『12番目のカード』

『12番目のカード(上)』書影

 都城(高崎)でも新たに口蹄疫の発生が疑われる事例が報じられ、重苦しい雰囲気の中ではあるが、ブログの更新はできる時にしておかないと。どうかこれ以上拡大することなく封じ込めて欲しいと願いつつキーボードに向かっている。

 今回の通勤電車内読書は、ジェフリー・ディーヴァー著「12番目のカード(上)」 「12番目のカード(下)」(いずれも文春文庫)。
 いつものように浦安市立図書館中央館の文庫棚を漁っていて見つけた。ディーヴァーのリンカーン・ライムシリーズは、そのデビュー作である「ボーン・コレクター」(デンゼル・ワシントンとアンジェリーナ・ジョリーの主演で映画化もされた)以降欠かさず読んでいて、書架でもディーヴァーの所は注意して見ているはずなのだが、シリーズ6作目になる本作は今回初めてみつけた。2009年11月刊行だけど、いつ書架に出たのだろう?。予約者の間を回っていて、棚に出たのは最近じゃないのかな?。

『12番目のカード(下)』
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 プロットの複雑さと語りの上手さでは定評のあるディーヴァーだが、今回も期待を裏切らない。
本作は、元死刑執行人の殺し屋の物語であり、身寄りのない少女がハーレムで逞しく生き延びる物語であり、140年前の解放奴隷が関与した陰謀の物語であり、アメリカの公民権運動と憲法修正第14条をめぐる物語であり、父子の関係修復の物語であったりもする。

 ライム、サックスの主役2人のほか、介護人のトム、ニューヨーク市警のロン・セリトー、メル・クーパー、ローランド・ベル、FBIのフレッド・デルレイなどシリーズにおなじみのメンバーも勢揃いし、それぞれに自分の役回りときちんと演じている。前作「魔術師(イリュージョニスト)」に登場したカーラまで端役で出てくるのだから驚きだ。

 人物造型が見事で、一旦終わったと思ったプロットがいつの間にか息を吹き返してつながっていくなど、上下2巻の長さを感じさせず、一気呵成に読ませる力を持っているのは、さすがにディーヴァーである。おまけにアメリカ近代史の一端まで勉強できるとあれば、読まざるを得ないではないか。お薦めである☆☆☆☆☆。

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