11/4から本日までの中国華南出張より戻ったら、京都の友人から封書が届いていて、中に日経産業新聞に掲載された図書館関係記事の切り抜きが4枚入っていた。私のことを気にかけて、わざわざコピーして送ってくれるのだから、本当に友というのは有り難い。
記事の内容は2種類で、一つは10月29日付けの「エンターテイメント見聞録」。10月23日に発売された「ハリー・ポッター」シリーズ第4巻を枕に、ベストセラーを大量購入する図書館に対し、作者・出版者側の公貸権導入要望に触れたもの。このところ顕著になっている動きをレポートしたもので、あちこちの新聞にも取り上げられ、ここでもいくつか紹介している。不況で冷え込んだパイを、大きくする努力ではなく、取れる者が取り合う構図であり、少々悲しい。
もう一つは、10月30日から11月1日にかけて「知財攻防」に3回に分けて連載されたもので、「電子図書館」を巡る最近の動きをレポートしている。
10月30日の「上」では、国立国会図書館で2年前から始まった蔵書のデジタル化の動きをレポート。著作権の処理に手間取って作業が困難を極め、2年間で許諾を得て公開された蔵書は全体の2割にしか過ぎないとか。
著作権の切れた本をボランティアベースでデジタル化して無料公開しているサイト「青空文庫」も紹介されている。こちらは、2000冊を超える資料が公開されているが、公開までには出版社の根強い反発もあるとか。編集著作権という厚い壁もあるが、出版者側も当然にそれなりの投資をしている訳だし、また、運営に携わる個人の負担、プレッシャーも大変なようだ。これだけ有名になれば、このサイトみたいに、気ままに更新というのも許されまい。
他に、電子サービスを進める公共図書館として、700万点の資料が公開されている米国議会図書館(LOC)、10万点の英国図書館(BL)、20万点の中国国家図書館(閲覧は原則有料だが一部の古典資料は無料)が紹介されている。
翌10月31日付の「中」では、北海道岩見沢市立図書館で6月から開始された「電子岩波文庫」を紹介。図書館から2キロ離れた岩見沢市のネットワークセンターのサーバーに収められた電子岩波文庫のデータを、市の光ファイバー網使って図書館にある端末に配信される仕組み。閲覧実績に応じた著作権料を岩波書店などに払うのだとか。岩波書店、平凡社のほか、イーブックイニシアティブジャパン(EBI)、ハドソンがプロジェクトに参加している。これからの公共図書館の一つのあり方を示すモデルとして興味深い。問題はコンテンツの量と質に帰結するのかもしれないが。
11月1日付けの「下」では、電子書籍データの複製を制限する技術「デジタル著作権管理(DRM)」について紹介。ゼロックスのパロアルト研究所で生まれたこの技術、米国に先立って、日本の電子出版社「コンテンツワークス」が実用化するのだとか。技術が確立され、電子出版、電子図書館が新たな地平を切り開いた時、公共図書館の姿は果たしてどうなっているのだろうか。