『007 白紙委任状』

 今回の通勤電車内読書は、ジェフリー・ディーヴァー著「007 白紙委任状」(文藝春秋)

 いや~、007だよ、ジェームズ・ボンド!。生みの親のイアン・フレミングによる創元推理文庫の007シリーズは全部持ってる。映画も殆ど劇場で観てる。スタイリッシュなスパイ小説として、このシリーズは私の中では今なお最高峰の地位を保っている。
 しかし、原作者のイアン・フレミングが亡くなったのは1964年。1965年に刊行された『007号/黄金の銃をもつ男』(The Man with the Golden Gun)が作品としては最後で、それ以降、映画のノベライズは刊行されるものの、007が主人公の新しい作品は読めないものと思っていた。
 そこへ、イアン・フレミング財団が、ジェフリー・ディーヴァーに007の執筆を依頼したとの情報。ディーヴァーと言えば、リンカーン・ライム・シリーズでその名を馳せた、アメリカ・ミステリ界の大御所。同シリーズは、『ボーン・コレクター』以降、全て読んでいる。
 イギリス人の物語を、アメリカのミステリ作家がどう料理するのか、興味をそそられるなんてものではない。

 それで、本作である。言うまでもないが、期待を裏切らない出来。映画も含めて本家の脇役や構造をしっかり継承しつつ、現代の世界情勢を織り込んで、セルビア、ロンドン、ケープタウンへとボンドを躍動させている。お約束の美女との駆け引きも健在。
 最初は、今度の敵はディーヴァーらしい造型ではあるものの意外に小物だなと思っていたが、そこはディーヴァー抜かりはない。しっかりと黒幕を用意している。
 終盤にかけてのどんでん返しの連続は、まさにディーヴァー・ワールド。映画化も意識してプロット作ったんじゃないだろうかとも思える。

 映画化については、まだ具体的に決まっていないみたいだけど、ダニエル・クレイグが健在なうちに実現して欲しいな。

 ディーヴァーが引き続き007シリーズを執筆するのかはわからないが、できればこの一作で終わって欲しくない。スクリーンの上だけではなくて、活字でもボンドの活躍を楽しみたいしね。☆☆☆☆1/2。

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