『ブラッド・メリディアン』

『ブラッド・メリディアン』書影 今回の通勤電車内読書は、コーマック・マッカーシー著「ブラッド・メリディアン」(早川書房)

 『本の雑誌』の書評で気になったので、これまたcalilで検索して予約をかけ、浦安市立中央図書館で借りた。
 予約確保のメールが来たので借りに行って始めて文庫本じゃなくて単行本であることに気づき、一瞬しまったと思ったが後の祭り。ハードカバーで432ページもあると、ちょっと重いんだよね。通勤バッグの中で嵩張るし。

 読んでみると、非常に特異な文体に、最初は少し違和感を感じる。読点(、)が全く無い長い文章が続くし、会話文が「」でくくられていなくて、地の文と区別されていない。登場人物の心理描写が排され、周囲の情景の描写、登場人物達の行動が長い文章の中に織り込まれて行く。読み手を選ぶかもしれない。

 描かれているのは、19世紀半ばのアメリカ南西部からメキシコ北部にかけての地域で、「少年」と呼ばれる主人公がグラントン率いる頭皮狩り隊に加わり、インディアンを虐殺して頭皮を剥いで売る悪逆非道の日々。その中で圧倒的な存在感を感じさせるのが、「判事」と呼ばれる禿頭の大男で、比類希な知識の持ち主ながら、悪のイデオローグとなっている。
 グラントンなど登場人物には実在のモデルがいるらしく、本書はアメリカ史の暗黒面を告発するかのように描いており、たくさんの死が満載で、救いが全くない。そういう意味でも読み手を選ぶかもしれない。

 しかしながら本書は、「ニューヨーク・タイムズ」の著名作家の投票による「ベスト・アメリカン・ノベルズ」(2006-1998)に選出されたほどの話題作でもある。残虐行為と戦争を哲学的な視点から描いているとも読みとれ、確かにそのボリューム以上に存在感の際だつ問題作である。☆☆☆☆1/2

Translate »