今回の通勤電車内読書は、ウィリアム・K. クルーガー著「狼の震える夜」(講談社文庫)。「凍りつく心臓」に続く、コーク・オコナー・シリーズの第二作。
前作で妻のジョーとよりを戻したかと思ったコークだが、まだ一人でサム・ウィンター・ムーンから受け継いだ“サムの店”で暮らしている。
しかし、煙草をやめてランニングを始め、前作で守れなかったモリーと交わした約束を果たそうと努力しているし、子ども達が“サムの店”の商売を手伝うなど、少しずつではあるが家族との関係は好転しつつあるようだ。
そんなコークの元に、行方不明になった人気歌手のシャイローを捜して欲しいと、彼女の父親だというウィリー・レイが現れる。
シャイローは、コークが幼少の時に姉のように慕っていた、同じオブジワ族の血を引くマレイ・グラントの娘でもあった。
シャイローの捜索を引き受けたコークだったが、彼の前には同じくシャイローを捜そうとするFBI捜査官を名乗る男達やギャングの息子など、怪しげな人物が次々と現れる。
そして、シャイローの行方を唯一知っていると思われるルイス・ツー・ナイヴズを強引な手段で手伝わせようとするFBI捜査官達と共に、彼女を捜して厳しい自然の待ち受ける湖沼地帯へカヌーで分け入ることになる。
そこから、追う者と追われる者、狩る者と狩られる者の壮絶な闘いが幕を開ける。
シャイローとコークを待ち受けるのは、冷酷で抜け目のない暗殺者。そして、その暗殺者を雇い入れた意外な黒幕の正体が明らかにされていく。
複数の父と子の関係を縦糸に、複雑でよく練られたプロット、登場人物達のちょっとした心の動きから読みとれるその生き様の深さ、厳しい大自然の描写が折り重なって、読み応えのある物語に仕上がっている。☆☆☆☆☆。