『ゲット・カーター』

 今回の通勤電車内読書は、テッド・ルイス著「ゲット・カーター」(扶桑社ミステリー)。1970年に刊行された、ブリティッシュ・ノワールの傑作。

 裏社会の組織の構成員である主人公ジャック・カーターは、兄フランクが酒に酔って交通事故死したとの報に触れて生まれ故郷に帰ってきた。
 感情を抑えストイックに生きてきた兄が、酒に酔って事故死するはずはないと信じるジャックは、兄の死の真相を探ろうと、あえて故郷の藪をつついて回る。
 パブのカウンターを中心に、昔なじみのチンピラ達に聞き込みを続けるうち、次第に明らかとなる故郷の裏社会の実態と、ジャックの身に降りかかる危機。

 邦訳は2度目らしいが、本書は2007年12月が初版。40年前の著作でありながら、古さをさほど感じさせないのは、決して派手ではないがほどよいテンポと抑制の効いた語り口で、伏線を張り巡らしながら複雑な人間関係をきちんと構成するプロットの秀逸さの故であろう。
 土屋晃による訳者あとがきを読むと、著者のテッド・ルイスは、1982年に42歳の若さで亡くなっているが、デイビッド・ピースやサイモン・カーニックら後世クライム・ノベルの作家達に大きな影響を与えており、本作も名作の誉れ高いらしい。☆☆☆☆1/2。
 残念なのは、現在国内で読めるテッド・ルイスの作品は本書作だけであること。ジャック・カーターを主人公とするシリーズも、この後2巻出ているらしいのだが、いずれ訳出されるのだろうか?。

 なお、本書を原作として、マイク・ホッジス監督、マイケル・ケイン主演で1971年に映画化(日本公開は1972年「狙撃者」)され、2000年にスティーブン・ケイ監督、シルベスタ・スタローン主演で”Tsuigekisha”というタイトルでリメイク(日本公開は2001年「追撃者」)されているとのこと。どちらも観てないなぁ。オリジナルの方が評判は良さそうだけど、DVDは出ていないのね。残念。スタローンのリメイク版はDVD出てるみたいだけど、わざわざ借りてまで観る気はないなぁ。

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