普段通りの生活だと観たい映画もなかなか観られないので、シネマイクスピアリのレイトショーに昨夜思い切って行ってきた。
チケット売場で「J・エドガー」にするか「ドラゴン・タトゥーの女」にするか迷ったが、公開が早かったのと、このところ外れのないクリント・イーストウッド監督作品ということで前者に決定。
21時45分上映開始で終了は24時15分とかなり遅くなるが、自転車で15分で帰れる距離なので、さして苦にはならない。
さて、映画の話だ。レオナルド・デカプリオ演じる主人公は、ジョン・エドガー・フーヴァー。
FBI(連邦捜査局)の初代長官として、1924年5月10日の任命から1972年に亡くなるまで長官職を務め、就任当時のカルビン・クーリッジからリチャード・ニクソンまで8代の大統領に仕えた。
いや、「仕えた」という表現は正しくないな。FBIを大統領すら手出しのできない組織に育て上げ、その座に「君臨した」と言うべきだろう。
そのためにフーヴァーは、政治家達の私生活を盗聴するなどしてプライヴァシーを暴き、極秘ファイルに収めて自分の手元に置き、FBIの権限を肥大化させる切り札として使っていたのだ。
しかしその一方で、司法省の弱小組織に過ぎなかった捜査局に、職員の規律と忠誠心をもたらすとともに、銃の携行許可や逮捕権を持たせるなど権限を拡大し、指紋の一元管理や科学的な捜査手法を導入するなど、現代の警察捜査に繋がる組織を確立している。
フーヴァーと言えば、有名人や政財界人に対する諜報活動や恐喝、政治的迫害を行うなど、利己的で時として違法な権力行使を行ったことで負の評価の方が大きいが、この映画では、その背景に「国を守る」という彼の強い信念(それが行き過ぎて妄執と受け取られるのかもしれないが)があったことを伝えていて、そこにクリント・イーストウッドらしい眼差しの優しさが出ているような気がする。
デカプリオを始め、ナオミ・ワッツなど脇を固める役者陣も熱演だが、映画としてはどちらかというと地味だし、フーヴァーの伝記なんてそもそも日本人にはあまり馴染みがない素材なので、アメリカ国内ではそこそこヒットしても、日本では興行的には難しいかなと思う。
個人的には☆☆☆1/2で、誰にでもお薦めっていう映画ではない。