『ダーティ・サリー』

 今回の通勤電車内読書は、マイケル・サイモン著「ダーティ・サリー」(文春文庫)

 主人公は、兄のように敬愛していた相棒ジョーイを事故で亡くしたオースティン警察殺人課の部長刑事ダン・レリス。
 相棒を亡くして自棄になり、いけすかない同僚の刑事を殴って停職処分を喰らい、ようやく復職した彼が、呼ばれて行った事故現場の近くで胴体だけの他殺体を発見する。
 やがて、市の有力者達に他殺体の手足の一部が送られてきて事件が広がりを持ち始め、ひとつの死が新たな死を産み、その繋がりを追う中で、次第に明らかになる警察内部の腐敗と権力者の巨悪。そして、それに対抗する孤立無援の刑事の徒手空拳の戦い。
 ジェイムズ・エルロイの「ブラック・ダリア」を思わせるような、ダークな警察小説であるが、L.A.を舞台とするエルロイとは異なり、テキサス州オースティンの泥臭く荒々しい風土、レリスの破壊衝動を産み出す自身の生い立ちが、独自の世界を作り出している。

 本書では、ジョーイの妻レイチェルとの関係にしろ、最終的な決着にしろ、すっきりしないままで終わっているので、なんとなく中途半端なのだが、あとがきを読むと、著者のマイケル・サイモンは、ダン・レリスを主人公としてシリーズ化しているようで、2006年時点で全3巻が出ているようだ。ただ、日本では現時点で残りが未訳なのが残念。
 中途半端なもやもやが残るので、本書だけの評価は☆☆☆。でも、面白い。

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