せない。
 道頓堀地ビール(500円)と牛すじネギ焼きをモダンでオーダー(1,090円)。先に来たビールを飲みながら待っていると、店員さんが具材と生地の入った小さなボールを持ってきて、目の前でしっかり混ぜて鉄板の上へ。ネギは生地に混ぜ込むか、最後に乗せるか聞かれたので、一瞬迷って最後に乗せる方を選択。ここでは、最初から最後まで店員さんが焼くので、客は手出しをしてはいけないらしい。

道頓堀地ビール生地を鉄板の上に広げる

 大丈夫かな?、焦げてるんじゃないか?、と思うくらいの時間が経って、店員さんが焼きそばの麺を持って、お好み焼きを返しに来る。この時点で、まだ焼けていない面に鰹節をたっぷりと乗せるのが意外。最後じゃないんだ~。それから、麺を鉄板の空いたところで炒めて、その上に片側が焼けた牛すじネギ焼きをひっくり返し、再び待ちの時間になる。
 またまた、大丈夫かな~?、と思うくらいの時間が経った頃、店員さんがソースとマヨネーズを片手にやってきて、仕上げにかかる。
 まずはマヨネーズを塗り、その上からソースを塗り、最後にネギをたっぷりかけたら出来上がり。旨そ~!。

片面が焼き上がりネギを乗せて完成

 テーブルには皿と割り箸も用意されているが、大阪ではコテを使って食べるのが流儀なので、作法どおりに鉄板から直接コテで口元に運んで食べた。
 やはり、本場のお好み焼きは美味しい。ネギは半分くらい生地に混ぜ込んでも良かったかな。

新大阪から八尾へ
 お好み焼きを食べ終わった頃、妻から、「のぞみに乗ったので、14時19分に新大阪に到着予定。」とのメールが入る。
 妻は大阪には土地勘が無いし、こっちも暇なので、新大阪まで迎えに行くことにし、マーケットプレイスを後にした。
 大阪港駅から大阪市営地下鉄中央線に乗り、本町駅で御堂筋線に乗り換えて新大阪駅へ。構内を探索して、妻との邂逅場所を新幹線の中央出口前に決め、時間までロッテリアでマンゴーシェイクを飲みながら時間を潰す。
 定刻どおりに到着した妻と中央出口で落ち合い、事前に買っておいた1,000円分のスルッとKANSAIカードを妻に渡し、地下鉄、近鉄奈良線、近鉄大阪線と乗り継いで、近鉄八尾駅へ。
 近鉄大阪線に乗るのは、実に久しぶり。20数年前の大学時代に、司書資格取得のための夏季スクーリングに近畿大学に通って以来だと思う。夏の暑い盛りに、池田市石橋から長瀬まで2週間ほど通った日が懐かしい。
 そんな感傷に浸るのも束の間、列車は近鉄八尾駅に到着。さっそくホテルに向かおうとしたら、ろくに昼食も食べていない妻の体調が悪くなり、しばし駅前の西武百貨店で休憩。

ホテルオークス八尾
 しばらく休憩して、妻の体調も回復したので、すぐ近くにあるホテルオークス八尾に向かう。
 ホテルらしからぬ入り口で、明確な看板も出ていないのでちょっと戸惑うが、エレベーターで3階に上がって、フロントで無事にチェックイン。
 今回は2泊の予定で、1泊目は楽天トラベルで、2泊目は知人を通して電話で予約していたので、2日目は部屋が変わることになっていたのだが、フロントで事情を話すと同じ部屋に連泊できるように調整して貰えた。これで、荷物を動かさなくて済むので大助かりである。
 チェックインした5階のツインの部屋は、なかなか広くてベッドも大きめで、ソファーまで置いてある。アメニティ類は普通のビジネスホテルと遜色なく、必要にして十分。ベッドサイドにドライヤーと小さなたこ足式の物干しが用意されているところはなかなか良い。更に、冷蔵庫には300mlのお茶のペットボトルが2本入っていて、無料で利用できるようになっていたのは、暑い季節にチェックインした者にとって高評価。土日・祝日限定のサービスらしい。
 小規模の家族経営的なホテルのように見受けられ、八尾という立地から、通常はビジネス客主体だと思われるが、上記の他に全館Free Spot対応で無線LANが無料で使えたり、コイン式の洗濯機が置かれていたりと、顧客満足度を上げる努力は評価できるホテルである。

