なんか日々慌ただしくてブログの更新を怠ったまま、2021年を迎えてしまいました。今年は、もう少し余裕を作って更新できるようにして行きたいと思います。
さて、新年早々の更新は、昨年末に読了した『食の歴史―人類はこれまで何を食べてきたのか』(ジャック・アタリ著、プレジデント社)。
ジャック・アタリ氏と言えば、フランスの経済学者、思想家、作家であり、1981年にミッテラン大統領の特別顧問となって以降、現在のマクロン大統領までフランスの政治運営にも深く関わる知識人。現代の知の巨人の一人と言えるでしょう。
そんな博覧強記のアタリ氏が、人類がその誕生から現在に至るまで、食べるという行為とどのように関わり、どのように変容を遂げてきたのか、そして未来への予測・提言を、古今東西の膨大な資料を分析して解き明かしたのが本書。巻末の参考文献一覧だけでも凄いです。
「ホモ・サピエンスが言語を習得できたのは、火を利用して食べるようになったから」であり、食と言語は密接な関係にあり、食が言語の発展を促し、食事の場=宴は社交の場として権力者の語り場となり、ついには食べるという行為は副次的なことにすぎないところまで行ってしまいます。
そして19世紀以降、食に対する欲求の高まりとともに工業化が進展し、社会もそれに応じて変遷して行くことになります。
本書は、人類の歴史の中で社会の変容と食との関係を、事実に基づきながらわかりやすく説き起こしてくれます。
そして、富裕層と貧困層の分断が進む現代、飢餓の問題や食糧の生産が起因となる地球環境の破壊などの課題に触れつつ、30年後の世界がどうなっていくのかを予言して行きます。
アタリ氏が描き出す世界は決して明るいものではなく、最悪で悲惨な未来も予言されますが、その未来を避けることができる手段も提示されます。
詳しくは本書を読んでいただければ幸いですが、自分たちの食を知ることがいかに大事なことであるかを教えてくれます。
フードアナリストとしての必読書のリストに、本書を是非とも加えていただきたいと思う次第であり、フードアナリストに限らず、食に関心のある方にはお薦めしたい一冊です。☆☆☆☆☆