今回の通勤電車内読書のご紹介は、ロビン・バーセル著「霧に濡れた死者たち」(ヴィレッジブックス)。
これも、浦安市立図書館の文庫933の棚からミステリーを漁って、適当に引っ張り出したもの。Deadly Pleasures誌主催のミステリー賞であるバリー賞最優秀ペイパーバック賞を受賞したと惹句にあったので、あんまり外れはないだろうと踏んで選んだ。
主人公のケイト・ギレスピーは、サンフランシスコ市警の殺人課に所属する女性刑事。製薬会社の隣の倉庫で冷凍庫に入れられた身元不明の死体が発見され、ケイトがパートナーのサム・スコラーリとともに操作を開始するところから物語は始まる。
その直後、検視を担当したスコラーリの妻が喉を切り裂かれて殺され、その容疑が夫であるスコラーリにかけられることになり、付近で連続して発生していた同じ手口の殺人事件の容疑者にまでされてしまう。
ケイトは、スコラーリを追う内務監査の警部補マイク・トランスと行動を共にしながら、スコラーリの無実を信じて謎を解こうとするが、警察内部で新たな殺人事件が発生し、彼女自身も命を狙われる羽目になる。
いくつもの殺人事件の手がかりを追ううちに、彼女の元夫である地区検事局の捜査官ライド・ベッテンコートの疑惑も浮かび上がり、複雑なプロットが最後にひとつに集約して行く。
ミステリーとしても面白いが、警察内部(しかも殺人課という職場)での女性の立場、恋愛感情の行方など女性刑事を主人公にした点が、物語に新たな味わいを加えている。ハードボイルドという訳には行かないが、これはこれで十分に面白い。☆☆☆☆。
著者のロビン・バーセルは、20年の長きに渡って警察官や法執行機関の職員として活躍してきたとのことで、細かい部分や女性ならではの視点は実体験に基づいており、本書にリアリティを与えるのに役立っている。本作以降は未訳だが、ケイト・ギレスピーが主人公の物語は4作目まで出ているらしく、是非とも続きを読んでみたい。