『チャイナ・レイク』

『チャイナ・レイク』書影

 主に宮崎出張の機内で読んだのが、メグ・ガーディナー著「チャイナ・レイク」(ハヤカワ・ミステリ文庫)。これも浦安市市立図書館中央館での収穫である。

 弁護士にしてSF作家の主人公エヴァンは、妻と離婚した海軍パイロットの兄ブライアンの息子ルークの面倒を見ながらサンタバーバラで暮らしている。
 そのエヴァンの前に現れるカルト集団「レムナント」。「レムナント」にはブライアンの元妻タビサが参加していて、ルークを取り返そうと手段を選ばない行動に出てくる。
 ルークを守るために、ルークを連れて兄ブライアンの住むチャイナ・レイクに移るが、ブライアンの家で「レムナント」のリーダーの他殺体が発見され、ブライアンは拘束されてしまう。事件の真相を追ううちに、次第に明らかになる教団の真の姿と大きな陰謀。

 女性作家による女性が主人公のサスペンスで、本作が処女作とは思えないほど見事な人物造型と筆さばきである。シリアスになりすぎず。時としてシニカルだったり、ユーモアのある会話も楽しめる。
 巻末の「訳者あとがき」によると、本書は2002年に著者が住むイギリスで刊行され、その後、巨匠スティーブン・キングの目に留まって絶賛されたことによりアメリカで刊行の運びとなり、アメリカ探偵作家クラブ(Mystery Writers of America)が選ぶ2009年のエドガー賞オリジナルペーパーバック賞(Best Paperback Original)を受賞して、日本での翻訳が決まった。
 スティーブン・キングが推したのも納得の出来だと思う。個人的には、もっとハードボイルドな感じの方が好みではあるが。総評☆☆☆☆。

 エヴァン・ディレイニー・シリーズは、本国イギリスでは5作が発表済みで、2作目となる「裏切りの峡谷」(原題:Mission Canyon)は、つい最近(2010年5月)、集英社文庫から刊行されている(訳者は違う人)。これは図書館にリクエストかけるべきだろうか。

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