Precious

浦安総合体育館まで3km走り、30分で1.5km(おそらく)泳いでシネマイクスピアリまで行って、午前中初回上映1,300円で観たのは、オバマ政権の産みの母とも称されるあのオプラ・ウィンフリー制作総指揮の「Precious(邦題:プレシャス)」。

 テーマは非常に重い。何せ、ニューヨーク・ハーレムの貧困世帯での父親による性的虐待、16歳での二人目の妊娠、母親による肉体的虐待を赤裸々に描いているのだ。しかも、最初に産んだ長女はダウン症というハンディまで抱え、自身のHIV感染まで明らかになる。貧困が貧困を呼ぶ負の連鎖。原作は、Sapphire(サフィア)の実体験に基づく小説”Push”。これが、80年代のアメリカのひとつの現実。

 しかし、ガボレイ・シディベ演じる主人公のプレシャスは、16歳にして文字の読み書きもできない状況から、フリースクールの教師ミズ・レイン(ポーラ・パットン、美人だ)の導きを得て、読み書きを覚え、書くこと、学ぶ喜びに目覚め、第二子誕生によって人を愛し愛されることを知り、次第に生きるための自信を獲得していく。

 母親役のモニークは、この演技でアカデミー助演女優賞を獲得したが、それも納得の迫真の演技。最後にマライア・キャリー演じる福祉課職員を相手に心情を吐露する場面は、涙なしに観られない。何故彼女が「Precious=貴い、最愛の人」と名付けた娘を醜く太らせ虐待したが、ここで初めて明かされる。

 「あたしの幸せはあたしが見つける」と言って、母親と決別し、二人の子どもを連れて踏み出すプレシャスの姿は力強く、貧困に打ち勝つための教育の可能性と必要性を痛感させられる。

 今観るべき映画は、何を置いてもこれしかない。今年の個人的なアカデミー作品賞は、本作に他ならない。

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