『ラバーネッカー』

 このブログも、昨年の7月以来、かなり更新サボってて、完全に放置プレイ状態になっている。
 オウンドメディアを頑張らないっていうのは、ブランディング的にいかんな

 書くことが無いのではなくて、ブログに書かなくなった理由は二つあって、一つには些細なことは専らFacebookに書くようになっているのが大きい。
 4年前くらいはメインストリームだったTwitterにも殆ど書かなくなって、開くことも少なくなっている。mixiなんて開きもしていない。

 二つ目の理由は、昨年の5月頃から、「宮崎てげてげ通信」の運営メンバーに加わって、フリーの(この場合の“フリー”とは、対価を全く得ずにという意味だが)ライターとして記事を書くようになっていてるから。
 基本的に週1本記事を書くというノルマなんだけど、これが結構大変で、取材に行って写真撮って、推敲しながら文章書くのにかなり時間がかかっている。
 読んでもらえる記事書くのってのは、消耗する仕事でもある。

 そういう訳で、ブログに書くだけの気力が充実しなくて、気になりながらもこれまでなかなか書けなかった。

 しかし、1999年から途切れながらもこれまで続けてきたブログだから、これからも本当に書けなくなるまでは続けて行こうと思う。

 ということで、最近読んだベリンダ・バウアー著『ラバーネッカー』(小学館文庫)のご紹介。

 主人公のパトリック・フォートは、イギリス・南ウエールズのブレコンに住む18歳。8歳の時に交通事故で父親を亡くし、母親と二人暮らし。
 そして、パトリックにはアスペルガー症候群という障害があり、細部や日課への異常なこだわりと他人とのコミュニケーションが苦手という特性がある。
 しかし、全く会話ができないということではなく、回りの空気を読めないという程度だ。そしてそのこだわりは、父親の死をきっかけに生物学や動物学に向けられて、その分野では優秀な成績を修めるほどになっている。

 そのパトリックが、障害者枠でカーディフ大学に入学することになり、生物学部の解剖実習室で解剖学を学ぶことになった。
 パトリック達が実習室で解剖するのは、同大学のの大学病院で亡くなった患者。

 ある日、パトリックのグループに割り当てられた解剖体は享年47歳の白人男性で「十九番」と呼ばれている。少しずつ解剖を進めながら、その死因を探るのがパトリック達に与えられた課題だ。
 他のグループが解剖体の死因を次々と突き止めていくのに対し、パトリック達の「十九番」の死因はなかなか明らかにならない。
 そして彼は、「十九番」の咽頭部からピーナッツを見つけるが、偶然「十九番」の死因が心不全だったことを知り、解剖結果との矛盾から死因に疑念を抱くことになる。

 人の死の探求にとりつかれているパトリックは、「十九番」の死の真相を暴くべく危険な探求を開始し、大学病院で行われていて驚くべき所業を明らかにし、最終的に父の死の真相にもたどり着いていく。

 作者のベリンダ・バウアーは、デビュー作の『ブラックランズ』で2010年に英国推理作家協会の最優秀長編作品賞であるゴールド・ダガー賞を受賞している。
 本作でも2013年に同賞にノミネートされているが(惜しくも受賞は逃して図書館賞を受賞)、主人公が自閉症スペクトラム障害を抱えた障害者であるという意外性、重層的に語られる物語が、最終的に一つに収斂していく構成の巧みさなど、その実力を遺憾なく発揮している。☆☆☆☆

 なお、自閉症スペクトラム障害については、巻末の香山リカ氏による解説で詳しく紹介されている。
 私の息子も同じ障害を抱えているが、パトリックの障害は、同じ自閉症スペクトラム障害の中でもかなり軽い。
 自閉症スペクトラム障害による障害の軽重はかなり幅広く、人によって様々であり、誰でもパトリックのようにうまく克服できる訳ではないが、こういう作品を通して、その障害に対する理解が少しでも深まればと思う。

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