2000.4.18(Tue.)

 宮崎市が市立図書館の運営の一部を委託するNPO法人「MCLボランティア」の活動が本格的に始まったとのことで、このところ新聞各紙の地方版に記事が掲載されており、本日付けの読売新聞に比較的詳しく出ている。
 記事には、同法人の理事長である児玉昌道氏が、1999年12月に宮崎市の姉妹都市であるバージニアビーチ市の中央図書館の運営を視察し、そのノウハウを参考に2000年1月に設立総会を開いてメンバーを募集し、3月にNPO法人を設立とある。なんとも慌ただしい話で、本当かいなと疑いたくなる。
 市の対応や予算的な問題を考えると、かなり以前から路線ができていて、その路線上で視察も行われたと見るのが素直だと思う。行政サービスとして、図書館のサービス計画がきちんとできている米国と、それの無い宮崎市とでは、ボランティアの参画の仕方も当然異なるはずなのに、そこのところは空白のまま制度だけを真似てもねぇ。
 年間の委託費約1,500万円は、専従職員の給与や運営費用に充てられ、ボランティアは全くの無償奉仕というが、それなら運営委託しなくてもボランティアを生かす道はあったはず。事務局長は確か小学校長OBだったはずで、市職員のOB対策などと勘ぐられないような運営が望まれる。
 記事末尾には、日本図書館協会の酒川事務局長の談話も載せられていて、市民の善意の参加を評価する反面、「図書館側の都合による労力提供で終わらず、どこまで自立して運営に参加できるかが、ボランティア側の大きな課題。一方で、図書館設置者の自治体側には、利用者の読書歴や個人情報の守秘義務をどうするかなど、解決すべき課題も多い」との指摘もきちんと掲載されている。事実のみを伝える他紙と比して、読売の記事はよく書けている。
 酒川氏の指摘のとおり、最も大きな問題は、法的に何の制約も受けないボランティアが、貸出や返却などの窓口業務を通して利用者の個人情報に容易に触れることができる点であろう。
 それ以外にも、書架の整理や返却本の排架をボランティアが主力で行うことによって、資料のダイナミックな動きや利用者の反応がつかみきれず、選書や排架計画、企画展示などのサービスがおろそかになってしまう畏れは十分にある。宮崎市立図書館の場合、このようなサービスはこれまでも不十分であったので、今より悪くなることは無いのかもしれないが。
 いずれにしても、公立図書館のNPO法人への運営委託は、全国でも初とのことで、注目を集めているのは確か。しばらくは目が離せない。

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