今回の通勤電車内読書も、昨日に引き続きウィリアム・K.クルーガーで「二度死んだ少女」(講談社文庫)。
「闇の記憶」の一つ前、シリーズ4作目に当たり、ここでは主人公のコークは元保安官という位置づけ。
大晦日のパーティーを一人で抜け出した17歳の少女シャーロットが行方不明になり、コークは捜索隊の一員としてブリザードの迫る雪の森をスノーモービルで走るうち、吹雪に巻き込まれてしまう。
視界の端に灰色の影を見たと思った瞬間、転倒して遭難しそうになるが、その不思議な影に導かれてスノーモービルを見つけ、無事に生還する。
やがてシャーロットは遺体で発見され、犯人として疑われるのは、コークの恩人で同じオブジワ族の血を引くサムの甥、ソレム。
コークの妻ジョーは、逮捕・起訴されたソレムの弁護を引き受けることになり、コークは弁護側の調査員として事件の真相を探るために、関係者に聞き込みを始めるが、意外な事実が明らかになっていく。
謎解きと平行してソレムの身に起きる奇蹟と、それにあやかろうとする人びとの喧噪。
事件の真犯人を辿る道は二転三転し、コークは最後に意外な人物へと導かれて行く。
見事なプロットに加え、大自然の中での生活、小さなコミュニティの中で生きる人びとのそれぞれの生き様を温かな目で描きつつ、信仰とは何かと問いかける。さすがに2005年のアンソニー賞最優秀長編に選ばれただけのことはある。☆☆☆☆☆。
巻末の解説で、昨年5月に鬼籍に入った俳優の児玉清氏が、
「この物語の主人公コークに僕はぞっこん惚れこんでいる。彼の「男らしら」に、彼の人生への「考え方」に、また見事な大人振り」に僕はぞっこんなのだ。」
と書いているが、私も全くの同感。