「海幸山幸」の旅

 この「徒然日記」も、前回の更新(3/10)からかなり間が空いてしまった。
 この間、6年働いた東京を離れて宮崎に戻ることになり、4月から1Kのアパートで一人暮らしが始まり、慣れない仕事と大学以来の自炊生活で、なかなかブログを更新する余裕がなかったのだ。
 基本的に、日常の様子はFacebookで発信していて、知り合いには伝わっているので、それでいいかなという思いもあったのも事実。
 しかし、それじゃブログやってる意味がないので、修行もかねてちゃんと続けていかなければと思ってる。 そういう訳で、誰が読んでくれているのかいまいちよくわからないけど、引き続きよろしくお願いしますよ。

 で、いつの間にか世間はゴールデンウィークに突入しており、天気も良いので、引きこもってないでどっか行くのが健全だろう。
 どうせどっか行くなら、楽しげで美味しげな旅しなくちゃということで、4月28日(日)、水戸岡鋭治デザインで人気のJR九州・日南線の特急「海幸山幸」に乗って、南へ向かう旅に出ることにした。
特急「海幸山幸」 特急「海幸山幸」は、宮崎駅を10時6分始発。朝食済ませて歩いて宮崎駅まで行って、9時半頃にみどりの窓口に飛び込んだら、ラッキーなことに一人掛けの指定席が1席だけ残っていたよ。天は我に味方せり!。
 この「海幸山幸」は南郷駅まで行くのだが、この日の目的地は油津!(理由は後述)なので、窓口のお姉さんにそう告げると、
「帰りはどうしますか?」
と尋ねられたので、
「往復で。」
と答えると、
「それなら、『日南レール&バスきっぷ』の方がお得になりますね。」
というお薦めに従って、油津までの往復で2,500円をクレジット払い。

 ホームに上がると、4番線に2両編成の「海幸山幸」が待っていた。白いボディの側面に飫肥杉の板が張られた美しいデザイン。

内装1内装2

 内装にも飫肥杉がふんだんに使われており、温かみのある落ち着いた雰囲気を演出している。私が乗ったのは1号車「山幸」で、シートは赤が基調。2号車の「海幸」は、青が基調のシートになっている。

 列車は、定刻の10時6分に宮崎駅を出発し、日南線を南へ向けて走り出す。
 さすがにゴールデンウィークとあって、車内は家族連れや夫婦、カップルなどでほぼ満席。
空席もあるんだなと思ったら、途中の子供の国駅かも乗車してきた。パームビーチホテルの宿泊客のようだ。
 青島を過ぎて、内海駅-小内海駅間の野島が見える手前で、鬼の洗濯板がよく見える撮影ポイントということで一時停止。
 この日は天気も良く、波も穏やか、引き潮の時間帯ということで、鬼の洗濯板もよく見えた。

野島と鬼の洗濯板記念乗車証

 車内では、記念乗車証が配られ、裏面には1号車先頭にあるカウンター横でスタンプが押せるようになっていて、乗客を車内で動かす工夫もされている。
 車内販売では、キーホルダーなど記念グッズのほか、チーズ饅頭、プリン、コーヒーなども売られていて、楽しませてくれるのだが、一人暮らしで節約モードなので、ホットコーヒー(250円)だけで我慢。

 やがて車中では、「海幸彦・山幸彦伝説」の紙芝居が始まった。
 列車名の由来にもなった伝説だが、単にアナウンスでの紹介ではなく、紙芝居というイベントとして設定するところがさすが。特に子ども達にはわかりやすくて良さそう。
 感心したのはそれだけではなく、伊比井駅-北郷駅間にある谷之城トンネルでのこと。
 伊比井駅から先は海岸線を離れ山間の単調な景色になるのだが、谷之城トンネルは全長3,670mと日南線で最も長いトンネルで、しばらく真っ暗な区間が続く。
 しかし、水平な直線区間が長いという特徴があり、その特長を生かして、1号車のお客様は先頭の窓から、2号車のお客様は最後尾の窓から、長く続く線路をご覧くださいというアナウンスが入るのだ。
 トンネルという殺風景で興醒めな区間を、見事にひとつのイベントに変えてしまうという手法、たった2両の編成で前後の景色も良く見えるようになっており、乗客の車内移動を容易にしている「海幸山幸」ならではの演出だろう。

