図書館改革2

 日刊工業新聞に昨日から3回連載の「図書館改革」シリーズの第2回、本日は大学図書館がテーマ。
 「学術情報の電子化が進み研究者が論文を探しに図書館を訪れることは減った。大学の図書館はただの自習室に成り下がるのだろうか。」という疑問に、大学側の回答はどうなのか?。

 千葉大学に「3月に完工する新図書館では、学生や研究者が議論できるようフリースペースを設け、図書館を参加型学習の『アクティブラーニング』の場とする。学生の学習アシスタントを育て、学内の研究成果を発信する機関リポジトリーや電子教材、学内システムの開発まで図書館が担おうとしている。」とのこと。

 「機関リポジトリ」って新しい言葉だけど、要は、その研究機関内で生産される知的資源の電子アーカイブシステムのことだ。
 アーカイブ自体は、図書館がこれまでにやろうとしてきた方向性と何ら変わらない。違うのは、紙媒体か電子媒体かということだが、電子媒体になることによって検索性は圧倒的に高まるし、物理的な制約からもある程度解放される利点がある。

 方向性は従来と変わらないが、問題はそれができる人材らしい。改革をしようにも、
「サービス開発の必要性がわからない人はいないが、やりたい人もいない」
とか
「職員間の意識の差は大きい」
とか
「図書館の目指すところを実現するには、現在いる人をすべて入れ替えないと不可能」
という声があることを記事は伝えている。
 まあ、大学図書館に限った話しではないが。

 続いて、大学院統合新領域学府にライブラリーサイエンス専攻という新たな専攻分野を作り、新しい図書館員の育成と図書館改革に力を入れる九州大学の有川節夫総長(図書館長でもある)へのインタビュー。

 改革の方向性としては、

『図書館に学習や教育、研究を支援する機能を設けた。優れた知識インフラは大学の競争力になる。図書館は情報リテラシーの出前授業やレファレンスで支援する。人文社会系の研究では研究者がエネルギーの8割を情報収集に使う。これを図書館が肩代わりする。過去の資料を集め、誰もがアクセスしやすいように整理する』

とあるが、大学図書館のありかたとして、部外者から見てとりたてて目新しいとも思えない。

 図書館という器については、

『場としては学生が、とりあえず集まれる図書館にしたかった。本やパソコンを囲んで自由に語らせる空間を設けた。友人と何かやるため、会うために図書館を使う雰囲気ができてきた。話している学生も1人で勉強している学生も、周囲からの緊張感があり集中できるようだ。』

って、やはり日本の学校教育の現場での図書館のポジションてのは、かなり遅れているのね、ってことを改めて実感させる内容。

ライブラリーサイエンス専攻については、

『図書館職員がその専攻の講師にも学生にもなる。大学医学部と大学病院の関係と似ており、学ぶ場と実践の場の位置づけである。現場で試行錯誤しながら、図書館職員が論文を書いている。他大学の図書館職員も九大で勉強できるように、人事交流制度などを作れないか模索している。専攻を立ち上げて、企業から情報の整理や管理の専門家がほしいと多くの声をもらう。すでにナレッジマネジメントやデータマイニングの技術などのノウハウはあり、後は人材を育てるだけだ。優秀な図書館職員が企業に引き抜かれるような状況をつくらないといけない』

とあるが、いまいちよく理解できない。
 「司書」って言葉はひとつも使われてないけど、情報の整理や管理の専門家=「司書」だったのではないのかね。
 そして、それが優秀かどうかは、情報の整理や管理だけではなくて、それらを使う「人」のことがどれだけわかっているかにかかっていると思うのだが。

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