2009年が明けた直後のイクスピアリにあるショップで、電車好きの息子のために、中央・総武線の電車を象ったキーカバーを買った。家の鍵の持つとこにかぶせて使うやつ。
早速、息子が持っている家の鍵につけたら、息子も嬉しそうにしていた。
息子は、学校からスクールバスで帰ってきて、妻がパートなどで不在の日は、この鍵を使って自分で家の錠を開けて中に入って留守番をする。
障害のある息子が、一人で家に帰ってこれて留守番ができるというのは、我が家では画期的なことだ。よくぞここまで成長してくれたと思う。
ところで電車のキーカバー、多くの鍵に合うように、少し大きめに作られているので、時としてずれて、鍵穴に差し込む部分にかかってしまうことがある。
普通の大人が使うぶんには、何ら問題ないのだが、障害のある息子には、それが大きな問題となることがある。
でも、キーカバーを買って取り付けた時には、それが問題になるなんて考えもしなかった。
そして昨日のこと、私と妻は共に仕事で家には不在。そこに、いつものように息子が帰ってきた。
いつもと違うのは、キーカバーがずれていたことだけ。
息子は鍵穴に鍵を差し込んで開けようとするが、最後まで差し込まれていないので、鍵は回らない。息子には、なぜ回らないのかがわからない。
息子は鍵を回そうとする。次第に力を込めて。
障害のせいでうまく使えない指先に、精一杯の力を思い切り込めて回す。
そして、ついにその力に抗しきれず、鍵が曲がってしまう。結局、錠は開かない。
不在の家に、彼を助けてくれる者はいない。彼の声は誰にも届かない。
彼がその時、声を発したかどうかはわからないけど。
錠が開かないと悟って、その後、息子はどうしたと思う?