『明日の広告』

『明日の広告』書影

 今回の通勤電車内読書は、佐藤尚之著「明日の広告 変化した消費者とコミュニケーションする方法」(アスキー新書)

 著者の佐藤尚之氏は、「さとなお」名義でWebサイト(http://www.satonao.com)を運営し、グルメ情報やエッセイなどを発表、それらが本という形態にまとめられて多数出版されているが、本業は広告会社勤務で、CMプランナー、ウェブ・プランナーなどを経て現在はクリエイティブ・ディレクター。

 専らグルメ情報からのつながりで知っていたが、Twitterでも@satonao名義で積極的に発言されていて、フォローしていた。そのTwitterのTLで「明日の広告」がちょっと話題になっていたので、興味を惹かれてカーリル(http://calil.jp/)で検索して浦安市立図書館中央館に蔵書があることを確認して借りに行った次第。

 インターネットの出現によって、それまで素直に広告を受け取っていた消費者が大きく変化した。テレビ、新聞などのマスメディア以外に消費者が関心を寄せる媒体が増え、情報洪水の中でいらない情報=広告はスルーされがちになり、ネットで消費者同士が情報交換することで広告に対する疑いを持つようになり、商品を子細に分析して丸裸にすることで、広告よりクチコミが価値をもつようになってきた。

 そんなふうに消費者が変化していく中で、それじゃ広告は消費者にどういうアプローチをすれば良いのか、っていうのが本書の肝である。

 広告をラブレターに例え、消費者にそのラブレターを渡すには、

  • 相手の趣味や行動を調べ、よくよく観察し、相手の身になってみる。
  • その上で相手の行動を先読みして待ち伏せし、確実にラブレターを渡す。
  • 他の楽しいことに目がいかないように、感動的なラブレターで口説く。
  • 相手の友達にも気に入られるよう十分ケアする。

とする。

 つまり、徹底した消費者本位で、伝えたい相手、伝えたい中身を考えて、メディアに囚われずに広告を組み立てていくことが大事だということだ。

 さすがにその道のプロだけあって、例えや挿入される図なども含め、これからの広告の世界が非常にわかりやすくまとめられている。「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」の過程など、読んでて感動的ですらあった。

実際に広告を作り上げるためのチーム編成やコミュニケーション・デザイナーなどの役割分担の話は、直接的には縁がない世界なのでちょととばし読み気味だったが、繰り返される「消費者本位」という言葉は、どういうビジネスにも当てはまる話であり、少なくとも私にとって、日々の仕事を見直すいいきっかけになった。

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