日刊工業新聞で今日から3回に渡って「図書館改革」と題する連載が始まった。
小見出しに続く「図書館が変わろうとしている。インターネットの普及や出版物の電子化が進み、図書館で得られる情報の価値は急速に下がった。図書館とそこで働く職員は情報技術の真価で淘汰されてしまうのだろうか。」という煽りの一文は、過去の英知の膨大な蓄積を持つ図書館を過小評価していると思うが、図書館が成長する有機体である以上、時代に合わせて形を変えていくことは当然のことなので、工業を専門とする新聞が、これからの図書館像をどのように描くのは興味深いところ。
初回の今日は、指定管理者制度を導入してビジネス支援に力を入れる千代田区立千代田図書館の紹介と、国立国会図書館長の長尾真氏のインタビュー記事が主体。
国立国会図書館は、収蔵資料3,700万点のうち950万点の電子化を進めており、既に210万点は終了。著作権の切れている30万点は既にインターネットで公開済みとのこと。
また、1月にスタートした『国立国会図書館サーチ』は6,900万件の文献情報が検索可能で、将来的には全文検索システムにしたいと言う。
その時、利用者自身が探せる情報が広がるので、職員には専門性が重要になるとする。
興味深いのは、それに続いて中央と地方の図書館の役割分担に触れた部分。
「地域は情報と住民が出会う場所になる。人と情報や、人と人が意見を交換しながらアイディアを出していく。地域の課題を市民が議論し、そこに司書が文献や資料を提供して裏付けを与える。議論の進行や参加者の理解を助けるファシリテーションと呼ばれる役割も重要になるだろう。大学図書館で取り組みが進んでおり、科学雑誌の電子化で空いたスペースにフリーディスカッションの空間を設け、教員や学生に議論させ教育の場として使っている。公共図書館にも広がると良い。」
図書館はこれまでも出会いの場であったと思うが、ファシリテーションという概念には至っていなかったことは確か。
それにしても、司書の重要性は不変ということだね。地方ではなかなか理解されないけど。