写真家は時代の写し鏡であり、往々にして「時の死」の立会人

宮崎県立美術館で開催中(10月29日~12月11日)の「篠山紀信展 写真力」に行ってきました。

篠山紀信、1940年生まれのこの写真家は、週刊誌の表紙やグラビアなどの写真を数多く手がけ、彼自身ががひとつのメディアとして、その被写体とともに時代を切り取り続けています。
まさに、現代日本を代表する写真家と言えるでしょう。

今回の写真展は、その篠山紀信が約50年に渡って撮り続けてきた写真の中から、
「飛び切り写真力のある写真をえらんでみたもの」で、
「よりすぐりの顔、顔、顔……
写真ってスゴイぜ!」
と言わしめる100点余の作品が展示されています。

2階の展示室の入口でチケットをもぎってもらって中に入ると、内部は、
「GOD 鬼籍に入られた人々」
「STAR すべての人々に知られる有名人」
「SPECTACLE 私たちを異次元に連れ出す夢の世界」
「BODY 裸の肉体-美とエロスと闘い」
「ACCIDENT 2011年3月11日-東日本大震災で被災された人々の肖像」
という5つのパートで構成されています。

最初のパート、「GOD 鬼籍に入られた人々」がまず圧巻。
きんさんぎんさん、勝新太郎、三島由紀夫、渥美清、大原麗子、美空ひばり、夏目雅子、バルテュスの大判の写真の圧倒的な存在感に囲まれ、彼らの生きた時代と業績を思い起こさせます。
特に、三島由紀夫を写した2枚の作品が印象的でした。

次のパート、「STAR すべての人々に知られる有名人」では、俳優、歌手、スポーツ選手など、ここ40年ほどの間、時代のアイドル(偶像)として活躍した(する)人々の写真がずらり。
「写真家は時代の映し鏡であり、突出した出来事や人を撮らねばならない」
とする篠山の真骨頂を表すパートと言えるでしょう。

続く「SPECTACLE 私たちを異次元に連れ出す夢の世界」では、歌舞伎という場を中心に、虚と実の狭間にある夢と、そこに生きる人のリアリティを、
「BODY 裸の肉体-美とエロスと闘い」では、時代のヌード表現を切り拓いてきた篠山のチャレンジと、ダンサーやアスリートがもつ肉体の表情を、
それぞれ見ることができます。

最後の「ACCIDENT 2011年3月11日-東日本大震災で被災された人々の肖像」は、ドキュメンタリーとは縁の無さそうな世界にいる篠山ですら、3.11の惨状を前にカメラを構えざるを得なかった現実と、そこでも人の顔を撮り続ける篠山の一貫性を感じました。

 
時代の写し鏡であり、往々にして「時の死」の立会人たる写真家・篠山紀信、写真の力を感じさせる、良い展覧会でした。

※ 展覧会は、基本的に撮影禁止ですが、ここに掲載した2枚だけは、特別に「撮影可」となっていました。

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