『銀盤のトレース』

『銀盤のトレース』書影

前回に引き続き、これまた浦安市立図書館中央館で借りてよんだ青春スポーツ小説が、青野圭著『銀盤のトレース』(実業之日本社)

 主人公・竹中朱里は、名古屋に住むフィギュアスケート少女。彼女の、小学6年生(プロローグでは4年生)から中学1年生にかけての、スケート選手としての成長の物語である。

 初版発行は今年の2月12日、折しも今年はバンクーバー五輪からトリノ世界選手権と日本人選手が活躍するフィギュアの大会が続き、めでたくもトリノで高橋大輔と浅田真央が金メダルでシーズンを締め括ったということで、実にタイムリーではある。

 本書を読むまで、フィギュアスケートには日本スケート連盟が認める初級・1級~8級までの級があり、それぞれの級を獲得するには、バッジテストなるものを受けなければならないなんて知らなかった。
 そういう初歩的なことから、スケート靴のエッジの使い方、ジャンプの種類と飛び方など、フィギュアに関する情報が素人にもわかりやすく散りばめられている。
 しかも数多の有名スケート選手を輩出した名古屋が舞台ということで、ひょっとするとこの登場人物は実在のあの人がモデルなのかもしれないなどと楽しませてくれる。真央ちゃんも、きっとこういう過程を踏んで成長していったのだろうな。
 娘が同じ採点競技の選手ということもあり、共通する部分も多いので、そういう意味でも面白く読んだ。

 しかし、描かれている時間が短くて、ちょっと物足りなさはある。主人公・朱里が、これからどういう選手に育って行くのか、きっと味わうであろう挫折をどのように乗り越えて行くのか、そういう部分も読みたい。まだまだ続きが書けそうで、著者の今後に期待。☆☆☆

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