The Iron Lady

 諸々の隙を突いて、シネマイクスピアリのレイトショーで「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」を観てきた。

 政治という権謀術策渦巻く男中心の世界の中で、食料品店の娘から西欧初の女性首相に上り詰め、財政赤字、インフレ、高い失業率、フォークランド紛争など困難な状況を乗り越えてイギリスを復活へと導いたサッチャー。

 一方で人頭税の導入など保守的で急進的な施策を強行しようとして不評を買うなど、政治家としての彼女の評価は今でも毀誉褒貶に大きく二分されるが、その信念の強さとリーダーシップ、そして頂点に立つ者の孤高をこの映画はよく描き出している。

 「どう思うか」とインタビュアーに聞かれ、「大事なのはどう思うかではなく、どう考えるかであり、考えが言葉になり、言葉が行動になり、行動が運命になる」と彼女が答えるシーンがこの映画の白眉ではないだろうか。

 国が困難な時代には、こうした傑出したリーダーが必要とされるのだろう。我が国の政治状況を考えながら観ると、考えさせられることが多い。

 それにしても、主演のメリル・ストリープの演技は、流石の一言に尽きる。
 実際のサッチャーの映像を相当研究したのだろうが、引退して表舞台から消え、年老いて認知症を患う彼女を演じるのは、モデルがないだけに相当の困難があっただろうと思う。
 その困難を感じさせない見事な演技は、アカデミー主演女優賞も当然だろう。

Translate »