ちょっと前になるが、2月25日(土)付け日本経済新聞の文化面に、「図書館、電子化へ一歩」という見出しの松岡資明編集委員の署名記事が掲載されていた。
資料の電子化が進み、自宅の端末で閲覧が進むようになった時に、公共図書館の役割はどうなって行くのかという問題意識が根底にあるようだ。
記事によると、札幌市中央図書館は、昨年10月、電子図書館の実験を開始し、公募した300人のモニターが自宅のパソコンから図書館の専用サイトにアクセスし、電子化された書籍の閲覧を3週間体験してもらい、終了後にアンケートを集計するとのこと。
電子図書館を進めているのは、国立国会図書館、千代田区立千代田図書館など10館程度らしい。
記事では、電子図書館の最大の長所として、利用者が施設に足を運ぶ必要がなく、交通の便の悪い地域の住人や高齢者も蔵書を読めることとしており、課題をソフトの充実としている。
札幌では、独自コンテンツを確保するために、道内の出版社に協力を呼びかけ、北海道大学出版会など16社が200タイトルの電子書籍を提供するほか、地域資料の電子化にも力を入れ、市の広報誌「広報さっぽろ」が創刊号から閲覧可能になるらしい。
確かに、行政資料のように著作権がそもそも無かったり、古い郷土資料のように著作権が切れていたりするする資料は、電子化することによって閲覧性が上がるので、利用は増えるかもしれないが、それが大多数の利用者が電子図書館を利用するモチベーションになるとは思えない。
問題は、今後、出版社から提供されるようになる様々な新刊コンテンツを図書館がどのように利用できるかに係ってくるだろう。
その点は記事でも触れられていて、電子書籍を貸し出す際の新しいルール作りがよろ大きな問題だとしている。
紙の書籍と違って、電子書籍の貸し出しには提供元の意向が影響し、例えば新刊書の貸し出しを一定期間有料にしてほしいなどの条件を出版社が出せば、図書館は従うことになるとし、「電子書籍の場合、利用者に課金しても、図書館法がうたう無料原則には抵触しないとの見解が国の審議会からも出ている」とまとめている。
今後は、小学館や講談社など出版社20社が呼びかけて4月に設立する電子書籍の共同管理会社「出版デジタル機構(仮称)」が図書館との窓口としてルール作りを模索するようだ。
記事は、書籍がすべて電子化され、全国どこでもパソコンで読めるようになれば、自治体ごとに図書館を置く理由はなくなり、国会図書館だけで十分という理屈も成り立つから、公立図書館に存在意義の問い直しを迫るとし、「地域に必要な情報を選別して発信する機能が今後、ますます求められる」という沢辺均ポット出版代表の言葉を紹介している。
確かに、その地域の問題解決のために、情報を収集、整理して提供することは、これまでも公共図書館に求められてきたはずの機能でありながら、一部の関係者にしか理解されず、そのためのリソースも十分には投入されてこなかった。
今後は、電子化で浮くはずのコストが、それを生かすための人的資源(=司書)のために使われることを願って止まない。
それにしてもだ、
という最後のまとめは、これまで図書館が果たしてきた役割の認識として、あまりにも偏っているのではないかね?