『街を変える小さな店』

 すごく久しぶりのブログ更新だ。
 このところ、プライベートな活動でご紹介したい部分については、「宮崎てげてげ通信」の方に書いている。
 ちょっとこことはテイストが違うけど、ライター陣の一部として記事を提供することによって、少しでも宮崎を楽しみたい、宮崎に行きたいと思ってもらえる人が増えることを願っているので、よろしければお読みください。Facebookページもあります。


 さて、このブログの先週末に浦安の家族宅に帰った際、飛行機の中で読了したのが、堀部篤史著『街を変える小さな店 京都のはしっこ、個人店に学ぶこれからの商いのかたち。』(京阪神エルマガ社)

 著者は、京都市の北東、左京区の一乗寺という街にある書店・恵文社一乗寺店の店長。
 「恵文社」は、京都市内に3店舗を持つ書店だが、それぞれ個性のある店づくりをしているといい、著者の勤める120坪ほどの一乗寺店では、新刊はもちろん、古書や洋書、自費出版物も扱うし、レンタルギャラリーと生活雑貨を扱うフロアも併設という、普通の書店のイメージとはちょっと違う、「セレクト書店」のような店らしい。

 蔦屋書店のような大手書店による大型店の出店とAmazonに代表されるオンライン書店の台頭、電子書籍の出現などにより、中小規模の書店が街から急速に消えていく中で、著者が勤めるような街の本屋が生き残る道はどこにあるのか、そういう視点で著者は同じ街に生きる小さな店を巡る。
 居酒屋、古書店、中古レコード店、喫茶店、そして同業の書店、どれも一癖も二癖もありそうな店ばかりだ。
 それは、カルチェ・ラタンとも称される左京区だからこそ成り立っているとも言えるし、そうした店主の個性の集積が左京区という街を作っているとも言えるのではなからろうか。

 巻末の著者と山下氏(ガケ書房店主)との対談の一番最後にある著者の
「僕は自分の店だけを頑張るって感じを超えて、つながりながら輪を大きくしたい。
(中略)
点を線に、さらに面に見せつつ、シンプルじゃない物語をつくることが、街の本屋の生き残りの突破口だと思っています。」
という言葉は、本屋だけではなく街づくりそのものにも繋がると思うし、それは図書館のあり方を考えることにも繋がっていくと思う。

 それから蛇足だけど、本書は造本が面白く、全ページが黒と朱の2色刷で、見出しとページ、ポイントとなる引用文などが朱色で刷られている。
 写真も2色刷なので、全体に赤っぽくなっていて、ちょっと見づらいんだけど、独特の雰囲気を演出しているのは間違いない。

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