先日の大阪への旅のお供として持って行ったのが、猪谷千香著『つながる図書館-コミュニティの核をめざす試み』(ちくま新書)。図書館界では話題の新刊だ。
武蔵野プレイス、千代田区立千代田図書館、小布施町まちとしょテラソ、島根県立図書館、武雄市図書館、伊万里市民図書館など、現在、注目を浴びた活動を行っている図書館を取り上げつつ、戦後の日本の図書館が利用者や貸出数を伸ばす活動をするところから始まり、「無料貸本屋」批判を乗り越えて、ビジネス支援など改題解決型図書館、地域を支える情報拠点としてその姿を変えようとしているという大きな流れが、うまくまとめられている。
『市民の図書館』や『図書館の自由に関する宣言』といった、図書館員としては必須の歴史的アイコンもしっかり押さえながら、図書館についてよく知らない人にもわかりやすく、その歴史と現状が描かれている。
更に、神奈川県立図書館問題や指定管理の問題などの現代的課題、デジタルアーカイブなどの新しい動き、公立でも私立でもない新しい公共図書館のあり方などにも言及され、図書館教育の入門書としてもお薦めできる。多くの人に読んで欲しい一冊である。
これ読むと、佐賀県内にある武雄市図書館と伊万里市民図書館の二つを訪問したくなる。見学ツアー組みたいな。誰か一緒に行かないかな。一泊二日、温泉宿つきで。
実際に、今月発売の『本の雑誌 ぶっつけ旅はるばる号』では、「おじさん三人組、武雄市図書館に行く!」という二つの図書館の訪問記が掲載されている。素直な感想がわかるので、これも併せて読んでいただきたい。
また、千葉県船橋市の「ふなばし駅前図書館」を運営するNPO法人「情報ステーション」の手法は、宮崎市の中心市街地の活性化のためにも使えるのではないかと思ったりする。これも、今後要チェックだな。
中心市街地の図書館による活性化手法、ちょっとまじめに考えてみようと思う。
兎にも角にも、久しぶりに刺激を受けた一冊でした。☆☆☆☆☆。