『ぐらぐら少年』

 今回の通勤電車内読書は、中島淳彦著「ぐらぐら少年」(徳間書店)
 宮崎県の南にある港町でガラス屋の長男として産まれた少年の、幼稚園から17歳までのどうしようもない成長の軌跡を綴る連作短編集。『問題小説』の2009年4月号から2011年11月号までに掲載された短編6編がまとめられている。

 著者の中島淳彦氏は、1961年日南市生まれで、17歳で故郷を離れて上京、20歳で演劇活動を開始し、現在は脚本家・演出家として活躍している。
 明確には書かれていないが、おそらくこれは、著者の自伝的な内容を多分に含む小説だと思われる。もちろん小説なので、脚色もかなりあるとは思われるけど。

 本書は、決して爽やかな少年の成長箪などではない。田舎のちょっといいとこのぼんぼんだけど確固たる自分を持たないぐらぐらした少年が、ぐずぐずと不良少年に落ちて行く、ぐだぐだな物語なのだが、随所にそこはかとないペーソスが溢れ、人を見る目はあくまでも優しい。
 こういうぐらぐらとした世界の存在が理解できない人には、たぶん楽しめない小説なのかもしれない。

 著者と私は同じ世代で、日南市油津(たぶん)で産まれ育った著者と、その2つ南にある港町・南郷町目井津出身の両親を持ち、小学校低学年の頃から学校が長期の休みになる度に目井津の親戚宅で居候生活を送っていた私では、バックボーンに近いものがあるので、描かれる風景や風俗、言葉遣い、登場人物達がどれも懐かしい。
 この場所はあそこがモデルだなとか、こういう奴らは確かにいたなとか、腑に落ちる部分も多くて、そう言う意味でも楽しめた。
 宮崎人、特に日南人は読むべき小説であるよ。☆☆☆1/2。

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