紙芝居飫肥駅

 そして長いトンネルを抜けると、広渡川沿いに北郷から飫肥へと向かい、泰平踊りの侍と奴が出迎えてくれる飫肥駅で10分間停車する。ここで、飫肥の名物「おび天」なども買うことができるのだが、できればここで簡単につまめる名物軽食メニューが欲しいところだな。

 飫肥駅を11時16分に出発し、油津駅には11時26分に到着。
 終着駅の南郷まで向かう皆さんと別れてここで下車し、まずは徒歩で港の方角へ。

めがね橋吾平津神社

 堀川運河沿いに港の方へ歩くと、松竹映画「男はつらいよ」の第45作「寅次郎の青春」(1992年)にも登場した石橋が見えてくる。
 その石橋の横には、神武天皇の妻であった吾平津比売命を祀る吾平津神社(乙姫神社)があり、普段は詣る人も殆どいないひっそりとした境内は、なかなか趣がある。
 祈願成就、豊漁や航海の安全を祈る神社でお詣りを済ませた後、対岸に渡って、今日の目的地である堀川運河ひろばへ。

 堀川運河ひろばで開催されていたのは、「海幸・山幸マルシェ」。以前開催された「マルシェ・ジャポン in 日南」を契機に、毎年開催されているらしい。
 地元で作られているものを地元の人に知ってもらうと同時に、外から人を呼び込むこういう催しは、運営は大変かもしれないが、大切にしたいものだ。

マルシェ看板マルシェ会場

 土日2日間の開催の2日目、両日ともに天気にも恵まれ、結構な賑わいを見せていた。

アヒージョ看板白ワインとアヒージョ

 到着したのがちょうど昼時でお腹も空いていたので、まず「バルの2月」のブースで白ワイン(300円)と「しいたけと海老のアヒージョ」(500円)をいただく。車じゃないので、昼間っからおおっぴらにワインとかいただけちゃうのは嬉しいね。
 このアヒージョ、地元北郷町で原木椎茸栽培に取り組む「原木しいたけ 茸蔵」と宮崎市・アートセンタービルの2階にあるスペイン料理店「バルの2月」がコラボしてできたもので、原木椎茸の力強い美味さがよく味わえる一品でした。多めに注いでもらったワインも美味しかった。

 食べ終わって、会場内をぶらついて、知っている顔にご挨拶。

茸蔵の黒木さん京屋酒造の仁木さん

 左は、その「原木しいたけ 茸蔵」をやっている黒木慎吾さん。まだ若いけど、県内外のイベントにも積極的に出て、原木椎茸の普及に努めている。私もここの干し椎茸を使ってます。
 そして右は、久しぶりにお会いした、地元油津の焼酎メーカー・京屋酒造の仁木さん。新宿みやざき館KONNE時代は、イベント等でいろいろお世話になった敏腕営業マン。
 「自分達としては赤字覚悟なんですけど、こういうイベントは盛り上げないと。」
と言いつつ、会場でそのまま飲める12度の芋焼酎をメインに、わざわざ氷で冷やして売っていた。確かに、720mlで2,000円以上はする麦焼酎原酒樽貯蔵(40度)の「航魂」のミニボトル(300ml)が450円というのは破格値。1本購入させていただきました。

