今回の通勤電車内読書は、リチャード・ホーク著「デビルを探せ」(ハヤカワ・ミステリ文庫)。
ニューヨークの感謝祭のパレードで男が銃を乱射し、その場に居合わせた私立探偵のフリッツ・マローンが犯人を追い詰める場面から物語が始まる。
しかしそれは、百万ドルを要求して市長を脅迫する新たな犯人の最初のデモンストレーションに過ぎなかったことが判明。市長と警察本部長からの要請を受けたマローンは、その真犯人を探すことになるのだが、犯人に繋がる糸口をほぐしたどっていくうちに、次第に明らかになる組織の腐敗や人物の堕落。
そして、最後に待ち受けるどんでん返しの真相と、ほろ苦くも小粋なエンディング。
決してマッチョでも無敵のタフガイでもなく、可愛い恋人もいて、酒に溺れたりもしていないけど、軽妙な皮肉とフットワークの良さが身上で、生い立ちにちょっとした影を感じさせる探偵の、新たなハードボイルド・ストーリー。☆☆☆☆。
菊地よしみによる訳者あとがきを読むと、このフリッツ・マローンを主人公にした物語は、2007年7月の時点で Gold Day in Hell という第二作が上梓されているようだが、現時点では、本邦未訳となっている。まだまだマローンの周辺には恋人マーゴとの関係、失踪した父親、何かしらトラブルを抱えているような義兄など、話が膨らむ要素がたくさんあるので続きを読みたいのだが、残念。