『セカンドウィンドII』

『セカンドウィンドⅡ』書影

 今回の通勤電車読書は、川西蘭著「セカンドウィンドII」(ピュアフル文庫)。4月13日にここで紹介した「セカンドウィンドI」の続編。
 すぐに読みたかったのだけど、浦安市立図書館では貸し出し中で、予約をかけてやっと借りることができた。

 前巻では中学3年生だった主人公の溝口洋は、高校2年になって南雲学院高等学校の自転車競技部に所属している。友人だった田村岳も同様にチームメイトだ。他のメンバーも揃って本巻に登場している。
 前巻からして順風満帆に成長しているのかと思ったら、さすがに青春スポーツ小説ではそう簡単には行かない。行けば面白くないしね。青春に蹉跌はつきものだ。

 本巻では、洋は深刻なスランプに陥っている。体調不良のようでそうでもなく、メンタルな要因もいくつかあるのだが、どれも決定的なものではない。ヒルクライマーの岳やスプリンターの今泉昇のような際立つ個性=特徴がないことに悩み、焦っていることも原因のひとつだが、チームスポーツである自転車競技(特にロード)の中で、勝つためには他人を蹴落としてでもというチームの考え方に馴染めずにいることも影響している。
 オールラウンダーとしての才能に恵まれていながらその才能にまだ気付いていないため、ひとつの才能にすがって必死になっているチームの仲間達と生き残るための必死さの点で差があり、その才能を羨まれることに慣れていなくてとまどうのだ。

 しかし、新しい仲間との出会い、オフロードという新しい環境での経験、彼の資質を見抜いている先輩や仲間達の叱咤・激励もあって、そのスランプから徐々に抜け出していく様子が、本巻の中核を成している。
 本巻で初登場する人物達もなかなか個性豊かで、それぞれに深い物語を秘めている。それが本シリーズの世界を厚みのあるものにしている。

 物語は佳境に入ってきたが、まだまだ先は長そうだ。おそらく洋は、海外でのロードレースを走るようになるだろう。それまでにどういう展開が待ち受けているのか、なかなか進展しない幼なじみの多恵との仲はどうなるのか、本巻で心臓を手術した祖父は、まだ明かされていない母親との再会はあるのか、そして、チームの中やこれから登場するであろうライバル達との切磋琢磨はどうなっていくのか、興味は尽きない。
 とりあえず、まだ出ていない3巻が待ち遠しい。早く読ませて欲しいものだ。

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