日南星 今回のマルシェでも、いろんな出会いがあったけど、中でも一番驚きだったのが、古澤農園さんのブースで出会ったこの「日南星(ヒナスター)」というみかん。
 試食させていただいたら、味は甘さの乗った日向夏なのだが、普通の日向夏のようなアルベド(白い内果皮)がほとんど無い。温州ミカンのように、手で皮をむいて食べられるという。
 日向夏と何かの掛け合わせなのかと思って聞いたが、そうではなくて、ご自身の農園にそういう原木があるのだそうだ。
 これは驚き!。詳しいことはわからないが、品種としては日向夏ということになるらしい。皆さん知ってましたか?。
 食べやすく、美味しく、皮にも苦みが少ないのでピールとして様々に利用可能とのことなので、浦安に住む家族に1箱送ってもらうことにして、その場で配送票書きました。
 そしたら、お買い上げのお礼にと、その場でも売っていた手作り日南星マーマレードを一瓶いただきました。いただくの楽しみ。

 まだまだ日南の美味いもの飲み食いしたかったんだけど、予定外の買い物で懐が寂しくなったのと、帰りの時間も迫ってきたので、マルシェ会場を離れて油津駅へ。

 特急「海幸山幸」の上り便かその前後の普通列車という選択肢もあったのだが、折角ならコレでしょ!ということで、「海幸山幸」に合わせて運行されている定期観光バス「にちなん号」に乗ることにした。

にちなん号鵜戸神宮

 「海幸山幸」に合わせて真っ白くカラーリングされたこのバスは、以前、とあるリゾートで施設間の連絡バスとして使われていた車体ではないのか?。でも、なかなか良い感じ。
 油津駅前にある宮崎交通の営業所を14時15分に出発すると、バスは一路鵜戸神宮へ。
 車内では、女性のガイドさんが沿線の見所を解説してくれたり、「鵜戸さん参り」や「シャンシャン馬道中唄」などの歌を披露してくれたりして飽きさせずに楽しませてくれる。
 鵜戸神宮に到着して、約1時間停車。その間にガイドさんの案内を聞きながら参拝してもいいし、自由に行動しちゃってもいい。
 ただ、観光バス用の駐車場から一番奥の社殿まではかなり上り下りがあるので、足の具合の悪い方や、お年を召した方などは、1時間で行って帰ってするのは少し厳しいかも。
 ガイドさんは一番遅い人に合わせてくれる訳ではないので、かなり距離があることや階段が多いことは事前にお知らせがあった方がいいかな。

 鵜戸神宮を出ると、次は堀切峠にある道の駅「フェニックス」へ向かう。

プレミアム日向夏ソフト青島

 道の駅「フェニックス」で食べるべきは、「プレミアム日向夏ソフト」(350円)。他のソフトが300円の中、これだけ50円高いが、それだけ出す価値がこれにはある。抜群に美味いよ。だけど、ここでの停車時間は10分なので、混んでる時は要注意。
 道の駅「フェニックス」の次は、青島で45分間停車。ここもガイドさんが青島神社まで案内してくれる。
 しかし、こないだ参詣したばかりなので、亜熱帯植物園でモバイルPC開いて作業したりしてた。晴れてる時は、この植物園もなかなかいい。

 青島を出て、バスは一路、終着点の宮崎駅へ。
 途中、運動公園を過ぎて空港方面へ南バイパスを走行中にふと窓外左手を見ると、こっちに向かってやたらと手を振っている人がいて、誰かと思ったら、こないだお邪魔した「こなら亭」の木佐貫ご夫妻と愛犬ひめぴょんではないか!。手を振り返してご挨拶。
 私が「にちなん号」に乗っていることをFacebookで知って、散歩の途中に時間を合わせていただいたらしい。びっくりしたけどなんか嬉しいね。ICTはリアルを豊かにする!。

 連休中ということもあって、空港を過ぎてから道路が少し混んでいたが、17時35分に宮崎駅西口に到着。
 思い立って無計画に行ったわりには、素晴らしく充実した一日でありました。宮崎最高!。

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