『ポーカー・レッスン』

 通勤電車に乗らなくなったら、とたん読書量が落ちたので、久しぶりの読書記録だ。
 今回は、浦安往復の機内で読んだ、ジェフリー・ディーヴァー著『ポーカー・レッスン』(文春文庫)『クリスマス・プレゼント』に続く、ディーヴァーの短編集である。
 ちなみに、本作の原題は”More Twisted”、『クリスマス・プレゼント』は”Twisted”。ディーヴァーの真骨頂は、どんでん返しで読者の意表をついて楽しませてくれることなのだが、短編でもひねりの利いたどんでん返しの連続で、その名手ぶりは変わらない。

 本作には16の短編が収められていて、おなじみリンカーン・ライムが主人公の「ロカールの原理」も含まれている。70ページ余りの短編ながら、パートナーのアメリア、介護士のトム、刑事のロン・セリトーなどいつものメンバーも登場し、しっかりとライム・シリーズの雰囲気を持たせつつ、ひねりの効いた落としどころを見せてくれる。流石という他はない。
 ディーヴァーは、勢いで書くのではなく、緻密な計算に基づいてプロットを作り、ディテールを描き込む作業をしているのだろうな。だから、ディテールを削ぎ落としていっても、きちんとその世界が成立するのだと思う。

 残りの15編も、いずれ劣らぬ名品ばかりで、数十ページの間に騙される快感を味わさせてくれるし、短編なのでさくさく読み進められるしで、旅のお供とするにふさわしい作品集である。
 買って読んでも決して損しないと思う。☆☆☆☆1/2。

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