『硝子の暗殺者』

 今回の通勤電車内読書は、J・ゴアズ著「硝子の暗殺者」(扶桑社ミステリー)。ゴアズは、昨年12月の「路上の事件 target=”_blank”」以来。

 本書は、第一部>コーウィン<と第二部>ソーン<に分かれており、ハルデン(ハル)・コーウィンとブレンダン・ソーンの二人が主人公の物語と言って良い。

 年齢こそ開きがあるものの、生まれ育ちや経歴がよく似ていて、かたやベトナム戦争時にスナイパーとして活躍した後、傭兵に転じるが、留守中に妻を飲酒運転の車にはねられて失い、アメリカ北部の森で隠遁していたコーウィンと、陸軍のレンジャー隊員としてパナマに駐屯後、CIAのスナイパーとして活躍していたが、やはり留守中に妻と娘を飲酒運転の車に奪われ、アフリカのケニアでサファリの監視員として暮らしていたソーン。

 本来出会うことのなかったはずのこの二人が、大統領に就任したばかりのグスタヴ・ウォールバーグの暗殺を狙う者とその阻止のために追う者として交錯することになる。

 狙う者がコーウィンで、追う者がソーン、のはずだったが、ソーンの成功を喜ばず、彼の行動を監視して手柄を横取りしようとするFBI特別捜査官の存在が、ソーンに疑念を植え付け、コーウィンの過去の足跡を辿らせ、逆にソーンが追われる身になる。

 追いつ追われつのスリリングな展開と、最後に明らかになる大統領の卑劣な過去、そしてカタルシス。

 「路上の事件」では評価低かったけど、本作でちょっと作家の力量を見直した。ハードボイルド・ミステリとして、そこそこ良くできている。☆☆☆1/2。

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