書店が公立図書館を運営?

 先週になるが、10月13日(土)付け日本経済新聞の「プラス1」13面のコラム「エコノ探偵団」に、「書店が公立図書館を運営?」と題する記事掲載。
 公立図書館の運営に書店が相次いで参入しているらしいということで、実態を検証しようという内容。

 まずは、千代田区立日比谷図書文化館を取材。小学館集英社プロダクションを代表とする民間5社のコンソーシアムが区から16年度までの契約で受託して、貸し出しや返却といったカウンター業務、図書購入などを請け負っている。
 12年度の収入は、区からの指定管理料4億円強に市民文化講座の受講料などを加えた4.9億円の計画。「ここから人件費を差し引いた残りが民間のもうけになる。」と言うが、館長を含めて約70名の民間スタッフが働いているということなので、スタッフの平均年収が気になるところ。決して高くはなさそうだ。

「書店」としてこのコンソーシアムに加わっているのが、紀伊國屋書店が指定管理を務めるのは13館。常務の藤則幸男さんによると、公立図書館の8割ほどはまだ外部委託をしていないため「開拓余地は大きい」とのこと。
 「運営に成功し貸し出しが増えれば、本の売れ行きが落ちて困るのでは」というベタな問いには、「運営に加われば、その図書館に対する書籍の売込みで有利になれます。どんな本が人気なのかもわかります」との答え。
記事では、出版科学研究所の推定による書籍販売額(11年に約8,200億円)と日本図書館協会の資料を比較して、公立図書館の購入費は書籍販売の3%程度と推計し、「安定的な販売先として注目されている。」としているが、公立図書館が購入しなかったら採算割れする書籍も多く、図書館は書店の敵では決してない。図書館が栄えれば、本は売れるのだ。

 記事が次に注目するのは「民営化の効果」で、現在の5館に加え、残る7館も13年4月までに指定管理にして”完全民営化”する江戸川区で取材。
 区立中央図書館の佐藤館長から民営化の狙いを「サービスの向上とコスト削減の両立」と説明を受け、「民間は非常勤の活用で人件費を抑え、コストは10年度の民営化前より少なくと1割は削減できました」と語らせている。
 民営化された4館では、貸し出しの締め切り時刻が民営化前より1時間半遅い午後9時半になり、11年度は東日本大震災の影響で開館時間を短縮したものの、借りた人は4館計で09年度より16%増加したとのこと。
 「カウンターに利用者が並ぶと職員がすぐ出てくるので助かります」という利用者の声も紹介。民営化以前はかなりひどかったのか?。

 ただし、いいことずくめではない点も紹介されていて、まずは他の公共施設に比べて、無償原則の「図書館法」という壁がある図書館では、「民営化で利用者が増えても、収益が伸びずにコストが積み上がる。」とし、立教大学の永田特任教授の「結果的に職員の待遇が悪化すればサービス低下につながりかねません」という指摘を紹介している。
 また、個人情報保護とのからみで、CCCへの委託が決まっている武雄市図書館・歴史資料館でのポイントカードの導入表明と一部市民の反発について簡単に触れられている。

 このほか、本文中には出てこないが、指定管理者企業として、東京都を中心に28館を運営するヴィアックスと、千代田区で4館を運営するサントリーパブリシティサービスがあることも紹介されている。

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