同窓会@ごだいご 難波店
 娘の開会式を見に行くという妻を送り出し、私は、大学時代の友人との同窓会が行われる難波へ向かう。
 同窓会のメーリングリスト(ML)で打診したところ、早速、2名の女性陣が幹事役に名乗り出て、セッティングしてくれた。私がMLの管理人で、自費でサーバの運用をしているので、管理人があちこちに出張するときは、現地の参加者は管理人をもてなすこと、というのが管理を引き受ける上でのルールになっており、それを忠実に守ってくれている訳だ。ありがたい話である。
 難波に着いて、プリントアウトした地図を片手に店を探すが、地上を描く地図と地下街の自分の位置がマッチせず、しばらく地下街をさまよい歩く。いったん地上に出て自分の位置を確認し、再度地下街に戻って、ようやく目指す店の前にたどり着くことができた。こういうこともあろうかと、早めに難波に到着しておいて良かった。
 開会式を見た妻が、1時間ほど遅れて参加することになっているため、妻を迎えに行くための最短ルートを確認すべく、一端、近鉄難波駅に戻り、「電車の後方に乗って、近鉄難波駅では東口から出るように。」とのメールを妻の携帯に送っておいた。
 そこから再び店に戻り、定刻の18時半前に入店。昨年の11月にも娘の試合が西宮で行われた際に、神戸で同窓会を開いてもらい、その時のメンバーもいるのだが、卒業以来初めて会う顔もあり、非常に懐かしい。乾杯の後、大学時代の思い出話や、他の同級生達の近況などの話で盛り上がる。
 しばらくして、妻から乗換駅である鶴橋を出たとのメールが入ったので、近鉄難波駅まで迎えに行き、店に戻って初見のメンバーに紹介して、また乾杯。
 娘の調子のことや苦労話なども交えながら、料理と酒が進み、お開きの時間に。夫婦共々、2時間余りの楽しい時間を過ごさせてもらったのに、手出しは無し。皆に納得してもらっているルールとはいえ、妻の分までも負担して貰って申し訳ない。皆に感謝、感謝。

「ごだいご」にて1「ごだいご」にて2

ホテルに戻る
 遠くは神戸まで各地に帰る級友達と別れ、近鉄線を乗り継いでホテルに帰る。途中、鶴橋で乗り換えるべき所をうっかりと乗り過ごし、布施で乗り換える羽目になったのはご愛敬。
 部屋に戻って、入浴を済ませたりしていたら、いつのまにか12時を過ぎていた。翌日の朝が早いので、さっさと就寝。部屋のエアコンは温度調整ができないタイプで、冷房が効きすぎていたので、エアコンを切って寝たが、朝まで快適に眠れた。

3日目(2006年8月7日 月)

八尾市立総合体育館へ
 朝、6時起きで体育館に行く準備。早く行って並ばないと駄目だという妻と、娘の出番に間に合えば、少々遅くなっても良いのではという私と、意見の食い違いは、当然に娘の試合に帯同キャリアの長い妻の勝ち。ホテルのロビーでパンとジュース、コーヒーという簡単な朝食を済ませ、駅前からタクシーに乗って会場である八尾市立総合体育館(ウイング)へ。道すがらタクシーの運転手さんが、「今日は朝から八尾のタクシーがフル回転や~」と話していた。
 体育館に着いたのは7時。既に50人以上が列を作っている。どこかの高校の父兄だろうか、お揃いのTシャツを着た一団も見える。朝から快晴で暑い日だったが、幸い建物の陰になるところに並ぶことができたのは幸いだった。8時30分に開場。マットの正面で見たいと思うのが人情、自然と足が速まる。女子用マットの正面やや右寄りの前から3列目に何とか席を確保。続々と席が埋まって行く。
 9時半に競技開始。選手がマットに登場するたびに、あちこちから応援の声がかかる。
 最近はどの大会もそうだが、この大会も許可証が無いと撮影禁止で、しかも撮影エリアが後方の一部に限られているので、デジカメを持って行ってはみたものの、場内の撮影はなし。演技については、全員の演技を収めた公式DVD(2,500円)が発売されるので、それを購入すれば良いのだが、一刻も早く演技チェックをしたい娘のために、娘の指定した選手の演技を妻がビデオで手持ち撮影。
 その間、私は公式プログラムに、出場者の得点を記入。これも、大会本部から公式集計が印刷物として配布されるのだが、一刻も早く結果を知りたいのが人情ってやつで、結構、ペンを片手に書き込んでいる観戦者も多い。プログラムにもわざわざ点数を書く欄が作ってあるし。
 しかし、この記録を書き写すのが結構大変。電光掲示板には、D(難度)、A(芸術性)、E(実施)の3項目が表示された後に、減点と合計点が表示されるのだが、3項目の点数が表示されている時間が短く、しかも次の出場者の演技中だったりするので、左目で演技を見ながら右目で掲示板が変わるのを見ているという離れ業を使わないと書き漏らしてしまう。プログラムの記入欄は合計点しか無いが、D、A、E、P(減点)、合計と丁寧に全部書こうとしたのが、苦労を自ら背負い込むことになった。

