鎮魂歌は歌わない

 今回の通勤電車内読書は、ロノ・ウェイウェイオール著「鎮魂歌は歌わない」(文春文庫)

 端的に言うと、娘を惨殺された主人公ワイリーの復讐箪、正統派のハードボイルドだ。
 妻子と別れ、ポートランドでポーカーで日銭を稼ぐ気ままな一人暮らしを送るワイリー。金がなくなればシアトルまで遠征し、ヤクの売人から金を巻き上げて暮らすような生活だ。
 そんなワイリーが長く会わないでいる一人娘のリジーが、モーテルの一室でのどを切り裂かれて惨殺された。
 娘を殺した奴は誰なのか、なぜ娘は死ななければならなかったのか、その謎を追う過程で交錯するワイリーの旧友レオンとサム。レオンはリジーの恋人だったことがあり、闇社会と通じるビジネスを生業としている。サムは刑事で、リジーの事件を捜査している。
 ワイリーがレオンと組んでサムや取り巻く女達の助けを得ながら事件を追ううちに出会うのは、殺人犯を保護する組織の影。
 孤独な生活を送るワイリーの悲しみを所々に滲ませながら、ワイリーとレオンが次第に真相に迫り、復讐を果たしていく様が、クールな筆致で淡々と描かれる。
 これがハワイ人の血を引く著者ウェイウェイオールのデビュー作と言うから驚き。かなり完成度が高い。☆☆☆☆。

 本書の刊行が2008年7月、巻末の「編集部・N」による解説に寄れば、本書の次作”Wiley”s Shufle”も文藝春秋より刊行予定とあるが、未だ出ていないところを見ると、次作が出るほどには商業的には成功しなかったのかもしれない。2008年時点で、このシリーズ全3作となっているらしく、面白いと思うのだが、残念。

 バリー・アイスラーのジョン・レイン・シリーズも4作目の「雨の掟」以降がまだ訳出されていないし、続きを待ちわびているシリーズものは結構あるのだが、この出版不況と呼ばれる時代の中、やっぱペーパーバック買って読まないと駄目なのかね?。
 原著でも無理すれば読めないこともないとは思うのだが、読み進める上では、日本語にした時のリズム感とかも大事なので、原著で読むのと翻訳で読むのはちょっと違うんだよね。
 とりあえず、図書館で借りて読んでる読者としては、気長に待つしかないかな。

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