At Once

仕事帰りに九段下の駅で手に取ったフリーペーパーの『At Once』の表紙に、小さな赤い文字で「LAST ISSUE」と書かれているのを見た時、「ああ、やはりその時が来たか」と思った。

同誌に「東京巡礼」を連載している椎名誠が『本の雑誌』に書いていたところに依ると、東京で一番読まれているフリーペーパーらしい。

写真家・操上和美が撮る俳優のモノクロ写真を表紙に据え、巻頭はその操上による表紙写真の続きのポートレートと、3ページが活字でびっしりと埋まったその俳優へのインタビュー記事が強いインパクトを放っている。
非常にデザイン性の高い紙面で、先に名を挙げた椎名誠のほか、山本益博、柴田元幸、吉元由美、北川れい子、片岡義男など、ビッグネームの書き手名を連ねているのに、広告があまりない。
よくこれでやっていけるなと思うくらい、クオリティの高い作りで、最初に手に取った時に驚き、以後、毎月、九段下の駅のラックに並ぶのを楽しみにしていた。
こんなものがフリーペーパーで出せるなんて、東京はすごいと思った。

しかし、やはりここにも出版不況の波は押し寄せてきていたのだろう。理由は明らかにされていないが、今号をもって休刊と編集部からのお知らせが巻末にあった。

残念至極。こんなことならバックナンバー捨てずに取っておけば良かった。

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