いよいよ
 さてさて、時間は進んで、ついに娘の入った第12班の3人が登場。マット横の練習フロアでアップする様子を、所属クラブのコーチも真っ直ぐに見つめている。6月に見た時より、ジャンプも思い切って飛べているような気がする。
 最初はロープの演技。娘がマットに入ると、同じ千葉県から来た団体の選手達が応援の声をかけてくれる。
 大きなミスは無く終盤にさしかかり、最後の決めの所で投げ上げたロープを足で受け止めるところが、微妙にずれてキャッチできていないように見えた。妻は、「難度の実施が正確でないみたい。」と、少々渋い表情。それでも、6月に見た演技よりは、ずいぶんと大きさが出ているように感じられた。
 演技を終えた娘は、次のボールの演技のために、すぐに着替えに戻って行っただが、その表情を見ていると、今年のこれまでの試合のような暗さは見えない。満足した表情には見えないが、とりあえず安心。
 次の選手の演技中に表示された得点は12.550と、親の願いほどには伸びず、この時点で3位。トップとの差は0.125。まあ、これがこの時点での実力なのだから仕方がない。

そして奇跡は…
 12班の最後が娘のボールの演技。これまで、割と点を稼いでいる種目だと思うが、場外など大きなミスもあり得る種目だけに、見ているこちらの方が妙に緊張する。
 演技が終わった瞬間に、小さくガッツポーズ。こんなことは珍しいのだが、久しぶりに納得できる演技ができた満足感の表れだろう。晴れ晴れとした表情で、応援席に手を振って退場していく娘を見ていて、思わず涙が出そうになった。ミスの無い娘の演技を間近に見たのは久々だった。
 祈るような思いで得点を待っていると、電光掲示板に3つの要素に各4人ずつの審判の得点が表示される。なかなか良い点が出ているのがわかる。次の瞬間に表示された合計得点は、13.600。それまでの選手達の中での最高点。やった~!、思わず隣に座った妻と握手。この点が効いて、その時点で総合1位に躍り出た。
 娘は、最後の選手が登場するまで1位をキープ。ここで最後に登場したのが、昨年度のインターハイ優勝者で、このところ絶好調の庄司選手。大トリで登場したのにも関わらず、緊張のかけらも見せずに難しい演技をミスも無く楽々とこなし、ロープが13.425、ボールは14.200と、ともに最高点をたたき出して圧勝。娘は準優勝という結果に終わった。
 ひょっとすると、庄司選手が大きなミスでもして、娘の優勝もあり得るのではないかと、かすかな望みも抱いてはみたが、流石に実力のある選手は違う。もちろん、不十分な状態で優勝などしようものなら、他の選手にも失礼なのだが。
 妻が言うには、「他の有力選手と難度の申告点が1点以上開きがあるのに、準優勝できたのは上出来。」とのこと。せめて5位以内には入って欲しい、というのが当初の望みだったので準優勝はもちろん嬉しいが、それよりも、昨年の夏以降、故障の影響で満足な練習ができず、実力を十分に発揮できていなかった娘が、復調の兆しを見せてくれたことが何よりも嬉しい。娘にとっても、収穫のあった大会となったことだろう。

