『TOKYTO YEAR ZERO』

 この日記の更新も前回から久しく間隔が開いてしまったが、何も書くことが無かったわけではなくて、昨年末からAndroidアプリ開発の勉強に手を染めてみたり、直接は関係ないんだけど職場がらみのこんなことのソースを書いていたりと、それなりに忙しくはしていたのだ。

 しかし、なんとなく気分が乗らないというか、ちょこちょことfacebookに小出しにしてたりすると、きっちりブログとして文章にまとめるためにPCに向き合うのが億劫にもなったりして、ここまで滞ってしまった次第。

 このままぐうたらしている訳にもいかないので、気を取り直して向き合うことにして、2013年最初にご紹介するのは、デイヴィッド・ピース著『TOKYO YEAR ZERO』(文春文庫)

 太平洋戦争末期から敗戦直後の東京において、言葉巧みに若い女性に食糧の提供や就職口の斡旋を持ちかけ、山林に誘い出したうえで強姦して殺害するという手口で行われた実在の連続事件「小平事件」を縦糸にして、当時の東京の風俗や警察組織の実態を横糸に織り込んだミステリ。

 しつこいほどに何度も繰り返される主人公・三波警部補の心象風景のリフレインは、読み進める上では邪魔にも思えるのだが、それが一種独特のリズム感を作り出していて、この時代のざわざわとした混沌や不穏さ、埃っぽく薄汚れた感じなどを演出するのに一定の効果を出しているのは否めない。

 著者のデイヴィッド・ピースは、1967年イングランド北部のヨークシャー生まれで、現在は東京在住。
 本作は著者が構想する戦後混乱期の東京を舞台とした「東京三部作」の第一作で、帝銀事件を題材にした第二作『占領都市 TOKYO YEAR ZERO II』は2009年に刊行済み(未文庫化)。現在は、下山事件を題材にした第三作を執筆中という。
 実在の事件がモチーフとはいえ、日本人ではない著者が、ここまで占領下の日本のリアリティを伝えられる裏には、膨大な史料の丁寧な読み込みがあるのだろうなと驚嘆させられる。その参考文献リストも巻末に掲載されていて、その幅と量が結構凄い。

 一癖ある文章だけに、とっつきは悪いかもしれないが、2007年の『このミス!』3位という順位も納得の作品である。☆☆☆☆。

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