今回の通勤電車内読書は、「闇の記憶」の続編のウィリアム・K.クルーガー著「希望の記憶」(講談社文庫)。
前作で積み残された謎解きがすぐに進む期待は、見事に裏切られる。主人公のコークは、前作からの続きで逃走中に撃たれ、ミシガン州ボディンに住むいとこで獣医のジュエルの元へ逃げ込むが、足を怪我して動けなくなっている。
本作で語られるのは、ボディンで起こる少女の殺害事件を発端とした連続殺人と、ジュエルと一人息子のレン、彼らを取り巻く人々の物語である。
コークは、なかなか自ら動けないが、それをしっかりサポートするのが、前作で登場した心強い助っ人のダイナ・ウィルナー。美人で聡明で強い、格好良くも魅力的な女性なのだ。彼女を主人公に、スピンアウト作品が書けそうなくらい。
クルーガーの作品は、ハードボイルド的であり、十二分に面白いミステリであるが、何よりも大自然の中で生きる人物を描くのが上手い。人を見る目の温かさが根底にあるのだと思う。
男の生き方について、家族について、いちいち共感できる部分が多く、繰り返し読むのが苦にならない。
前作から持ち越された問題は、本作の最終盤であっけないくらいに解決されてしまうので、ちょっと物足りないのだが、明日への希望を繋ぐ終わり方として、それもまた良しとしよう。☆☆☆☆1/2。