2006インターハイ女子個人結果

ホテルまで歩く
 本日の競技日程が終わり、娘達と食事に行くことに。しかし、難関は、混雑する体育館からどのように移動するかである。タクシー会社に電話するも、配車できる車がいないと言われ、バス停には長蛇の列。結局、妻が地元八尾市に住む知人のSさんに携帯で依頼し、体育館から駅まで送ってもらうことになった。
 しかし、やってきたSさんの車は5人乗り。5人乗りということは、運転手以外に乗れるのは4人だから、娘と娘の世話のために帯同してくれている昔のチームメイトのHさん、学校の顧問のT先生、妻で満席に。仕方がないので、私だけ一人八尾駅前まで歩く。走るには暑いので、早足で歩く歩く。
 車組の一行は、先に我々の泊まるホテルで荷物の片づけをしているとの電話が携帯に入ったので、少し遅れてホテルに戻る。ここまで約20分くらいだったろうか。
 部屋でしばし休憩し、大阪市内のホテルに戻る娘達に合わせて、食事はホテル近くの難波界隈で取ることにして、娘達一行とともに電車に乗って難波駅へ向かう。

珍竹林 なんば店
 難波に着き、ホテルの部屋に荷物を置いた娘達と一緒に食事に。道頓堀界隈をあてもなく歩き、疲れてお腹の空いた娘の機嫌が悪くなりかけた頃に、たまたま見つけた「珍竹林」という居酒屋に入る。
 豆腐や湯葉を使った料理が多く、ヘルシー指向な感じがなかなか良い。大人はビールで、子どもは冷たい柚子茶で乾杯のあと、それそれが好みのメニューをオーダー。運ばれてきた料理は、居酒屋メニューにしてはなかなか美味。
 普段は娘の食事のカロリー制限にうるさい妻も、この時ばかりは大目に見ている。何しろ、娘の涙のない試合は久しぶりなのだから、こんな時に野暮なことは言いっこなしってことだ。
 試合の周辺に転がるいろんな話しで盛り上がり、皆満足した所でお開きに。会計は、5人で13,250円。安上がりで良かった。
 ホテルに帰る娘達と店の前で別れ、妻と二人、電車で八尾のホテルに帰ったが、またもや途中の鶴橋を乗り過ごし、布施で乗り換えるという羽目になってしまった。

携帯の充電が…
 ホテルに戻り、風呂に入って寝る準備をしていると、妻が携帯の充電器が無いと言い出す。家を出る時にコンセントから抜いて用意したのだと言うが、準備してバッグに入れ忘れるのはよくある話。
 一応、フロントに充電できないか聞いてみるが、できないとの返事。確か駅前にauショップがあったはずだと思うが、この時間では既に閉まっているし、明日の朝も出発が早いので、ショップでの急速充電も無理だろう。「コンビニかどこかで電池パックを買うしかないんじゃない。」と言うと、「なるべく無駄な金は使いたくない。」との返事。そうは言ってもねえ。
 とりあえず、明日充電できなかった場合のために、娘や知人、自宅などの必要箇所には私の携帯から連絡を入れて、万が一に備える。
 そんなこんなの騒動があって、いざ寝ようと思ったら、隣の部屋の話し声がやけに響く。年配の男女4~5名が話している感じだが、こんなにはっきり聞こえるとは、壁が薄くて防音性が低いのか。
 我慢しようかとも思ったが、既に12時過ぎていて、こちらも明日の朝はまた早起きしなければならないので、枕元の壁を拳で一発叩いて隣の部屋に注意喚起。ようやく静かになったので、灯りを消しておやすみ。 

4日目(2006年8月8日 火)

台風が接近?!
 朝起きて、テレビを点けるとニュースをやっており、天気予報で台風7号が接近中であることを知る。今日の夕方、フェリーで帰る予定なのに大丈夫か?。
 とりあえず、フェリーが到着する時間を待って、かもめターミナルの宮崎カーフェリーに電話。到着便はほぼ予定どおりの入港だが、当日の出発便は10時30分以降でないと出航するかどうかわからないとのこと。出航しなければ、JRを乗り継いで帰るしかないのだが、なんとか出航して欲しい。
 ここで悩んでも仕方がないので、10時半過ぎに電話で確認した上で決めることにして、帰り支度をして、前日同様に3階のロビーで朝食を食べ、妻が自宅へ送る荷物の宅配をフロントに頼み、ホテルをチェックアウト。
 妻の携帯の充電ができるかどうか、とりあえず駅に行ってみたら、auショップは10時からのオープン。試合は9時半からなので、やはり無理。駅構内の売店に行ってみると、やはりありました充電用の電池パック。600円と意外に安かったので、妻も納得してお買い上げ。これで携帯問題は無事に解決。早速、駅前からタクシーに乗って体育館へ。

