今回ご紹介するのは、コーマック・マッカーシー著『平原の町』(ハヤカワepi文庫)。
以前ご紹介した『越境』の続編で、“国境三部作”の最後を飾る作品である。
未だ読んでないが、三部作の初編『すべての美しい馬』の主人公ジョン・グレイディ・コールと『越境』の主人公ビリー・パーハムのダブルキャストで、1952年時点でニュー・メキシコ州の牧場で一緒に働くことになった二人のその後が描かれている。
両著で共に16歳だった二人だが、ジョン・グレイディは19歳、ビリーは28歳になっていて、ビリーはジョン・グレイディに死んだ弟の面影を見ており、彼の無謀とも思える行動を温かく見守っている。
本書は、ジョン・グレイディの悲恋を中心に展開されるが、その縦軸のストーリーの端々に登場人物達の様々な喪失の哀しみや痛みが挟み込まれていく。
そして、前著『越境』と同様に、世界とは、人間とは何なのか、その歴史とは、といった根元的な問いについての極めて思弁的な会話が、本書を重厚な物語に織り上げて行っている。
多少難解な部分も確かにあるが、極めてリーダビリティの高い、優れた文学作品である。☆☆☆☆1/2