今回の通勤電車内読書は、サラ・パレツキー著「アンサンブル」(ハヤカワ・ミステリ文庫)。
V・I・ウォショースキー誕生30周年記念として出版された日本オリジナルの短編集である。
三部構成になっていて、第一部「V・I・ウォショースキーの事件簿」には、ヴィクが主人公の短編が4編収録されていて、4編目の『V・I・ウォショースキー最初の事件』は、ヴィクがまだ子どもの頃に遭遇した、文字どおり最初の事件のお話である。
第二部「ウィンディシティ・ブルース」に収録の5編は、シリーズ外の独立した短編。しかし、パレツキーの問題意識や立ち位置が反映されていて面白い。
第三部「ボーナス・トラック」は、『ポスター・チャイルド』の1編のみ収録で、シリーズでおなじみのフィンチレー警部補が登場するので、スピンアウト短編と言ってもいいかもしれない。
長編を一気に読ませる筆力を持つパレツキーだけに、いずれの短編もそつなくまとめられているが、やはりシリーズ外の作品よりもヴィクが主人公の作品の方が楽しめる。
山本やよいによる「訳者あとがき」によれば、シリーズ15作目となる最新作も間もなく刊行予定とのことなので、楽しみに待ちたい。☆☆☆1/2。