体育館は超満員
 昨日の個人とは違い、団体は参加者が多いので、必然的に応援する関係者の人数も多くなる。このため、マットの正面に位置する座席は、出場チーム1チームにつき15人の入場枠が設けられ、午前と午後で完全入れ替え制となっていた。運営する側もなかなか大変だ。
 正面に座るのは無理そうだったので、我々夫婦は裏正面の中央、女子マットと男子マットの間の前から3番目に席を確保。少し遅れて、娘とHさんが到着し、我々の前列の選手席に座って観戦。
 試合が始まる頃には、正面は完全に満席に。裏正面も徐々に埋まって満席になり、立ち見も出るような状態になっていた。

男子団体は面白い
 手具を使って5人で行う女子団体と違い、男子団体は手具を使わずに徒手だけで行い、人数も6人がマットに入る。体操の床運動をグループで行うようなイメージだが、人数が多い分、ダイナミックな構成で迫力ある演技が展開される。
 男子のマットに最初に登場したのが岡山の井原精研高校。3段トーテムから始まり、同調性の高い、徒手能力の高さに裏打ちされた迫力のある演技で会場を沸かせる。得点は、19.000といういきなりの高得点。この演技後に会場に到着した娘から、優勝候補の一つと聞いて、納得。
 我が郷土の小林工業高校も、落ち着いたなかなかの演技を見せ、最後の大技も決まって、得点は18.800。この時点で3位に食い込んだ。
 最後に登場したのが、優勝候補のもう一方の雄、青森山田高校。それぞれの選手の基礎能力が高く、同調性もバッチリ。他校にはない大技を盛り込んだ構成で、最初に登場した井原精研高校に勝るとも劣らない演技のように見えた。
 演技が終わって選手が退場した後、会場は電光掲示板に注目している。出た、得点は18.900。会場がどよめく。よく見ると、P0.10で、この減点が無ければ同点優勝だったはず。ラインオーバーでもあったのだろうか。青森山田には残念な結果だが、演技は決して負けていなかった。
 しかしこの日、こうした上位校の演技を差し置いて最も会場を沸かせたのは、鹿児島実業高校なのである。キューティーハニーや宇宙戦艦大和、キャッツアイなど馴染みのアニメソングをつないだ曲に合わせて、コミカルな振り付けの演技を展開。コミカルな動きの下には、しっかりした能力と技術があって、パフォーマンスとしては秀逸。競技ではなくて、ショーを見ているような感じ。得点は18.425で9位と入賞はならなかったが、この演技は一見の価値あり。国体の種目からも外されて、知名度という点では非常に苦しい男子新体操だが、見て貰えて盛大な拍手を貰えることで、選手達も新体操をやっていて良かったと思えるだろうし、それがまた上達への糧となる。これからも鹿児島実業の演技から目が離せない。

