日刊工業新聞に連載の「図書館改革」シリーズの第3回、最後のテーマは「ファシリテーション」。
「電子化や全文検索によって誰もが簡単に大量の情報にアクセスできるようになると、図書館は情報を集める場から使う場へと変わっていく。」
その時に図書館が果たすべき役割として何が求められるのか、という指摘であり、その答えの片方が既に技術的にはある程度確立している「データマイニング」や「テキストマイニング」といった情報ツールであり、もう片方が場として人と人をつなぐ「ファシリテーション」で、その役割を担う「ファシリテーター」という訳だ。
図書館の世界ではあまり聞き慣れない「ファシリテーション」という言葉だが、wikiると
とある。
ふ~ん、これ得意かもしれない。
例えば、何か新しいプロジェクトを話し合うようなミーティングの時に、バックボーンや知識がそれぞれに異なる参加者の間で、相互の理解を進めていくための役割を務めたことはこれまでも何度かあったし。
深くはないがそれなりに幅広い知識の中で、これがわかればこの人は理解しやすくなるだろうなとか、こっちの専門家のこの言葉の意味や真意は伝わってなさそうだなってのは大体わかるものなので、補足したり違う言葉に置き換えたりって作業はこれまでたくさんやってきた。「通訳」みたいな作業だと思ってきたけど、英語にはそういう概念の言葉がちゃんと用意されていた訳だね。
ただ、それは極めてパーソナリティに依存する作業なので、図書館が組織としてどこまでファシリテートできるかってのは、なかなか難しいところだと思う。
それができている図書館の例として紹介されているのが、東京港区の六本木ライブラリー。六本木ヒルズの中にある有料の会員制図書館だ。
会費が9,450円/月と決して安くはないにもかかわらず、3,200人もの会員を獲得しているのは、六本木ヒルズという場の力だと思うが、
という事情もあるらしい。
これは、図書館づくりというよりも街づくりの視点から参考になる。
六本木ライブラリーが提供しているサービスは、蔵書(資料)や場の提供にとどまらず、セミナーや交流会の開催(年間50回以上!)、グループ活動の支援だったりする。
「人間も優れた情報資源と位置づけ」、そういう具合に人と人とを結びつけることで、より高次の活動に繋げていく取り組みを行っているということ。
そういう取り組みを行う場は、何も図書館に限らなくて良い。ただ、継続して活動を行うことができる物理的な場所と、活動を企画し運営し導く「ファシリテーター」が必要である。
地域の商店街に、そうした場と人がいれば良いのではないかと、最近の宮崎市・一番街の取り組みを思い起こしながら考えてみたり。
という同ライブラリーの小林麻美ディレクターの言葉に、これからの図書館運営に関する一筋の光を見る思いがする。