2006インターハイ男子団体結果

一方、女子団体は
 男子団体と交互に行われる女子団体の方は、フープ(輪)3×クラブ(棍棒)2という手具構成の演技。昨年、娘が世界選手権の団体に出場した時と同じ手具構成である。
 男子の出場が23校なのに対し、女子は地元大阪の2校を入れて全都道府県から48校が出場しているので、男子と比べて実力のばらつきが大きいように思われた。当然、得点の開きも大きい。新体操の競技人口はまだまだ少ないから、学校という単位で5人以上を集めて演技を作っていくのには、いろいろと苦労もあるのだろう。
 娘が出場しない試合は、得点もメモしなくていいし、純粋に、気楽に見ることができる。今回、主に応援しているのは、娘のジュニア時代のチームメイトの出場する、昭和学院(千葉)と藤村女子(東京)。他にも、九州のチームには、娘が小学生時代に争った選手達の名前があり、当時を懐かしく思い出す。それぞれに、これまで至る苦労があり、応援する家族があり、青春の思い出となるこの日を迎えたのだから、みんな頑張って欲しいと思う。
 序盤に登場した東京の藤村女子高校は、最近では珍しく全員が短い髪で、オールタイツのレオタードというちょっと古いスタイルながら、同調性の高いシャープな演技を披露して13.200。この点数が、優勝を目指す高校の目標となった。
 優勝候補の一角と目されていた佐賀女子高校は、中盤に登場して期待されたものの、いまいち同調せずに精彩を欠いた演技になってしまって、13.025。
 このまま藤村が走るかと思われた頃に、地元の大声援を受けて、兵庫の宝塚北高校が登場。昨年の世界選手権でナショナル団体がオリジナル申請した3本のフープを組み合わせて作った輪を、選手が次々とくぐっていく大技を更にアレンジした技を見せて、得点は13.650とトップに立つ。聞けば、ナショナル団体の演技構成を担当した東京女子体育大学の五明先生による構成だとか。どうりで同じ技が入れられる訳だ。
 やはり地元勢の優勝かと思われたが、そこに登場したのが大分の別府鶴見丘高校。ここも優勝候補の一角に挙げられていたが、前評判に違わぬ素晴らしい演技を見せ、13.775の高得点を出してトップに。
 娘が正面に座る応援団席まで応援の加勢に行った千葉の昭和学院高校は、なかなか良い演技を披露したものの12.925で、惜しくも5位という結果に終わった。

2006インターハイ女子団体結果

大阪南港へ
 全ての演技が終了したのが16時。娘は閉会式に出なければならないで、すぐには帰れない。
 顧問のT先生と、娘を手伝ってくれたHさんに挨拶をして、私だけ先に会場を後にした。既に体育館の外はタクシー待ちの列ができていて、道路も渋滞しているr。幸い、雨の心配は無さそうなので、前日と同様に近鉄八尾駅まで歩く。
 近鉄八尾駅から近鉄大阪線、大阪市営千日前線、大阪市営四つ橋線、大阪市営南港ポートタウン線と乗り継いで、17時30分頃にフェリーターミナル駅に到着。ここから、かもめフェリーターミナルまではバスで移動だが、出航まではまだ時間に余裕がある。
 この時点での問題はその日の夕食で、選択肢としては、(1)フェリーの中のレストランで食べる、(2)ターミナルで弁当か何かを買い込んで乗船後に食べる、(3)ターミナルの中にある食堂で食べる、という3つがあったが、台風の影響で大きく揺れることも予想されたので、船内で食べるという選択肢を捨て、長い歩道橋を通って、南港フェリーターミナルへ向かう。
 食堂の手前の売店で、職場用に大阪名物おこしを土産に買い、食堂の券売機で生ビール(500円)とカツとじ定食(1,000円)をチケットを購入。
 カツとじ定食には、もう少し緑黄色野菜が欲しいところ。これならカツ丼にしても良かったのではないかと思われるが、カツ丼をメニューに入れなかったのは、定食という構成にして客単価を少しでも上げるためだろうか。そんなことを考えつつ、テレビで流れる高校野球を見ながら、少し寂しい夕食を終了。

生ビールカツとじ定食

乗船
 18時11分発のバスに乗り、かもめふ頭へ移動。かもめターミナルで乗船名簿に記入し、往路と同様に SDカードとともに窓口へ。宮崎到着が1時間ほど遅れるかも知れないとの説明を受け、この時期はSDカードだと1割引だと言われ、繁忙期にはまだ数日早いのではなかったかと少し釈然としないが、10,700円をカードで支払い。乗船券を受け取って、ボーディングブリッジを通って乗船。船は、往路と同じ「おおさかエキスプレス」だった。船の中から、翌朝に宮崎港まで迎えに来てくれることになっている父親へ、入港が1時間ほど遅れるらしいと電話。
男性浴室の入り口 今度の寝台はB4の7で、4号室の上側の寝台。出入りするには下側の方が勝手が良いのだが、選べないので仕方がない。寝台に荷物を置いて、短パンに着替え、タオルと着替えを持って風呂に入りに行く。「ゆ」と書かれた暖簾のところには、揺れが予想されるので21時には終了との張り紙が出ている。
 男性用の風呂は、4階(Aデッキ)の左舷側にある。3つある浴槽(そのうち1つは水風呂)の上には大きな窓があり、展望風呂になっている。シャワー付きの洗い場は10個ほどあろうか。詰めれば4人は入れそうなサウナもあり、シャンプー、ボディーソープも常備されているので、タオル一つで快適な入浴ができる。この日も、サウナに入った後に、ゆっくりと水風呂で身体を冷やしてから上がった。
 風呂から上がって、カメラを片手に船内を散策。そのうちに出航となり、船は岸壁を離れて行く。夕暮れのWTCコスモタワーなどを写真に収め、3階(Bデッキ)のロビーに置いてある大型テレビでNHKスペシャル「プラネットアース」を見ていたが、沖に出て電波の入りが悪くなってきたみたいで、見るのが辛くなってきたので、全部を見るのをあきらめて部屋に戻る。

夕暮れのWTCコスモタワーおおさかエキスプレスの煙突

 部屋に戻ると、大半のベッドはカーテンが閉じられている。ベッドの幅は1m程度。高さは、173cmの私が、あぐらをかいて座れる程度。カーテンを閉めると、視界が遮られて完全に個室状態だが、閉所が苦手な人にはお奨めできない。枕元の蛍光灯には、コンセントが1個ついており、ここから携帯に充電。
 ベッドの上でしばらく文庫本を読んでいたが、大きく揺れ始める前に寝た方が得策だと考えて、洗面所で歯を磨き、9時過ぎには蛍光灯を消して就寝。往路よりもエンジンの振動は気にならず、いつの間にか眠りに落ちていた。

2等寝台の部屋2等寝台の部屋
2等寝台足側2等寝台頭側

19:30 大阪南港発 宮崎カーフェリー

5日目(2006年8月9日 水)

宮崎港入港
 目覚めると、時間は既に6時半。結局、台風の影響をほとんど感じることはなかった。
 洗面所で顔を洗い、Bデッキに降りて、レストランで500円の洋食セットを食べる。朝は洋食派なのだ。ロールパン2個に、おかずのウインナーと野菜をはさんでミニドッグにして食べたが、まあ、そこそこの味。コーヒーはお代わり自由なので、2杯いただいた。
 朝食後の船内放送で、宮崎港入港は定刻どおりと聞いたので、携帯から自宅に電話して、父にその旨を伝える。
 寝台に戻り、歯を磨いた後、荷物をまとめて下船の準備。すぐに降りられるように準備ができたら、カメラを片手に後方の展望デッキへ。
 デッキに出ると、宮崎港はすぐ近く。遠くにシーガイアが見える。

朝のシーガイア宮崎港フェリーターミナル

「かいえん」登場
 もうすぐ接岸という頃、船尾右舷側にタグボートの「かいえん」が登場。宮崎港では、この船は出船の左舷付けになるので、港内で180度回頭しなければならない。このフェリーにはサイドスラスタと呼ばれる横方向に移動する際に使うスクリューが付いているので、タグの支援なしに旋回することも可能らしいのだが、宮崎港ではタグの支援を受けることになっている。
 フェリーが定位置に付くと、「かいえん」が船の右舷後方を押し、フェリーはスラスタを回して回頭していく。180度回ったところで接岸。下船の準備にかかる。
 徒歩の乗客は、車より先に下船となる。Bデッキの下船口からエスカレータを降りて、更に船外にかけられたタラップを降りて地上へ。

「かいえん」登場船尾を押して旋回

 接岸した船の前の駐車場で、迎えに来てくれていた父と落ち合い、車で自宅に戻った。これで、4泊5日の真夏の旅はお終い。今年の大阪は、高校生達の熱気で熱かった!



エピローグ

 自宅に戻り、インターネット上に高校総体の情報が流れていないかチェック。フリー・ライターのシーナさんという方が開設している「新体操応援隊」というサイトで、シーナさん本人が8月7日付けの日記に娘のことを書いているのを発見。珍しく褒めてあって、嬉しくなる。早速、娘の携帯にメールしたら、もう読んだとの返事。やはり嬉しかったみたい。

 翌日からは仕事。職場で娘のことを応援していただいている皆さんに、メールで高校総体の結果を報告。
 また次試合まで、怪我をしないように祈る日が続く。

Translate »